映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「ルーム」を観た

「ルーム」を観た。

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監督:レニー・アブラハムソン

日本公開:2016年

 

主人公は5歳の男の子。母親は7年前にある男に誘拐され監禁された部屋の中で、彼を産んだ。男の子にとって世界の全てはこのルームの中だけ。ストーリーとしてはこの監禁された部屋からの脱出が、1つの大きな起点となる。予告編でも描かれているが、映画前半にはある方法で親子はこのルームからの脱出に成功する。

 

感想

この映画の予告編を観た時点では、この脱出した世界がどんなに素晴らしいかを、あの監禁されていたルームと比較しながら肯定的に描く映画だと思っていた。だが、部屋から脱出した母子は、世界の広さを感じたかというとそうでは無かった。不自由だらけの現実が襲う。未だ男の子は母親にしか心を開けない。母親はマスコミに追われながら、トラウマから自分の家族と良い関係が築けず新しい人生に馴染めない。

 

監禁されていたあの「ルーム」の外に出ても、彼らの「世界」は広がっていない様が色々な描写で細かく描かれる。この映画の「ルーム」というタイトルは、物理的な部屋やその広さという意味だけでは無く、「自分の居る場所」や「世界」という言葉に言い換えられると思う。

 

この時点で(ああ、この映画だけは悲劇的な結末だとイヤだな)と思った。もちろん、そういう映画にも優れた作品はたくさんあるし、大好きな映画も多い。ただ、既に感情移入してしまったこの作品の親子には、幸せなエンディングを迎えて欲しいと心底思いながら鑑賞を続ける。だが、この映画はもう一段階のツイストを見せた。

 

本当の意味で、彼らの「ルーム」=「自分の場所」=「世界」を広げるのは何なのか?それは男の子のある人物へのある発言と、過去との決別を意味するある行動にヒントがある。結果的に、「人の成長」と「辛い過去を乗り越えるには」というメッセージを、子供の言動を通じてシンプルに伝える素晴らしい作品となっている。また、この映画はもちろん強い親子愛を描いているが、もう1つ「子供の親離れ」というメッセージもあると感じた。

 

それ位、子供の成長が文字通り母親を含む周りの「大人達の世界」も大きく変えて行くからだ。ラストシーンの子供が母親にかける言葉からも、それは感じ取れると思う。それにしても、この子役は本当に凄すぎる。

 

画面に映る事以上に情報量が多くて、見応えのあるとても素晴らしい作品だった。あまり気楽なテーマでは無いし、いわゆる娯楽色は薄いけど、少しでも映画を観る事が好きな人には素直にオススメな作品だ。