映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「かぐや姫の物語」を観た

かぐや姫の物語」を観た。

f:id:teraniht:20160921085358j:plain

監督:高畑 勲

公開:2013年

 

スタジオジブリによる、高畑勲監督の14年ぶり新作。これまたとんでもない傑作であった。アニメーションの語源はラテン語のアニマ(霊魂)から来ていると、昔読んだ本に書いてあったが、観ている間その事を思い出した。

 

劇中これでもかと躍動するキャラクターは、同じジブリの「風立ちぬで見せたワンシーンの細部を丁寧に描いていく演出とは全く違う方法で、感動を生み出していた。アニメーションはいかに気持ち良く画が動くか?が大きな快感のポイントだが、その点でこの作品は国内でも屈指のレベル。

 

作画にはとてつもない時間と労力をつぎ込んだ為、完成がこれほどまでに遅れたとのうわさである。だが、高畑監督はまさにこれを表現したかったのであろう。優れたアニメーションならではのこの快感は、是非一度体感して欲しいと思う。

 

感想

いわゆる人間的なデッサンや整合性を、ある意味無視した荒々しいとも言えるデザイン。(あのアゴとか!)このアニメーションはロジックではなく、感覚で観る作品だと思う。特に赤ちゃんのころから徐々に成長していく姫は、本能的で動物的な動きが反則的な可愛さを伴って観る者を魅了する。一度でも子供を育てた事のある方であれば、自分の子供が小さかった頃を思い出して、胸を締め付けられるような気持ちになるのではないだろうか。

 

また恐らく賛否が分かれるラストシーンだが、これは月からのお迎えという「絶対に避けられないもの=死」へのメタファーだろう。否が応でも訪れるお迎えは、如何に人間が抗おうとも成す術は無い。そう考えるとあの能天気とも言える音楽はまるでレクイエムだが、アジアの民族音楽の様に土着的で神秘的な雰囲気が漂い、ある種異様な高揚感すら感じさせる名シーンとなっている。

 

この作品は理屈ではなく、画が動く事への快感をなによりも優先しているので、ある意味「かぐや姫」という日本人が慣れ親しんだストーリーだからこそ、すんなりと感性に訴えるのかもしれない。これで複雑なストーリーだったら、情報過多で気持ちが拡散され混乱してしまいそうだ。しっかりと作画とテーマがマッチした良い例だと言える。

 

日本人には手垢のついた「かぐや姫というテーマをアニメーションならではの演出と、おそらく恐ろしいまでの労力で描いた高畑勲監督「かぐや姫の物語」、思った以上に大人のアニメなので、まだ未見の方は是非。それは素晴らしい映画体験になると思う。