映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「アメリカン・サイコ」を観た

アメリカン・サイコを観た。

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監督:メアリー・ハロン

日本公開:2001年

 

友人から「観たけどよく分からなかった」との話を聞き、気になったのでブルーレイを購入して鑑賞。確かに解釈の幅が広い作品なので、多分こうじゃないかな、というあくまで個人の解釈を書きたい。(今回はもうずいぶん古い作品なので、ネタバレ全開)

 

あらすじ

主人公はニューヨークのウォール街で、一流企業に勤める若きエリート・ビジネスマンであるパトリック・イトマン。高級マンションに住み、婚約者もいて、何不自由ない裕福な暮らし。完璧なルックスと美しい肉体を持ち、日々肌の手入れや筋トレを欠かさない。周りも同じような境遇の恵まれた人間ばかり。だが、そんな彼には非常に強い殺人衝動があり、浮浪者や売春婦を殺害する日々を送っていた。そこに、事件を追う探偵が現れて、ベイトマンを疑い始める。

 

感想

若き日のクリスチャン・ベールが主人公を演じている、いわゆる快楽殺人ものである。ただ、この映画を観ている最中やたらと違和感を感じる。

 

例えば、ちょっと挙げるだけでも、、

 

・人が行方不明になって、追ってくるのが警察じゃなくて探偵?

 

・そんな指紋ベタベタ付けて雑に殺人を重ねてたら、絶対バレるでしょ?

 

・死体を入れた袋から血が滴ってますけどマンションの警備員、何も言わないの?

 

・その死体を無造作に停めたタクシーのトランクに入れちゃうの?

 

・しかも、入れてるとこ知り合いに見られちゃってるけど!

 

・裸でチェーンソー持って、マンションの廊下を爆走?

 

・警察と街中で銃撃戦?更にパトカー爆発?

 

・ニューヨークの設定なのに、いつも都合良く殺人シーンは人がいないのね。

 

不自然な殺人関連シーンの後には、レストランで空虚な話をしているシーンが続いたり、自宅でナルシスティックに筋トレしてたりと、まるで殺人を犯しているシーンが同じ時間軸で繋がっているとは思えないのである。しかも、行方不明になった男の話が仲間内の中では一切出てこない。要は映画の中では連続しているシーンとシーンが、意味として全く繋がっていかないのだ。

 

だがこの疑問が、一気に解ける場面がある。それは、キャッシュディスペンサーに表示される「野良猫を入れてください」のシーンである。ここでラストの弁護士のセリフを聞くまでも無く、これは主人公の脳内妄想だと気付く。

 

逆にゲイの男をトイレで後ろから、殺そうとするシーンがある。だが、このシーンは何故かいつもの様に殺さないばかりか、逆に男に好意を持たれて、オドオドと逃げ出すシーンとなっている。余りに情けない姿に違和感を感じたが、これは現実という事なのだろう。

 

因みに現実シーンで何かから逃げる時に、主人公が捨て台詞の様にいう言葉は、「ビデオを返しに行く」だ。これは現実か妄想かの判断において1つの目安になる。エクササイズしながら画面に映っているのが、ホラーの金字塔「悪魔のいけにえ」のラストシーンである事からも、彼は映画ファンなのかもしれない。(後半のチェーンソーを持って女性を追い掛ける妄想は、彼なりのオマージュだろう)

 

この様に過度に肥大した殺人に対する欲求が見せる妄想と、現実がシームレスに繋がっている作りだから観客は混乱するが、それはわざとそういう編集にしているのだと思う。

 

と、なると現実と妄想を繋ぐ唯一の人物である、あの探偵はなんだろうか?

 

これも解釈が分かれるし、正解では無いのかもしれないが、僕はこう思った。探偵が唐突に「ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース」のCDを主人公に見せて、お気に入りだというシーンがある。もちろん、このアーティストは主人公も好きだと公言するシーンが前段にあるのだが、これもずいぶん不必要なシーンだと最初は思った。だが、最後まで観てピンと来た。

 

もしかすると、この探偵も彼の妄想では無いか。

 

ただ、自分をジリジリと追い詰める彼は、ある意味、主人公の「良心」の化身だ。秘書を殺さずに逃がす所からわかる様に、彼にも葛藤があるのだと思う。ある意味、主人公の多面性を描いているキャラクターだと思ったのだが、さすがに飛躍しすぎかもしれない。

 

この様にこの映画のテーマは、一見エリートサラリーマンとして華やかな男に見えても、内面は様々な欲望と妄想が広がっており、アブナイ多面性を孕んでいるので全く油断出来ませんよ、気を付けなさいね、というものである。アメリカンサイコは、特別な人物では無く、そのへんにウヨウヨいるのだ。

 

この映画の評価としては、解釈の余地が広くて面白い作品だった。多分、他の方がご覧になるとまた違う解釈もある気がする。こういう風に、鑑賞後にどう思ったかを語り合える幅があるのは良い作品だと思う。また音楽ネタも豊富で、主人公がフィル・コリンズロバート・パーマーの80年代ロックについて語るのは面白かった。

 

最後にお互いに自分の名刺を自慢し合うという名シーンがあるが、この時のBGMも含めて、この映画の白眉だと言っておきたい。