映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「6才のボクが、大人になるまで。」を観た

6才のボクが、大人になるまで。」を観た。

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監督:リチャード・リンクレイター

日本公開:2014年

 

ブルーレイで再見。最初に劇場で観た時にも感じたが、観終わった後に暖かな気持ちになる名作だ。この映画は1人の少年が「本当に12年に渡って成長していく様」をカメラに収めるという、他に類を見ない映画として公開時話題になった。もちろん少年だけでは無く、姉や親も同じ様に歳を取っていく事により、12年の年月という時間を実に説得力を持って、観客に提示する。

 

12年も経てば、6歳の天使の様な少年は髭の生えた青年になるし、両親は中年太りのいわゆるオジさんオバさんになる。だが、我々観客は彼らの12年の歩みを、2時間46分かけて観てきている為、変化しているのは容姿だけでは無い事を知っている。そう、内面も一緒に成長するのだ。まさに人の人生にとって、歳を取る事とはどういう事なのか?のサンプルが、この映画には描かれている。

 

感想

この映画は、始まって早々からことごとく下の2つを「比較」する。それは、

 

「男」と「女」

「大人」と「子供」である。

 

男と女にとって、子供を育てる事の意味の違い。子供でも男の子と女の子の興味の対象や考え方の違い。それを取り巻く社会。

 

そして、本当の意味で「大人になる」という事とはどういう事なのか?をこの映画は描く。これがメインテーマだと思う。

 

主人公のメイソンは、文字通り身体も心も段々と成長していく。自分の進むべき道を見つけて、恋もして、周りの人達に愛され衝突しながら大人になっていく。もちろん、これはこれで「ああ、俺もそうだったよなぁ」と感慨深いし、感動的だ。

 

だが、この映画で成長して大人になるのは、主人公のメイソンだけでは無い。

 

比較のしやすいキャラクターとして、イーサン・ホークが演じる主人公メイソンの父親がいる。

 

彼は登場シーンからまるで子供みたいだ。子供の父親ではあるが、まずは自分の事を1番に考える。子供に対して自分の政治観を話したり、メイソンがいくらガーターを出してもボーリングのレーンは大人用のまま変更しなかったり、ミュージシャン志望だという事で自作の歌を強引に聴かせたりする。定職にも就いていない。

 

だが、そんな彼も再婚し子供も出来る。仕事をして、新たな家庭を持つのだ。それでも、常に彼はメイソンの側にいて話を聞き、アドバイスをして、時には困惑しながら、時にはぶつかりながらも彼を理解しようとする。

 

映画の後半、成長したメイソンの高校卒業ホームパーティに招待された彼が、メイソンの母親にこう言うセリフがある。

 

「子供達は君のお陰で立派に育ってくれた。ありがとう。」

 

彼が男として親として、大人に「成長」した事が判る名シーンである。

 

一方、母親のオリヴィアはどうだろう。子供が小さい時は夜出掛けられないし、様々な制約の中を我慢して人生を生きている事が描かれる。登場から、もうかなり分別の着いた大人である。

 

だが、そんなオリヴィアも選択を誤る。再婚である。酒びたりで感情をコントロール出来ない再婚相手は子供の気持ちは関係なく子供の髪を切ったり、暴力を振るう。そして、また母親は二度目の離婚をする。その度に子供は親の都合に振り回され、人生を乱される。

 

しかしそんな挫折を乗り越え、彼女も自ら努力し大学の講師になり、自立していく。子供達も徐々に成長していき、最後には家を出る時が来る。メイソンが大学の寮に行く為に、荷物を片付けていると母親が突然泣き出すシーンがある。

 

「子育てが終わった今、私には後何が残っているの?自分の葬式だけじゃない。人生はもっと長いと思っていた」と。

 

だが、そんなはずは無い事を観客が1番よく分かっている。メイソンだって、姉のサマンサだって結婚して家族が増え孫が産まれたりして、オリヴィアにとっての人生の喜びはまだまだ続くはずだ。彼女たちの親が、そうであったように。

母親にとっては子離れという大イベントを通じて、また人間的に成長する。更に「大人」になるのだ。そう、子供が小さい時は親だって「親として未熟」なのだ。

 

この作品は12年を通して、子供の成長を描きながらも、親の成長も描いている。そして、家族を養う事、子供を育てる事の大変さを描きながら、それをやり遂げた人間の人生は充実し、それが連なって輪になっていく様を見せる。だから、観客も自分たちの人生と重ねて、鑑賞後に暖かな気持ちになるのだ。そして若い人達が、自分の生きる道を見つけて歩み出すのを、まるで親の気持ちになって見届け、映画は終わる。

 

この作品も、観る時の環境や年齢によっても大きく感想が異なるだろう。だが、自分がある程度の年齢を重ねた後に観れば、何か大切なものを感じ取れる作品なのは間違いない。12年をかけて撮影された作品には、その重さがある。

 

最後に、音楽にも触れたい。

 

メイソンの成長に合わせて、その時代のヒット曲が劇中でも流れるという仕掛けなのだが、その選曲がとても良くて個人的にツボであった。冒頭からcoldplayの「yellow」で始まり、weezerThe Hives、Vampire Weekend、wilcofoo fighters、そしてPaul McCartney&Wingsなどなど。2000年代初頭はロックに明け暮れていた僕には刺さりまくりの選曲であった。

 

メイソンの誕生日プレゼントに、ビートルズのオリジナル編集CDを渡し、それについて熱く語る父と、呆れながらも父の音楽への愛が変わってない事を喜ぶ息子のシーンは忘れがたい。音楽に対しての姿勢も暖かいのだ。

 

この映画は、何年後かにきっとまた見返すことになると思う。