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映画「エクス・マキナ」ネタバレ感想&解説 AIの可能性も危険性も描く、SFサスペンスの傑作!

エクス・マキナ」を観た。

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監督:アレックス・ガーランド

日本公開:2016年

 

やっと「エクス・マキナ」を観る事が出来た。映画館に行ったは良いが、満席で入れなかったりして、今回3度目の挑戦であった。 とにかく上映館が少な過ぎる。こういう優れた映画が、普通に全国規模のシネコンで観れないというのは、本当に残念な事態である。東京ですらこんな有様なので、他の地方ではかなり鑑賞のハードルが高いのでは無いだろうか。とはいえ、スルーするのは勿体無い作品なので、是非鑑賞する事をオススメしたい。アカデミー視覚効果賞を受賞した作品だし、何よりストーリーも大変面白い。という事で、今回もなるべくネタバレ無しで感想を記載していく。まず、この映画のジャンルはSFスリラーに括られるだろう。

 

あらすじ

最大手インターネット検索サービスを行なっているブルーブック社で、プログラマーとして働くケイレブはある日社長であるネイサンの別荘に招待される。そこで、彼はネイサンが人工知能AIが搭載された人型ロボットを作っている事を知る。ケイレブはネイサンに人型ロボット「エヴァチューリングテストを任される。チューリングテストとは、ロボットの人工知能がきちんと知的かどうか、取る行動が問題ないかのテストである。テストの為、エヴァとの会話を重ねていくうちに、ケイレブはエヴァに特別な感情を抱く様になっていく。

 

 

感想&解説

映画を観るまでは、いわゆる人口知能AIロボットものとして、人間の倫理観やロボットと人間の境界線を描く様な、かなり哲学的な作品だと勝手に想像していた。だが蓋を開けてみると、実はもっと生々しい「異性との駆け引きにおける打算」についての映画だった様に感じた。人口知能AIは今後どんどん進化して人間に近付いてくる。この映画に登場するロボットは、既に知能も感情もほぼ人間をトレース出来ている。しかも、美しい女性が男性に与える影響も理解した上で、AIが次のステップに進んだ時に彼女らはどう考えるだろう。更にそこに、彼女ら自身が「こうしたい」という希望を持った時にどんな行動を起こすのだろう。そして、それはもはや人間の女性が考える事と何が違うのだろうという事を描く。

 

完全に見た目はロボットである筈の「エヴァ」が魅せる仕草に、観客の男性が少しでも女性的な魅力を感じたら、この作品の提示するテーマは絵空事ではないという事なのだろう。ワンピースを着て初めて主人公ケイレブの前に現れる前の、緊張してスカートの裾をギュっと握ってしまう仕草や、懸命に自分の好意を伝えようとする姿に、ケイレブは抗えない。何故ならこのロボットを作っているのは、最大手インターネット検索サービスを行なっている会社の社長なのだから。インターネットの検索結果というのは、「あらゆる個人の嗜好」を丸裸にしてしまう。そして観ているこちらも、エヴァを単なるロボットとは思えなくなってくるのだ。こういった部分は、社会風刺も効いていて作品を深いものにしていると思う。

 

 

この映画の舞台は限定的だし、登場人物も極めて少ない。だが娯楽作品としても相当面白いし、ストーリーは綺麗に着地する。だが、観終わった観客に何か「引っかかり」を残す。この「引っかかり」を堪能出来るのも、良い映画の条件の一つだと思う。アリシアヴィキャンデルがAIロボットの「エヴァ」を演じているが、この人は将来有望な女優だと思う。今後の出演作品も期待したい。という訳で、映像的にもストーリー的にも、映画のテーマ性も、かなりレベルの高いオススメ作品である。是非、ご覧になって欲しい。しかしこのままロボットが進化して、人間と同じ考え方や感情を持つと、この映画の様にやはり男性は女性ロボットにも手玉に取られてしまうのだろうと思うと、少し恐ろしい。

採点:7.5(10点満点)