映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「はじまりのうた」を観た

「はじまりのうた」を観た。

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監督:ジョン・カーニー

日本公開:2015年

 

これは最高の音楽映画だ。監督は「ONCE ダブリンの街角で」のジョン・カーニー。監督2作目にして大傑作である。(因みに一作目も素晴らしい!)

 

僕はギターを弾くのだが、この映画を観ている最中、ギターが弾きたくて堪らなくなった。映画のテーマは「音楽を通じて人生を再生していく話」だと思うが、実生活の中で少しでも音楽に触れる機会のある方なら(しかも楽器を演奏されるなら尚更)、この映画は忘れがたい作品になると思う。

 

あらすじ

恋人で注目株のミュージシャン、デイブ(アダム・レヴィーンとイギリスからNYにやって来たシンガーソングライターのグレタキーラ・ナイトレイ)。音楽で成功を掴んだデイブはどんどん売れっ子なり、遂にはグレタを裏切ってしまう。傷心のグレタはデイブの元を飛び出し、古くからの友人でストリートミュージシャンのスティーヴの家に居候することに。スティーヴはグレタを元気づけるためにライブハウスのステージにグレタをあげる。そこに偶然居合わせた元敏腕音楽プロデューサー、ダン(マーク・ラファロ)はグレタの才能に惚れこみ、プロデュースを買って出るが・・・。

 

感想

恋愛、家族、仕事と音楽が絡みあってストーリーは進行していく。逆を言えば、この映画の主要キャラクター達は音楽無しでは生きていけない。

 

音楽を聴いたり演奏する事が幸せだし、音楽によって人生が癒される事をこの映画のキャラクター達は、目一杯表現する。そして、それを観ているだけでボロボロ泣ける。

 

劇中、「音楽があれば、陳腐でつまらない景色が意味のあるものに変わる。光り輝く真珠になる。」というセリフがあるが、音楽の素晴らしさがこのセリフに凝縮されていると思う。

 

大音量のクラブで、グレタとダンの2人だけがスティービー・ワンダーの「For Once in My Life」をイヤフォンで聴きながら、心底楽しそうに踊るシーンがある。当然、周りの人とはリズムがバラバラだが彼らは気にしない。これは、素晴らしい音楽とは時代を超えて聴く者の心を揺さぶるというストレートだが素敵なメッセージだ。こういうシーンに、僕はやはり涙目になる。この曲はなんと1969年の曲なのだが、今聴いても本当にカッコ良い。

 

映画後半の屋上での演奏シーンは、もちろんビートルズが60年代後半にアップルビルの屋上で行った「ルーフ・トップ・セッション」をモチーフにしているのだろう。娘と父親が楽器を通じて心を通わすシーンは感動的だし、演奏中のメンバーが本当に幸せそうで、これも素敵なシーンだ。

 

正直、この作品で不満な点はひとつだけ。

 

グレタとダンが、せっかく完成したアルバムを1ドルでネット販売するという選択をするシーンがある。音楽業界が抱える商業主義への回答だと思うが、バンドのキーボーディストは仕事を辞めてまで一緒にレコーディングしたのに、その2人の選択は余りに安易だと感じた。

 

優れたアーティストには、キチンと金銭的な還元をしないと次の作品が作れなくなってしまう。レコーディングには途方も無い時間がかかるのだ。

 

リスナーにとって、音楽はちゃんと対価を払って享受すべきアートだし商品だと思う。この映画のテーマとして、音楽の価値を下げる様な表現は如何なものかと感じた。もちろん、グレタの「アルバムを広く色々な人に聴いて欲しい」という意図だと思うのだが、そこは音楽プロデューサーであるダンが、レコーディングしたアルバムの価値を認めさせ、逆にそれを聴いた人達の人生にその曲たちが、どんなに金銭以上の価値を与えているかの描写があれば良かったと思う。とはいえ、映画としては主人公たちがお金に固執せず音楽を提供している様は、とても魅力的に映るのはよく理解できる。こういう映画の難しい問題である。

 

さて、「あの頃ペニーレインと」「スクール・オブ・ロック」「ブルース・ブラザーズ」「戦場のピアニスト」「ハイ・フィデリティ」「スパイナルタップ」「アマデウスなど音楽をモチーフにした映画は山程あるが、もしかすると、この「はじまりのうた」は僕の生涯ベスト3に入る音楽映画かもしれない。

 

それほどこの映画は素晴らしいし、音楽への愛が溢れている。マルーン5アダム・レヴィーンのライブシーンも堪能できるし、もちろん使われている楽曲も名曲揃いだ。

 

そして、監督ジョン・カーニーの新作「シング・ストリート」がそろそろ日本でも封切られる。なんと、また得意の音楽ものである。これは必ず観ないと、と今から楽しみにしている。とにかく「はじまりのうた」は本当に素晴らしい作品であった。こういう映画があるから、映画鑑賞は止められないのだ。

 

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