映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「ヒート」を観た

「ヒート」を観た。

f:id:teraniht:20160921081914j:plain

監督:マイケル・マン

日本公開:1996年

 

「ヒート」はマイケル・マン監督の大傑作であり、僕にとってはオールタイムベストのTOP10に入る程、大好きな作品だ。170分と長尺の映画だが、DVDまで併せると今迄何回観たか分からない。それなのに、また改めてブルーレイを買ってしまったので感想を。

 

あらすじ

犯罪のプロフェッショナル、ニール・マッコーリーは、仲間達と現金輸送車を襲い有価証券を奪う。捜査にあたるロス市警のヴィンセント・ハナは、現場からの少ない手掛かりから次第にニール達へと近づいていく。ヴィンセントは仕事に取り憑かれており、家庭は崩壊寸前。ニールは本屋の店員イーディと出逢い、次の銀行強盗を最後に堅気の暮らしに入ろうと決意していた。やがて強盗決行の時、謎のタレ込みを受け現場に駆けつけたヴィンセント達と、ニール一味は、壮絶な銃撃戦を繰り広げる。そして、二人の運命の対決が近づいていた。

 

感想

二人の天才が織り成す映画だ。ただし、彼らの仕事は刑事と犯罪者。二人とも部下からは絶対的な支持を得ており、人を率いるカリスマ性もある。この映画の魅力の一つは、プロ同士が用意周到な準備をしながら、完璧な仕事ぶりを見せるシーンで、そこは何回観てもドキドキする。そして、二人は天才的な閃きとセンスでお互いしのぎを削り、自分の仕事を全うしようとする。

 

男はこういう男に憧れる。人生をかけて、様々な事を犠牲にしながら自分の仕事を遂行しようとしている不器用な生き方。こんな生き方は自分では出来ないからだ。しかも演じているのが、二大名優アル・パチーノロバート・デニーロである。

 

もう、この二人がセクシー過ぎる。2016年の今や、好々爺になってしまっている感があるが、この映画ではギラギラする男の色気が画面から迸っている。そして、こういう影の世界に生きるプロ達はプライベートが上手くいかない事も克明に描く。人生における仕事の比重が重過ぎるのだ。だから、恋人や家族を傷付けてしまう。

 

家に帰って来ない刑事ヴィンセント役のアル・パチーノに対して、妻がもっと仕事の悩みもシェアして欲しい、貴方を分かりたいと伝える場面がある。それに対して、「(刑事の)苦悩は俺だけのもの。その孤独な想いが仕事への緊張感を保つ」と言い放ち、彼女から「何故、こんな男が好きなんだろう」と言われるシーンがある。このシーンから、彼の仕事に対する行き過ぎたストイックさが伝わってくる。

 

そして彼に挑む、デニーロ演じるニール。完璧な犯罪を遂行する事に没頭し、今まで孤独な人生を歩んでいる。彼の口癖は「(犯罪者は)いつでも30秒フラットで高飛び出来る様に、やっかいな人間関係は持つな」である。そんな二人がコーヒーショップで対峙する名シーンがある。証拠を残さず常に手際の良いニールの犯罪センスに、敵ながらリスペクトを隠せないヴィンセントが、彼の次の犯罪を止める説得の為にコーヒーに誘うのだ。もちろん証拠が無いから、その場で彼を逮捕する事は出来ない。

 

ニールは「俺はヤマを踏むプロ、あんたはそれを阻止するプロ」と言い、「だが、俺は捕まらない」と続ける。最早、ニールを犯罪から切り離す事は無理だと察したヴィンセントは諭す事を諦める。

 

そして「違う生き方を探す気は無い」と言い切る二人は、少しだけ微笑み合う。ヴィンセントとニールは完全に同じタイプの人間なのだ。それがこの会話でお互いに感じ取れた事で、刑事と犯罪者という立場にも関わらず、思わず笑みが出てしまう。今までお互い、周りに理解されない孤独な人生を歩んで来たから、二人には通じるものがあるのだ。

 

そして、終盤に訪れる圧巻の銃撃シーン。映画史に残る名シーンだ。ここだけでも、この映画は観る価値がある。マイケル・マン得意のスタイリッシュな画作りと、リアルな音響効果で約7分程のシーンだが全く目が離せない。随所に出現するロスの夜景を切り取る空撮ショットも見事だ。この夜の街を撮影する技術は、マン監督の2004年作品である「コラテラル」でも遺憾無く発揮されていた。

 

この映画を観て、もしかすると登場人物たちが下す身勝手な判断が、余りに理にかなっていないと感じる方がいるかも知れない。特にニールの裏切り者に対するラストの行動などは顕著だと思うのだが、それは彼らにとっての「譲れないもの」「守るべきもの」を何より重視した結果だ。またラストカットで、命を懸けて闘い終えた二人が交わす握手の意味は深い。この映画は単純な善悪を描く作品では無く、白でも黒でも無い灰色の部分が両者共にあり、その割り切れなさが人生だと伝えていると思う。

 

とにかく170分の間、名シーンのつるべ打ちで、映画を観る快感に溺れているだけであっという間に時間が経ってしまう。主演二人だけでは無く、脇役の演技もとても練られていて、特にヴァル・キルマーと妻の別れのシーンは、抑制されているが根底にある愛情が感じられて最高の名シーンだ。

 

もし、まだ「ヒート」を観ていないという方は、是非鑑賞をオススメしたい。特に、最近「男のロマン」が足りてないと思う方は必見だ。90年代のアル・パチーノロバート・デニーロから発散される大人の魅力に酔いしれる事請けあいの大傑作である。