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映画「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」ネタバレ感想&解説 "マジックのロジカルさ"という前作の良かったところが消えた、残念な続編!

グランド・イリュージョン 見破られたトリック」を観た。

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前作から3年ぶりの続編。前作は主演のジェシー・アイゼンバーグも好演し、マーク・ラファロモーガン・フリーマンといった名優が脇を固めながら、マジックという映画に不向きなテーマにも関わらず、しっかりとした娯楽性を持った作品になっていた。何より、どう考えても不可能に見える破天荒なマジックを、ある程度ロジカルに種明かししてくれていたのも好感が持てたし、あるキャラクターにまつわる、どんでん返しもマジックという映画のテーマに合っていて、見事だったと思う。では続編である本作はどうであったか??

 

監督:ジョン・M・チュウ

日本公開:2016年

 

感想&解説

今回の「見破られたトリック」は、典型的な残念な続編のサンプルの様な作品であった。前作の良かった所がほぼ消えており、納得出来るようなマジックのロジカルさも無い。基本的に「そんなアホな」なマジックしか起こらない上に、今回のホースメン達は失敗ばかりで、爽快感も無い。時折映し出される余計なアクションシーンも、チャカチャカしたカメラワークとカット割りでなにが起こってるかがサッパリ分からない上に、ストーリー的な必然性も無い。特に終盤のバイクシーンの必然の無さなど顕著である。

 

そもそも映画とは、ほぼ画面に映っている全てのカットが映像編集ソフトで処理されているという前提の為、手品で画面上に何が起こっても観客には驚きがない。だから、いくら鳩が出ようが、降っている雨粒が止まろうがどうでも良くて、マジシャン達は何故そんな事が出来るのか?のロジックにどれ位説得力を持たせられるかがポイントなのだと思う。マジックの時にかかる大層なBGMの演出で盛り上げに必死だが、その点でもこの映画は、全く説得力がない。少なくとも、この映画の中のマジックにはあまり心を動かされないのである。終盤にある、テムズ河におけるジェット機のマジックなどは、実際に行うと一体何人の協力とお金があれば成立するのか?と思ってしまう。もちろん娯楽映画なので、小さな整合性は重要ではないが、流石にあそこまでの規模だとリアリティが無さすぎるのだ。

 

しかも、とにかく催眠術で相手を言い成りにさせた上でのトリックが多過ぎ、そこも納得しずらい。且つ、あるシーンで盗んだカードを護衛たちに見つからない様に隠すシーンがあるが、何故そんなに全員の手元にカードを行ったり来たりさせないといけないのかが分からない。靴の裏に隠しておけば済む話で、大体怪しまれるのが人に渡す瞬間の為、わざわざ自分たちで発見されるリスクを冒しているように見えるという有様だ。また今回も最後にどんでん返しが起こるが、特に驚きもない。焼き直しどころか前作から続けて観ると、モーガン・フリーマンが演じるキャラクターの矛盾すら感じる。一作目のファンであればあるほど、本作には違和感を覚えるだろう。悪役も魅力的とは言い難く、ダニエル・ラドクリフの小物感も酷い。

 

あとは中国市場への目配せも大変に目立つ作品だ。舞台もマカオだし、中国人俳優も重要なポジションとして登場する。ただ、設定が唐突すぎて取って付けた感が強いのは否めない。中国の映画市場は、もうすぐアメリカを抜くというデータもあるらしく、年々巨大化してきている。中国人の観客を意識したハリウッドの映画作りは、今後ますます進んでいくだろう。もちろん、必然性が伴えば全く文句は無いが、この「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」に関しては、作品としてのバランスを取るのは難しかったようだ。とにかく今回は脚本がマズいし、演出もよろしく無い。恐らくラストの展開から次回作もあると思うが、本シリーズはジョン・M・チュウ監督の資質とは合っていない気がするので、また前作のルイ・レテリエ監督がメガホンを取ることを切に願いたい。

採点:4.0(10点満点)