映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「君の名は。」を観た

君の名は。」を観た。

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監督:新海誠

公開:2016年

 

興行収益が3日間で12億円を突破したと、yahooのトップニュースに掲載される程、いま巷で大人気のアニメーション作品「君の名は。」を鑑賞した。やはり人気作という事もあり、大学生位の男四人組やらカップルやら、女の子二人組やらで劇場は大盛況であった。見た感じ、どうやら若い人を中心にこの映画はお客さんを集めているようだ。7月公開の「シン・ゴジラ」といい、日本映画がまた調子を取り戻しているのかもしれない。

 

さて「君の名は。」である。今回は少しオチにも触れるので、全く予備知識無しで鑑賞したい方は、このまま静かにブラウザを閉じて頂きたい。

 

感想

映画が終わって劇場を出る時、大学生風の男の子が興奮気味に「いやー、スゲー良かった!映画でこんなに感動したの、初めて」と大声で主張していたが、帰りに聞こえてくる皆さんの感想も、概ねこれに近かった気がする。女性は泣いている方もいた。ネット上の評価も異常に高く、ほぼ映画を観た大多数の方が満足する作品となっている様である。

 

まず映画の構成だが、序盤は突如男女の身体が入れ替わるという設定に対しての、シチュエーションコメディとして進行する。意識はそのまま維持しているが、寝ると2人の主人公それぞれの環境がチェンジし、性別も変わって目覚めるというシチュエーションを繰り返す事で、入れ替わる2人のキャラクターの説明と彼らを取り巻く周辺の環境を上手く説明している。その中の要所で笑いを取り入れながら、思春期の男女の興味の違いや家族や友達との会話などといった「日常」を丹念に描く。

 

この2人のキャラクターが住んでいる環境だが、女の子である「三葉」は田舎の神社で育った女子高生。田舎暮らしに嫌気が差しており、東京に憧れている。一方、男の子キャラの「瀧」は東京都心に住む男子高生。イタリアンレストランでバイトしており、年上の憧れの先輩がいるという設定で、あえて両極端な設定がされている。

 

とにかく序盤は、男女の身体が入れ替わるというシチュエーションの特異さはありつつも、等身大の高校生の日常をひたすら描くし、この2人が観客にとっても共感出来るキャラクターである為、観ている内にどんどん感情移入していく。いわば、しっかり2人のキャラクターが好きになるのである。特に年齢が近い10代の観客は、都心に住んでいる方も地方の方も、先程の設定も含めて三葉と瀧のどちらかに自分を重ねる部分が多いのでは無いだろうか。

 

そして、中盤は「この世界には3年前に隕石が落ちた過去がある」という伏線から、ストーリーはある方向に大きくカーブを切る。2人のキャラクターに感情移入していた観客を一旦突き放す様な展開になり、映画は先が読めないサスペンス風味を帯びてくる。

 

そして終盤は変則的ではあるが、ディザスタームービー的な緊迫感と、いわゆるラブロマンスの要素が描かれる。

 

要するに、この作品は映画としての要素が「全部入っている」のである。しかも、そのバランスがしっかり取れていて作品として調和している。笑えて、ドキドキ出来て、ラブロマンスも楽しめて、最後は泣けるという作りだから、当然観終わった後の満足感は高い。

 

しかも、この映画を観て伝わってくるメッセージはこんな感じだ。

 

「まだ出会ってないかもしれないけど、あなたにはまだ見ぬ大切な人との出会いがきっと待っているはず。」

 

「色んな事情で一度離れてしまった人でも、想い続けていれば必ずまた会える。」

 

「例えすごく辛い事があったとしても、皆で力を合わせれば、きっと乗り越えられる。」

 

とにかく肯定的で前向きなパワーが漲っているから、鑑賞後、特に若い観客はこれからの自分の人生を後押ししてくれる気になるだろう。今回、劇中歌を担当する「RADWIMPS」の曲と歌詞の威力も絶大だ。このアーティストの選定からも、この映画のターゲットは明確だ。

 

だが、僕の様なもう若いとは言えない年齢のオジさんは、正直乗り切れない部分もある。人生は取り戻せない事の連続で、一つずつ何かを諦めたり、ひどく心を痛めたりしながら、それでもなんとか乗り越えて進んでいくものだという事を知っているから、この作品で描かれるテーマで、あまりに全てが万事解決のエンディングだけだと食い足りなさが残る。特に「彗星が落ちて消えた町」というのが、何を象徴しているかは、今日本に住んでいる僕たちはすぐにピンと来るだろう。無かった事には出来ない事が現実には溢れていて、その傷跡を背負って生きて行く事もまた必要である事が、エンディングで何か一つでも提示されていると更に良い作品になったと思う。

 

またもう一つ、この作品が乗り切れない要素は、何故この2人が、どういうタイミングで入れ替わるのか?の「ルール」の説明が無いので、劇中で何か奇跡的な事が起こっても「まぁ、ファンタジーなんで」という言い訳が成り立ってしまう部分だ。基本的にはキッチリとリアルな日常を描いているのに、突如として非日常的な事が起こるので、余計にそう思うのかもしれない。「ファンタジー」と「何でもあり」は、似て非なるものだと思う。

 

いろいろ書いたが、この「君の名は。」は間違いなく、アニメーションにおける最高の技術とポジティブなメッセージに溢れた快作だ。新海誠監督は今後、完全にマス向けの作品を期待される国民的なアニメ監督として、ネクストステップに進んで行くだろう。「秒速5センチメートル」の頃が懐かしい。「君の名は。」が今の日本で大ヒットする事も時代の要請だし、こういう作品を観て、若い人たちが希望を持って劇場を後にする事は映画の大事な役割だと思う。

 

それだけに新海監督の次回作は、国民的アニメ作家として、更に踏み込んだ「大人の視点」を期待したいと思う。恐らく新海誠監督の次回作こそは、とんでもない飛距離で僕らを驚かせてくれるのでは無いだろうか。楽しみに待っていたい。