映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「アイアムアヒーロー」を観た

アイアムアヒーロー」を観た。

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監督:佐藤信

公開:2016年

 

これは本気の日本製ゾンビ映画の傑作だ。R15+という事だが、ゴア描写も全く手加減無し。先日観た「グリーン・インフェルノ」よりも、余程エグい映像がテンコ盛りだ。だが、これはゾンビ映画というジャンルムービーではもちろん褒め言葉である。原作は現在も連載中の漫画でこちらも評価は高い。

 

感想

とにかく、もう既にゾンビ映画は世の中に溢れている。言わずと知れたジョージ・A・ロメロの1968年「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」から「ゾンビ」「死霊のえじき」の三部作。おバカゾンビ映画バタリアン」や、ダニー・ボイルの「28日後」シリーズ、ザック・スナイダーの「ドーン・オブ・ザ・デッド」(ブルーレイ化熱望!)、エドガー・ライトのゾンビコメディ「ショーン・オブ・ザ・デッド」や近作「ワールド・ウォーZ」など、超有名作品だけでも枚挙に暇ない。「バイオハザード」などのゲーム原作映画も併せれば、更に数は増えるだろう。

 

そんな中で、新たに「日本」でゾンビ映画を作るというのは、かなりの覚悟が必要だと思う。しかも、ハリウッドの一流クリエイターが、様々な時代で創り続けてきたテーマだけに、どうしても過去の名作と比べられる運命は免れない。

 

という中での「アイアムアヒーロー」である。まず感心したのが、日常の中に初めてゾンビが現われる演出だ。(劇中ではゾンビをZQN(ゾキュン)と呼んでいた)最初にゾンビとして画面に登場するのは、主人公である英雄(ひでお)の彼女徹子で、演じるのは女優の片瀬那奈。彼女がまず素晴らしい。メイクと特殊効果もあるが、とんでも無く怖いし不気味だ。こんなバケモノには絶対に襲われたくないと思うし、只事では無い何かが進行しているという感じが良く出ている。またその後で出てくる、職場の先輩の佇まいが更に良い。演じるのは、ドランクドラゴンの塚地。世間に鬱積した怒りを持った人物が、極限に見せる狂気の表現が素晴らしい。死に様も含めて、文句無しに恐ろしいのである。

 

この映画は「この日本で突然ゾンビが現われたら」というテーマを、高い技術と演出で真面目に創るとこうなるというお手本の様な作品だ。劇中でもセリフがあるが、アメリカ映画ならゾンビを銃で瞬殺する様な展開でも、日本ではそうはいかない。だからこそ、初めて銃を使うシーンにはカタルシスが生まれる。普通の男が文字通り「英雄」となる過程をしっかり描くので、観客も一緒になってストーリーに一喜一憂出来るのである。

 

そして何より、この映画には過去のゾンビ映画やホラー映画へのリスペクトと愛を感じる。ショッピングモールへ逃げる展開は「ゾンビ」そのままだし、走るゾンビは「28日後」の系譜。動きは「エクソシスト」を感じるし、ゴア演出はサム・ライミの「死霊のはらわた」だろう。特に目潰しシーンは確実に意識していると思われるし、ルチオ・フルチ監督のイタリアンホラーの名作「サンゲリア」も、影響下にあるのではないだろうか。特にゾンビ映画における大きな主題である、「本当に怖いのはゾンビより人間である」もきちんと今作には継承されていたと思う。

 

それらの過去作品を感じさせるシーンが、単なるパクリでは無く上手く消化されているし、且つ一捻りあるので、逆に上手いなと感じてしまう。走り高跳びのゾンビがショッピングモールの屋上から襲ってくるなど、海外のゾンビ映画ではあり得ない展開だろう。

 

役者陣もとても活き活きとしている。中でも、やはり主役の大泉洋の演技は白眉だ。ごく普通の人が事態に巻き込まれる感じや、ちょっとしたギャグの間がとても良い。長澤まさみの強気な看護師もとても素晴らしかったし、有村架純の純朴さの中にある凶暴性も上手く表現出来ていたと思う。

 

今作「アイアムアヒーロー」は、国内で大ヒットしたらしいので、確実に続編が作られるだろう。続編も是非同じキャストとスタッフで製作して欲しいものである。これは大袈裟ではなく、今後の日本製ゾンビ映画におけるマスターピースになる作品だと思う。このジャンルが好きで、ゴア表現が苦手でなければ確実にオススメな映画なので、是非ご覧になって頂きたい。後悔はしないだろう。