映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「ドライヴ」を観た

「ドライヴ」を観た。

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監督:ニコラス・ウィンディング・レフン

日本公開:2012年

 

こういう映画を観ている時に、映画ファンで良かったと心底思う。所謂、至福の時というやつである。映画という完全に作り手が演出した、映像と音が紡ぐ世界をただ恍惚と観ているだけで幸せな気持ちになる。まさに「映画的」としかいい様のない優れた画面構成と少ないながらも豊かなセリフ回し、そして俳優たちの演技。派手な映画では無い。だが往年の名作から感じる「今、自分は特別なものを観ているというあの感じ」がある、素晴らしい作品である。

 

あらすじ(ネタバレ全開)

主人公は天才的なドライビングテクニックを持つ男。昼は映画のカースタントマンや車の修理工場で働きながら、夜は強盗の逃走を手伝うドライバーという二つの顔を持っている。その日も見事なテクニックで、犯罪者を逃したドライバーは、自分のアパートでエレベーターで一緒になったアイリーンという女性と知り合う。彼女は一児の母で夫は服役中だが、ドライバーは一目で彼女に恋をしてしまう。しばらくドライバーとアイリーン親子はまるで本当の家族の様に幸せな生活を送るが、ある時アイリーンからあと1週間で夫が出所すると教えられ、遂にその日が来てしまう。

 

だがアイリーンの夫スタンダードは出所早々に、服役中の用心棒代として犯罪者から多額の借金を負っている事が発覚し、妻子の命を盾に強盗を強要されてしまう。アイリーン親子を見殺しにできないドライバーは、スタンダードを助ける為、強盗の為の運転を買って出る。だが、質屋を狙った強盗の最中にスタンダードは射殺されてしまい、ドライバーは金を持ったまま命からがら逃走する。

 

質屋にあった金がマフィアの金であった事から、命を狙われる羽目になったドライバーとアイリーン親子。アイリーンに事情を説明し、一緒に逃げようと説得するドライバー。だが、アパートのエレベーターにもマフィアの追っ手が現われる。とっさの判断で、ドライバーはアイリーンを守る為マフィアを殺すが、ドライバーの裏の顔を見てしまったアイリーンは、その場を逃げ出してしまう。

 


その後、ドライバーは金を返して自分たちの命を狙わない様に交渉する為に、黒幕の待つレストランに向かう。金を渡せば親子は殺さないと告げられたドライバーはそれを承諾する。だが車のトランクにある金を渡す際に、ドライバーはマフィアにナイフで刺されてしまう。だが、そのまま反撃し相手を殺す事に成功したドライバーは、血まみれの状態で車に乗り込む。その頃、ドライバーの部屋の前にはアイリーンが立っていた。彼女がドアをノックし、ドライバーが二度と戻らない夜道を走り去る場面で、映画は終わる。

 

感想 

今作の主人公には名前が無く、エンドクレジットにも「ドライバー」と表記されている。演じるのは、ライアン・ゴズリング。寡黙でサソリのスカジャンが恐ろしく似合っている。彼がとにかく映画のキャラクターとして魅力的だ。まず冒頭の逃し屋としてのテクニックを披露するシーンがあるのだが、すでに他の凡庸な映画とは一線を画している。観客としては、何度も「これは逃げるのは無理じゃないか」という場面が訪れるが、ドライバーは汗ひとつかかずに冷静沈着に状況に対応していく。ただ早く車を走らせるだけでは無く、時には車を暗闇に停めたりあえてパトカーの後ろに付けたりしながら、逃げる為のテクニックを披露する。正にプロである。

 

だが、この映画はカーアクション映画では決して無い。この作品が上映されている100分の間にアクションが展開している時間など、20分位では無いだろうか。それ以外の時間は、状況や人間の感情をじっくりと描く。特にドライバーとアイリーンの距離が縮まっていく描写など、セリフはほとんど無いが俳優の表情やちょっとした仕草で観客に伝わるように演出されている。無言で見つめ合っているシーンの長さやカットの間が絶妙なのだ。エレベーターの中でのキスシーンの美しさなど、とても印象的だろう。突然、ライティングが変わり、まるで夢の中のようにスローモーションで2人を映し出す。その後の凄惨なバイオレンスシーンとのコントラストも際立っていて、本作の名シーンの一つだ。

 

音楽の使い方も本当に素晴らしい。

特にCollege feat. Electric Youth の「Real Hero」という曲がかかるシーンは、陳腐な表現だが本当に「カッコ良い」と表現するしかない。とにかく映画として美しいシーンが多く、惚れ惚れする。

 

おそらくこの「ドライヴ」は、映画に対してストーリーの面白さを重視する方にはピンと来ない作品だろう。ストレートでシンプルな話だし、大した展開やオチもない。だが繰り返しになるが、極めて「映画的」な豊かな映画体験を提供してくれる優れた作品であり、映像と音楽と役者の演技が高いレベルで融合している傑作だと言い切れる。個人的には、後年「タクシードライバー」や「グッドフェローズ」などと並ぶ名画として、2010年代を代表する作品になってもおかしくないと思う。未見で映画が好きな方は、是非チェックを。

 

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