映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「キャロル」を観た

「キャロル」を観た。

f:id:teraniht:20161016173447j:plain

監督:トッド・ヘインズ

日本公開:2016年

 

原作は「太陽がいっぱい」「見知らぬ乗客」が有名な作家パトリシア・ハイスミスのベストセラー作品。監督は「エデンより彼方に」のトッド・ヘインズ。パトリシア・ハイスミス自身も同性愛者だったこともあり、濃密に愛し合う2人の女性の心情に迫った恋愛映画だ。アカデミー賞にも主演女優賞、脚色賞を含む9部門にノミネートされている。

 

あらすじ(ネタバレ全開)

舞台は1952年、クリスマス間近のマンハッタン。デパートのおもちゃ売り場で働くテレーズは、写真家になる夢を抱いていた。そんな時、キャロルという中年女性が娘の為におもちゃを買いに売り場に現れる。キャロルの美しさに思わず目を奪われるテレーズ。キャロルが買い物の後、手袋を忘れて行った為に丁寧に自宅に郵送してあげると、そのお礼にとキャロルからランチに誘われる。そして、徐々に2人は親交を深めていく。

 

だが、不仲で妻の同性愛に気付きながら、理解を示さないキャロルの夫ハージは、テレーズの存在に不満を抱く。二人は離婚協議中だったのだが、ハージは一方的に娘の共同親権を拒否する申し立てを行った。しばらく愛娘に会えないことを悲観したキャロルはテレーズを誘い、旅に出る。一方テレーズの恋人リチャードもキャロルと旅に出るというテレーズに対して怒りを覚え、2人は破局を迎える。

 

ホテルやモーテルを転々とする二人は急速に距離を縮め、ある日一線を越えてしまうがその様子を探偵に密偵され、ハージに密告されてしまう。自分が悪かったと責任を感じるテレーズと、自分の意思で行動したとテレーズを慰めるキャロルだったが、娘の親権問題が不利になり、テレーズから距離を置く事を決意するキャロル。

 

最初はキャロルに会えないことを受け入れられないテレーズだったが、徐々に彼女を忘れる事を覚えて、念願だったニューヨークタイムスで働きはじめる。娘の親権を獲得したいキャロルは、夫の言う事に従い夫の実家で生活を送り心理療法も行うが、窮屈さや虚無感を感じていた。そして、とうとうハージとキャロルの審理が始まるが、キャロルは当初の主張を一転させ、母親として娘の幸せを考えれば親権は夫にゆだねたほうが良いのだと告げ、娘と定期的に面会する権利のみを主張する。キャロルはテレーズに抱いた感情は真実であり、自分のとった行動の責任について、自ら決着を着ける事を決意したのだ。

 

その後キャロルはテレーズに会いに行き、同棲を提案するが、自らの生活を歩み始めたテレーズはすぐには受け入れられない。キャロルはテレーズを愛している事を告げてその場を静かに立ち去る。だが、やはりテレーズは自分がまだキャロルを愛していることに気が付き、キャロルを追い掛ける。そして、追いついたレストランで、二人が視線を合わせたところで映画は終わる。

 

感想

キャロル演じるケイト・ブランシェットが、とにかく男前の映画だ。常にタバコを薫せ、いつも真っ直ぐに意見を述べ、恋人のテレーズを気遣い、常に優しく接する。キャロルが動揺するのは娘の親権問題の時だけだが、最終的には自らの生き方を曲げずに、抑圧された夫とそれを取り巻く生活にキリをつける。1950年代の女性の選択としては、かなり先進的なのだと思う。

 

だが、キャロルも強いだけのキャラクターでは無い。テレーズが忘れられず、タクシーの窓からキャロルを目で追っかけてしまうシーンや、テレーズからの電話を無言で切った後の表情など、実らない恋愛の苦しさを彼女なりに感じている。だが、彼女はテレーズの前では毅然とした態度を貫く。特にラストシーン、テレーズに同棲を断られたキャロルの身の引き方の潔さなどに彼女の恋愛感が現れているのだろう。雄々しく気高い。だからこそ、テレーズも最後にやはりキャロルを追いかけてしまう。

 

逆にこの映画に登場する男性キャラクターは皆、魅力が無い。大声で喚き散らして怒りを露わにし、型にはまった生活を望み、そのくせ探偵を雇って盗聴させたりする。男とか女とかの性別以前に、人間として「美しい生き方」をしている方に人は惹き寄せられるという事であろう。テレーズ演じるルーニー・マーラの演技も良かった。揺れ動く不安定な情緒の役が、本当に上手い女優だ。無条件で恋に落ちていく女性を上手く表現していたと思う。

 

大変に地味で、淡々と進む映画だ。大きな展開は起こらない。だが作品の質は高いと思うし、ゆったりと秋の夜長に観るには良い作品だろう。 ケイト・ブランシェットも47歳だそうだが、いつまでも美しい。ウディ・アレン監督の2014年日本公開作「ブルー・ジャスミン」と見比べると、この女優の演技の振り幅が際立つ。こちらの作品も是非。