映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「きっと、うまくいく」を観た

「きっと、うまくいく」を観た。

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監督:ラージクマール・ヒラーニ

日本公開:2013年

 

この作品、やたらと高い評価が聞こえてくるインド映画だったが、余り食指が伸びなかった。だが10/29にラージクマール・ヒラーニ監督の最新作「PK」が公開されるという事と、この「PK」がまたやたらと前評判が良い為、覚悟を決めてDVDをレンタル。寝不足の目を擦りながらも鑑賞した。しかも170分という長尺であった為、正直観る前は怯んでいたが、結論としては本当に観てよかった。

 

あらすじ

ランチョーとファルハーン、ラージュという男3人はインドでもトップクラスの工科大学に行っており、大親友だ。大学を卒業してから10年後,ファルハーンとラージューが卒業後行方不明になったランチョーを探しながら,大学時代のことを思い出す形でストーリーは進行する。ランチョーは勉強熱心で仲間思いな学生だった。しかし,成績を上げるための勉強を重視して過度な競争を煽る学長のやり方に疑問を持ち,さらに自分の考えをはっきり言う性格のため,学長といつも対立してしまう。学長は3人のことをよく思っていない為、あらゆる手でランチョーたちを退学させようとするのだが,優秀なランチョーは柔軟な発想でうまく切り抜けていく。だが、そんな学生生活も束の間、さらに深刻な問題の数々が彼らを襲う。そして10年後,行方不明になったランチョーはどこへ行ったのか。そして、何故行方不明になったのか?果たして親友3人は再び、無事再会できるのか?

 

感想 

インド映画史上歴代興行収益一位とか、スティーブン・スピルバーグが3回観たとか、ブラッド・ピットが「心震えた」などとコメントを寄せたとか、国内外からの評価もかなり高いとの事であるが、それも納得の出来栄えだと思う。

 

この作品は基本的に学園ものである為に、まず背景のインドにおける教育事情が重要になるが、かつてのカースト制度の影響が強いインドは、日本よりもはるかに厳しい学歴社会らしい。その中で、産まれた時から競争社会で生き抜く事を強要される子供たち。それはインドの貧困層が人口の6割を占める為、医者やエンジニアにならなければ将来が不安だという社会情勢もある。

 

ただ、そういった親からの過度の期待やプレッシャーによって、ストレスを溜めて学生の自殺が多い事もインドの社会問題になっているらしい。エリート工科大学を舞台にした本作では、その歪な背景が如実に表れていて、学園長を含めとにかく点数と順位を上げる事が教育だと思っている。

 

だが、それに真っ向から反発するのが、主人公のランチョーだ。学校全体に蔓延する権威主義に対して、「順位を上げる事では無く、学ぶ事自体が大事」と教師たちに盾突き、実力で学年トップを取ってしまう。このランチョーのセリフがいちいち本質を突いていて、素晴らしい。例えば「主人が手に鞭を持っていれば、『椅子に座る必要がある』とサーカスのライオンは学ぶ。しかしそいつがよく教育されたライオンと呼ばれることはないだろう。よく調教されたライオンと呼ばれるはずだ。」と 、本来勉強は強制されて行うべきでは無い事を説くシーンなど、教育の本質を突いていると思う。

 

しかし、だからと言って決して堅い映画にはなっておらず、ボリウッド特有の歌あり踊りありで、基本的にはコメディタッチの楽しい映画になっているのも見事だし、脚本も伏線の回収の仕方も含めてとても上手い。途中にも驚きの展開もあり、サスペンスとしても優れていると思う。

 

良い映画には、作品が発信するメッセージがある。ただ、それは劇中のセリフで明確に説明されるとは限らなくて、鑑賞後の観客の心にぼんやりと残り、日々の生活の中でふいに思い出されたりする事で、その人の人生を少しだけ豊かにしたりする。この映画は観客に「環境に左右されず、自分の信じた道をしっかり生きろ」と言っている。エンドクレジットを観ながら、僕は少し気が楽になった。ラージクマール・ヒラーニ監督の新作「PK」は確実に観る事になりそうだ。

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