映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「PK」を観た

「PK」を観た。

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監督:ラージクマール・ヒラニ

日本公開:2016年

 

ラージクマール・ヒラニ監督の前作「きっと、うまくいく」は、傑作インド映画だったが、再びあの監督と主演がタッグを組んだ作品が日本公開となった。前作は教育とは何か、学ぶ事の本質とは何かというテーマの作品だったが、今回はなんと「宗教」がテーマだ。恐らく、日本とインドの宗教観は全く違う為、バラモン教ヒンドゥー教イスラム教など宗派が多岐に亘るインドにおける公開時のインパクトは、かなりのものであったのでは無いだろうか。ただ、インド映画史上最大のヒット作になっているらしい。映画が始まる前の字幕にて「特定の宗教を否定する内容ではありません」と表示されるが、とてもナイーブなテーマに踏み込んだ勇気ある作品だと言える。

 

あらすじ

ある日、インド上空に宇宙船が現れ着陸する。そこから現れたのは、裸の男。胸にはネックレスのように何か機械をぶら下げていた。だが地球に降り立ち、最初に出会った老人に機械を盗まれてしまう。

 

場面は変わって、留学先で悲しい失恋を経験し、今は母国インドでテレビレポーターをするジャグーは、ある日地下鉄で黄色いヘルメットを被り、大きなラジカセを持ち、あらゆる宗教の飾りをつけてチラシを配る奇妙な男を見かける。チラシには「神さまが行方不明」と文字が書かれており、その男は盗まれた宇宙船のリモコンを神様に見つけてもらうのだと言っている。これはネタになると踏んだジャグーは、他の人から“PK(酔っ払い)”と呼ばれるその男を取材することにする。「神様探し」という常識外れで、今までの地球のルールが全く通用しないPKの純粋な問いかけは、やがて世間に大きな騒動を巻き起こし始める。果たしてPKは無事にリモコンを取り返して、自分の星に帰れるのか?

 

感想 

この作品の主人公PKには、地球の常識は全く通用しない。それは何故なら宇宙人だから。この破天荒な設定が全く気にならない程に、最初からストーリーの力でグイグイと映画の世界観に引き込んでくる。改めて、世の中を見てみると、当たり前に様々な服を着て歩いて、お金を払って買い物して、盗みなどしないでルールに則って生活しているが、全く違う星からやって来た男にはこれが全て理解出来ない。その中でも特に理解出来ないのが、「宗教」という訳である。

 

何故、同じ人間同士なのに、全く違う神様を崇拝していて、更には宗派によってルールを設けたり、いがみ合ったりするのか?何故、教祖と呼ばれる人は神様の声が聞けるなどと言って信者からお金を取るのか?そして、信者は何故見た事も無い神様の代わりと言い張る教祖に、お金を払ってしまうのか?

 

これらは、いわゆる「タブー」というやつで、反社会的な行動に移さない限りは教団の中でのルールで成り立っていた問題を、このPKはいとも簡単に突き破って観客に提示してみせる。これが痛快なのだ。「そうだよなぁ、確かに」という事の連続で、しかも劇中における教祖はこの問いかけに、ロジカルな回答が出来ないでいる事から、PKの言ってる事の正しさがハッキリ浮かび上がる。

 

親の信仰する宗教のせいで、悲しい運命を辿らざるを得なかった2人の男女をストーリーの軸においてストーリーは進むが、世界中で起きているテロリズムにも言及する場面がある。ただ、この映画の素晴らしいところは、宗教をテーマにした上で盲目的に信仰する事の危険性は提示するが、決して信仰自体を否定しないところである。苦しい時や悲しい時に人間の創造主たる神を信じる事で救われる事もあるだろう。しかし、人間が神の代わりを担ったり、人間が神を護る為に他人を傷付ける事はおかしいという事を、ハッキリ突き付けるのである。これは世界共通のテーマとして、極めて現代的なメッセージでは無いだろうか。

 

映画としても、脚本の伏線回収の見事さは、前作「きっと、うまくいく」から全く衰えていない。インド映画特有の歌と踊りももちろんあるし、メッセージ性が高いのに、こんなに笑えて泣ける最高のエンターテイメント作品になっているのは、本当にすごい事だと思う。この「PK」という作品、映画ファンなら絶対に観る価値のある素晴らしい作品になっている。

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