映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「スカーフェイス」を観た

スカーフェイス」を観た。

f:id:teraniht:20161127110039j:plain

監督:ブライアン・デ・パルマ

日本公開:1984

 

今やギャング映画の金字塔と言われる「スカーフェイス」を観た。恐らく、通算では3回目。ブルーレイでは初めて観たが、かなり高画質で楽しめた。170分と長尺の作品だが映画のテンションが高く、とてつもなく面白いので全く長さは感じない。監督がブライアン・デ・パルマ、脚本がオリバー・ストーンというのも映画ファンには堪らない。

 

アル・パチーノ演じる「トニー・モンタナ」は、アメリカでは文化的なポップアイコンとなっており、特にヒップホップジャンルのアーティストからは絶大なる支持を受けているらしい。楽曲のリリックにもこの作品のセリフが多く引用されていたり、PVにも映画のロケ地が使われたりとバイブル化している一方、いわゆるマーチャンダイジングとしての商品化もかなりされて、ポスターやフィギュア、スマホケースやスニーカーに至るまで全世界で流通している。いわゆるキャラクタームービーでは無く、ギャング映画の主人公が何故ここまで愛されているのか?やはり、それには理由がある。

 

あらすじ(ネタバレ全開)

1980年5月、カストロ議長はキューバの港の封鎖を解除し、反カストロ主義者のトニー・モンタナはボートピープルとしてフロリダに着く。犯罪歴のあるトニーは仲間のマニーとともにフリー・タウンに送られ、そこで裏の仕事として、元政治犯のレベンガを殺して労働許可証を得る。レベンガ殺しを依頼してきたオマールは麻薬王フランクの手下で、トニーにコロンビア人からコカインを受け取る仕事を依頼してくる。その取引には罠があり仲間が惨殺されてしまうが、トニーはコロンビア人たちを皆殺しにしてコカインを手に入れる。

 

フランクはトニーの度胸を気に入り、仲間に引き入れる。羽振りが良くなったトニーは5年ぶりに母親と妹ジーナの暮らす家を訪ねるが、母親はトニーが堅気ではないことを見抜いて彼を追い返す。しかしジーナは兄を慕い、トニーも妹を大切にしていた。

 

トニーはボリビアで大量のコカインを製造しているソーサとの巨額な取引をまとめようとするが、フランクは額の大きさに尻込みをする。ソーサはフランクよりもトニーを信用し初めており、トニーの才覚と度量を恐れたフランクは殺し屋を雇ってトニーを始末しようとするが失敗し、逆にトニーに殺される。トニーはずっと狙っていたフランクの情婦エルビラも奪い、麻薬王としてのし上がっていく。

 

トニーは遂にエルビラと結婚し厳重な警備で守られた大邸宅で暮らし始める。しかし次第に人が信用できなくなり、コカインを常用するようになっていく。エルビラもすっかりジャンキーとなり、それもトニーを苛立たせる。ずっと右腕だったマニーとの関係も壊れ始め、トニーはどんどん孤立していく。そしてエルビラとの関係も遂に破綻する。

 

トニーは裏金の証拠を警察に握られ、脱税で摘発されていた。麻薬取り締まり委員会はすでにソーサとその裏にいる大物政治家たちの存在も突き止めており、ソーサは委員会の最高顧問の暗殺を企てる。トニーは暗殺を手伝う代わりに実刑を免れる事を約束していた。

 

そして、ソーサの手下である殺し屋と手を組んで暗殺を実行するはずだったが、爆弾を仕掛けた最高顧問の車には彼の妻と子供まで同乗してくる。トニーはどうしても子供を殺す事が出来ず、遂には殺し屋を銃殺してしまう。

 

トニーの屋敷には妹のジーナが出て行ったと母親から連絡が入っていた。トニーはジーナがいるという家を訪ね、そこでマニーに迎えられる。2人の関係を知らなかったトニーは瞬間的に激昂しマニーを射殺してしまう。マニーとジーナは昨日結婚したところだった。

 

半狂乱のジーナを連れて屋敷に帰ったトニーは、マニーを殺してしまったショックでコカインを大量に摂取する。すでに屋敷内にはソーサが差し向けた数十名の部下たちが侵入しており、トニーの部下たちは次々と殺されていく。残されたトニーは巨大なマシンガンで敵を撃ちまくる。しかしトニーも大量の銃弾を浴びついには絶命してしまうところで、映画は終わる。

 

感想

やはりトニー・モンタナの強烈なキャラクターが、この映画において相当な魅力となっている。なんと劇中で226回「F◯CK」ワードを言っているらしく、そのほとんどが彼の発言だ。90年代に「パルプ・フィクション」が公開されるまでは、歴代ナンバーワンの出現率だったらしいが、上映時間で割ると一分に1.32回という驚異的なアベレージになっている。ちなみに近作だと「ウルフ・オブ・ウォールストリート」が1位だろう。

 

とにかくトニー・モンタナというキューバからの移民が、度胸と威勢だけで闇の世界で成り上がっていく任侠モノストーリーだと思われがちだが、今回観直してみてトニーの交渉能力の高さに驚かされた。冒頭のアメリカ入国管理官とのやり取りから彼の才能は発揮されているし、特にそれが麻薬王ソーサとビジネスの交渉する際には、相手を挑発したり宥めたりしながら、最後は人間力で信頼を勝ち取るという営業力の高さを見せる。彼はただの野蛮人では無いのだ。

 

またどんな状況でも女子供は殺さないという信念も、彼の魅力のひとつだろう。愛する者を傷付けてしまう程、不器用で口が悪く、血の気が多い犯罪者だが、彼の生き方や銃撃戦における”Say hello to my little friend !”を始めとする名セリフの数々が、確実にトニー・モンタナを魅力的にしているし、アル・パチーノの卓越した演技力のお陰で、実在感のあるキャラクターとして成り立っている。

 

更に「スカーフェイス」を語る上で、バイオレンス表現は外せない。有名なのは、序盤のバスタブでのチェーンソーのシーン。凄惨な現場と、外でナンパしながら車で待つ仲間をワンカットで観せるカメラワークもさる事ながら、実際に切断するシーンは観せずに、アル・パチーノの表情から観客が想像で補完出来るように配慮されている。それがまた恐ろしい。ただ、極めて映画的なシーンで作り手のセンスにゾクゾクするのも事実だ。

 

またラストの襲撃シーンにおける、コカインの大量摂取により完全にキレた演技と、二階建て屋敷のセットを活かした、マシンガン連射の大立ち回りと背後から撃たれた後の転落シーン。先程のセリフと共に有名な場面だが、これは間違いなく映画史に残る名シーンである。

 

ギャング映画の代表作と言えば、もちろんフランシス・フォード・コッポラ監督の「ゴッドファーザー」シリーズが挙げられるだろう。あの映画は静謐で静かなトーンにより、イタリアンマフィアの家族の物語を語っていた。だが、この「スカーフェイス」はもっと粗野で荒々しく、エネルギッシュだ。それはもちろんアル・パチーノの演技力であり、オリバー・ストーンの脚本力であり、デパルマの演出力が産んだ「トニー・モンタナ」というキャラクターが持つ力だろう。

 

90年マーティン・スコセッシ監督の「グッドフェローズ」に並ぶ、80年代傑作ギャング映画として「スカーフェイス」は映画ファンなら必ず観ておかなければいけない作品となっていると思う。個人的には、ブライアン・デ・パルマ作品で「ファントム・オブ・パラダイス」「キャリー」に並ぶ重要作だ。