映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

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映画「ドント・ブリーズ」ネタバレ感想&解説

ドント・ブリーズ」を観た。

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リメイク版「死霊のはらわた」のフェデ・アルバレスが監督、そしてあのサム・ライミが制作を担当したショッキング・スリラー。全米でもかなりの大ヒットを達成したらしい。朝一番の回だったにも関わらず、劇場は映画好きと思われる人たちで、なかなかの盛況ぶりであった。会話から結構リピーターも多いのではないかと思わされたが、それも映画を観て納得。今回は、ほぼネタバレ無しで。

 

監督:フェデ・アルバレス

日本公開:2016年

 

あらすじ

舞台はデトロイトのゴーストタウン化した住宅街。ろくでもない親元を離れ、生まれ育った街から幼い妹を連れて逃げ出すため、資金が必要なロッキーは、恋人のマニーと友人のアレックスとともに、地下に大金を隠し持っていると噂される盲目の老人の家に、無計画に強盗に入る。しかし、その老人は目が見えないかわりに、どんな音も聴き逃さない超人的な聴覚をもち、元軍人で暴力的、さらには異常な本性を隠し持つ人物だった。暗闇に包まれた家の中でロッキーたちは、この恐ろしい家から無事に脱出出来るのだろうか?

 

感想&解説

観終わった後の感想は「とにかく疲れた」。終演後の劇場も、やっと皆が深い呼吸が出来たといった様に安堵の溜息が漏れていた。タイトルの「ドント・ブリーズ」の通り、観ている間は観客も一緒に息を止めて、スクリーンの映像をひたすら見詰める事になる。この映画には退屈するとか、時間が気になるといった感覚は無縁だ。映画を観ながら、心臓がキューっとなる感覚を久しぶりに感じた。はっきり言って娯楽映画としては、文句の付けようがない大傑作だろう。この映画、とてつもなく面白い。

 

ストーリーは単純明解。登場人物も極端に少ない。正直、プロットを知った段階では、どうやって話を膨らますのか?と心配した位だ。まず、盲目の老人宅に強盗に入る若者という時点で、こちらが全く感情移入出来ない輩が、思ったより強い老人にコテンパンにやられる話で、若者がやられる度に観客がカタルシスを感じる造りなのかと思っていたが、本作は真逆。

 

若者が強盗に入るのに一応しっかりとした理由があり、さらに盲目の老人がいともあっさりと一人目の若者を無慈悲に殺した時点で「うわー、これはヤバイ。早く脱出しないと」と観客が自然に思うように作られている。こうなると、もうスクリーンの中の若者たちと同じ気持ちで、暗闇に息を潜めたり老人の襲撃に驚いたりしながら、文字通り映画を「体感」する事になる。またこの盲目という設定が上手い。通常のホラーものと違って、見つかっても「音」さえ出さなければまだ何とかなるという、さらに一段階先の緊張感を演出出来ているからだ。

 

しかもこの映画、最後の最後まで全くストーリーの先が見えない。逃げれるか?と思ったら思わぬ展開になったり、逆にもう安全だろと思った途端に窮地に陥ったりする。緊張と緩和のバランスが絶妙な上に、誰が助かって誰が死ぬのか?が全く想像出来ない。完全なバッドエンディングの可能性も全然あり得る内容の為、エンドクレジット直前まで、ひたすら心が緊張し続けるのだ。ちなみに残虐描写、いわゆるスプラッターシーンは皆無だ。終盤に若干老人の異常性が露わになるシーンは人により嫌悪感があるかもしれないが、基本的にはかなり広い層の観客が観ても楽しめる作品だと思う。但し、上映中は常にドキドキしているので、心臓に負担はかかる。そこだけは注意が必要だ。

 

想像していたよりも数段優れた映画で、とても充実した気持ちで劇場を後に出来た。こういう作品があるから、僕は映画を見続けているのだと思う。この手のジャンルムービーが嫌いじゃなければ、この「ドント・ブリーズ」は絶対的にオススメしたい。

採点:8.5(10点満点)