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映画「ミス・ペレグリンと奇妙な子供たち」ネタバレ感想&解説

「ミス・ペレグリンと奇妙な子供たち」を観た。

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「シザー・ハンズ」「チャーリーとチョコレート工場」などのティム・バートン監督が全米で300万部以上を売り上げた大ベストセラー児童文学をもとに作り上げたファンタジー作品。ティム・バートンお得意の世界観だが「ダーク・シャドウ」「アリス・イン・ワンダーランド」など、近作が個人的にはあまりピンと来なかっただけに、今作もどうかと思ったが、この「ミス・ペレグリン〜」は素晴らしい作品に仕上がっていたと思う。

 

監督:ティム・バートン

日本公開:2017年

 

あらすじ

いじめられっ子で周囲になじめない孤独な少年ジェイク。ある日、唯一の理解者だった祖父の家を訪れると、裏の森で死にかけている祖父に出会う。謎めいた言葉を告げたまま亡くなった祖父の意思に従うように、ジェイクは小さな島に渡り、ある洞窟の前で奇妙な子ども達に出会う。

 

導かれるように子ども達と共に、その洞窟を抜けると、そこには美しい屋敷があった。そこで出会ったのは、美しくも厳格なミス・ペレグリン。子ども達はそれぞれ奇妙な能力を持っており、普通の世界では暮らせない為、ミス・ペレグリンとその屋敷でひっそりと暮らしていた。またミス・ペレグリン自身も時間を操ったり、鳥に変身出来たりという能力を持っており、深刻な理由からある1日を延々とループするという生活を送っていた。しばらくの間、子どもたちと心を通わせ、夢のような時間を過ごしたジェイク。だが屋敷の子ども達には恐るべき脅威が迫ろうとしていた。

 

感想&解説

まずティム・バートン監督が紡ぐ、ファンタジックな世界観がいつもながら素晴らしい。ビジュアル的にワクワクさせられるだけで、こういった映画には価値があると思う。ミス・ペレグリンを演じるエバ・グリーンも、まさにこの世に存在するとは思えない、浮世離れしたキャラクターを嬉々として演じているし、子ども達の特殊能力もそれぞれ意外性があり、キャラが立っていて単純に楽しい。

 

また、意外と今作はシナリオ的にもヒネリがある。最初は「アダムス・ファミリー」的なホラーコメディタッチの世界観を楽しむタイプの作品かと思いきや、中盤からサスペンスフルな展開を見せ始める。いわゆる「タイムループ」の要素を入れた事でストーリーにロジカルさが生まれ、ストーリーにもキチンと引き込まれるのである。世界観も怪奇ホラーとファンタジーのバランスが取れていて、映画としてしっかり構成されている。

 

逆にこの映画の課題は、この「ループ」の理屈が複雑な点だろう。あまりネタバレはしないが、この世界にはある理由の為に時間を操る異能者が作ったループの輪がいくつもあり、それぞれの時代の中でループが成り立っているという設定がある。これが結構ストーリーの重要なポイントなのだが、集中して理解しながら観ないとラストで置いていかれる事になる。

 

最近のティム・バートン作品としては、ブッチギリの面白さと完成度の本作。悪役はこの手の役が板に付いてきた感のあるサミュエル・L・ジャクソンで、彼も相変わらずのハマリ役だ。本国でも大ヒット中らしいが、今作はそれも納得の出来映えである。だが、見かけに反してファミリームービーとして子供が観るには、ストーリーがちょっと複雑かもしれない。ティム・バートン得意のちょい悪趣味ホラー演出も全開だ。だが良い意味で「ビートル・ジュース」や「マーズ・アタック」「スリーピー・ホロウ」の90年代以前のブラックなのにクールというティム・バートンの世界観が戻ったと素直に感じられる快作だと思う。最近のティム・バートン作品に物足りなさを感じていた方こそ、本作はオススメしたい。

採点:7.0(10点満点)

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