映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「ザ・コンサルタント」を観た

「ザ・コンサルタント」を観た。

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監督:ギャビン・オコナー

日本公開:2017年

 

ベン・アフレック主演の暗殺者ものアクションムービー、という事で、正直「まぁ、なんとなく想像出来る内容だろうな」と全く期待せずに鑑賞。結果、良くも悪くも想像していなかった内容の映画だった。一言で言えば「すごく変な映画」。アクション映画と言えるのかどうかも微妙なところだ。今回は若干ネタバレ有りで。

 

あらすじ

クリスチャン・ウルフは、自閉症を患いながも、人よりも数学に秀でた才能を持つ人物。小さな町の会計を担う公認会計士として事務所を経営しながら、裏では世界に数多くある危険な犯罪組織の財務を任されるフリーランスの会計士として活躍していた。そんな中、最新のロボット開発技術を持つ製造会社の数百万ドルに及ぶ不正を、同社の経理担当の女性社員ディナが発見し、その報告を受けた社長自らがクリスチャンに調査を依頼してくる。早速、会計帳簿をつぶさに精査したクリスチャンは、財務担当者の疑惑を暴き、不正の真実に迫る。だが、それは多くの死者を出す可能性のある事件の始まりでもあった。不正を暴いたクリスチャンとディナに魔の手が迫るが、実はクリスチャンには暗殺者としての顔もあった。

 

感想

最近、なんだかこの手の作品が多い気がする。「イコライザー」然り「ジャック・リーチャー」然り「ジョン・ウィック」然り。普通に生活している地味な男が、実はすごく強くて事件に巻き込まれた途端、バッタバッタと敵をなぎ倒していくというタイプの映画だ。ちなみに今回の「ザ・コンサルタント」は、主人公の設定に「会計士」と「自閉症」というのが付く。

 

演じているのは、ベン・アフレック。彼のぬぼーっとした佇まいが、今回の主人公クリスチャン・ウルフに不思議な魅力を与えているのは間違いない。子供の頃から自閉症の為、他人とのコミュニケーションが苦手だが、数字の天才。やり始めた事は最後まで終わらせないといけないという、脅迫観念に囚われている。

 

映画の序盤は、依頼を受けたベン・アフレックが会計士として、大企業の不正会計を暴く展開だ。さながら「ビューティフル・マインド」のラッセル・クロウが演じていた天才数学者の如く、「彼だけが解っている世界」を会議室の壁面いっぱいに書いた数字の羅列によって、表現するシーンは面白いし、彼の特別な能力をよく表している。その敏腕会計士の顔と、かたや冷徹な殺し屋としての顔を、比較して描く事がこの映画の肝だが、実はそれが意外と上手く行っていない。

 

この映画、クリスチャンがどの様な少年時代を過ごしたか?の回想シーンが挟まれたり、この会計士の正体を追う捜査官の視点が入ったり、クリスチャンが過去に行った犯罪シーンが入ったりと、映画の視点が頻繁に変わるので、その度にストーリーの流れが途切れてしまう。シンプルなストーリーを、わざと時制を入れ替えて複雑にしている様に見えてしまう程だ。

 

また後半、会計士が暗殺者となって、大企業の追っ手を倒しまくる展開であり、挌闘技の「シラット」と銃撃で悪の拠点に乗り込むシーンも、ベン・アフレックのアクションは頑張ってはいるが、今や割と見慣れてしまったシーンの連続で感動は薄いと言える。この映画ならではのアクション映画的な「センス・オブ・ワンダー」は残念ながら無いと思う。

 

では、この「ザ・コンサルタント」が凡庸な駄作かと言えば、実はそうでも無い。それは前述のとおり「すごく変な映画」だからである。例えば、ヒロインのデイナとの初対面のシーン。主人公が入った会議室に徹夜作業の為に寝ているデイナがいて、彼女を起こそうとするというシチュエーションがある。直接、彼女に触れない様に何度もドアを開け閉めしたり、椅子をガタガタしてみたりしてデイナを起こそうとするのだが、それがテンポ的にも「間」としても、なにか変なのだ。

 

あとは農場の老夫婦の前で、悪人を躊躇なく殺すシーン。呆然とする二人の前で、首をへし折っておいて、バツの悪そうに片手で挨拶しながら立ち去るシーンとか、悪玉のあまりに雑な扱いとか、あえてハズしているとしか思えない演出の数々が、この映画になんとも言えない空気感を与えている。ネタバレになるが悪の手下として働いていた弟と久しぶりに再会し、ラスボスを完全に放置して兄弟で昔話を始めた時は、ギャグなのかと思った。しかもラスボスは、見せ場もなくその後瞬殺されるのである。

 

あるキャラクターの映画前半の伏線が回収されるラストの展開など、シナリオ的に面白い点もあるが、この映画の最大の魅力は、この「ハズした間」ではないだろうか。そういう意味では、普通の映画を見飽きたという、かなり玄人向けの作品だと言えるかもしれない。スカッとするアクション映画を期待している方は肩透かしだし、ロジカルなシナリオやどんでん返しがある訳でもない。だが、多分続編が公開されたら、恐らく僕は観に行くだろう。やはり不思議な映画である。