映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「ラ・ラ・ランド」を観た

ラ・ラ・ランド」を観た。

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監督:デミアン・チャゼル

公開:2017年

 

目下、第87回アカデミー作品賞の最有力候補の「ラ・ラ・ランド」は、前作「セッション」が話題となったデミアン・チャゼルの最新作である。主演ライアン・ゴズリングエマ・ストーンが送るミュージカル作品であり、アメリカのミュージシャンであるジョン・レジェンドも共演し、楽曲提供も行っている。今回はほぼネタバレ無しで。

 

あらすじ

舞台は"夢を追い求める人"が集まる現代のロサンゼルス。いつか自分のジャズの店を開くことを夢見るジャズ・ピアニストのセバスチャンは、なかなかピアニストとして芽が出ない。また女優を志し、オーディションを受け続けるミアも厳しい現実に直面していた。そんな二人がある日出会い、恋に落ち、夢を叶えるため奮闘していく。

 

感想

ミュージカル作品の魅力とは何だろうか?素晴らしい楽曲があり、役者が踊り、歌う。その歌詞と歌声は、時には実らない恋を憂いたり、逆に溢れる愛を伝えたりする。そして、音楽の力によって、それがエモーショナルになったり、時にはシンプルになったりしながら、ダイレクトに観客に伝わる。セリフだけで聴くのとは違う、「音楽と一体になったフレーズ」としてストレートに胸に響く事によって、強烈に心を揺さぶられるのだ。

 

ラ・ラ・ランド」は、このミュージカル作品の魅力の全てがあると思う。そして、それらを支える強い柱に、作り手の「揺るぎない音楽への愛」がそびえ立っている。特にこのデミアン・チャゼル監督の場合は、ジャズへの愛だろう。劇中、ライアン・ゴズリング演じるセバスチャンのセリフである「世間はジャズを死なせてやれと言うけれど、俺はそれを許さない」は、監督のメッセージであり、意志だと思う。

 

冒頭の高速道路が渋滞しているシーン。ラジオの内容から、季節は夏だと示される。様々な車から流れてくる音楽を、細切れに重ねながらカメラは横にパンして車たちを映していく。ある車からはロックが、ある車からはポップスが聴こえる。すると、一人の女性が乗った車でカメラが止まる。バックには「ANOTHER DAY OF SUN」というスイングジャズが流れ出し、中にいる女性が突然歌い始めたかと思えば、車外に出て踊り始める。それを皮切りに他の音楽を聴いていた車からも人々が飛び出し、この楽曲をバックに踊り出す。カメラは縦横無尽に動き回り、様々な人種の様々な年齢の人達が楽しそうに、そして完璧な振り付けで踊る様を映し出す。これは「この映画内ではジャズが流れる時には、特別な魔法がかかりますよ」という高らかな宣言だ。一連のダンスシークエンスが終わると、実は冬のロサンゼルスの高速道路である事がわかる。

 

正直に白状すれば、このシーンから僕は涙が止まらなかった。もちろん悲しくてではない。こんな素晴らしい映画を観ているという、幸せのあまり泣けて仕方なかったのだ。とにかく音楽の素晴らしさと役者たちの躍動感、恐らくポストプロダクションでカットは割っているだろうが、この複雑なカメラワークと映像処理という、本シーンを構成する全ての芸術性に感動しながら、あまりの多幸感に泣けたのである。

 

この映画は、昔のミュージカル名作からの影響が強いと言われおり、それは事実だと思う。だが単なる懐古主義に留まらない、作り手の「最高の現代版ミュージカルの名作」を作ろうという意志と愛が全編に漲っており、それが映画のテーマと共にストレートに観客に伝わるのである。過去への敬意は忘れていないが、これからの映画史への確かな一歩をしっかりと感じる作品になっているのだ。恐らくアカデミー作品賞は間違いないと思う。(2017/2/27追記:アカデミー作品賞は「ムーンライト」に決定。この作品の素晴らしさに思わず、結論を先走ってしまいました。失礼しました)

 

正直、ストーリーは既視感が強い。愛と自分達のキャリアをトレードオフするしかない宿命の、二人のアーティストの恋愛を描く作品だ。売れないピアニストと女優である二人の間には常に表現者としての葛藤や、安定した生活への焦りがある。逆にそれをどちらか一人が手にするという事は、エンターテイメントの世界では、もう一人には手が届かない新しいステージに行ってしまう事を意味している。

 

映画序盤のエマ・ストーンライアン・ゴズリングの完璧過ぎない歌やダンスも、この二人の「クオリティでは無く、何かを表現する事自体の楽しさ」と「二人の抜群の相性」を描いている様で、それがまた良い。この作品の中でこの二人が歌い、そして踊るシーンはありきたりな表現だが、本当に「ロマンチック」だ。歌声で、恋する楽しさと一抹の苦しさが見事に演出されている。

 

映画のラストシーン、セバスチャンの弾くジャズピアノの魔法が見せる幻想は、一体どんな光景なのか。それは映画を観て確かめて頂きたいが、涙で滲むスクリーンを見つめながら、僕はこの映画を届けてくれた方達に感謝の気持ちでいっぱいだった。この「ラ・ラ・ランド」は映画という「人が動いている映像と音楽を楽しむ」という根本的な喜びに浸れる大傑作だと思う。個人的には、これを超える作品に今年出会えるのか、が不安な程だ。

 

サントラを聴きながら、このブログを書いているのだが、シーンを思い出しては、ちょっと涙ぐみそうになる自分が厄介だし、気持ち悪い。この映画への恋が早く醒めると良いのだが。

 

「セッション」の感想はこちら

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