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映画「モアナと伝説の海」ネタバレ感想&解説

「モアナと伝説の海」を観た。

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「アラジン」「リトル・マーメイド」を作った名コンビ監督が送る、ディズニー長編アニメーション56作目作品。近作のディズニーは、「ズートピア」「ベイマックス」「アナと雪の女王」とまさに快進撃中だ。久しぶりのミュージカル作品という事もあり、とにかくディズニーもプロモーションに力が入っている。

 

監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ

日本公開:2017年

 

あらすじ

この世界を生んだ命の女神テ・フィティの心が半神マウイによって盗まれた時、この世界に闇が生まれた。だが、この世にはすべてが闇に覆い尽くされる前に、海に選ばれし者が現れ平和をもたらすという言い伝えがあった。幼い頃のあるきっかけで海に愛された少女モアナ。海に選ばれたのは、千年もの永きに渡って海に出ることを禁じられた島で育った、そのモアナだった。少女は島の長である父親の反対を押し切り、世界を救うため一人大海原へと旅立つのだった。

 

感想&解説

眩しいばかりに清々しい、ディズニー王道アニメーションの快作だ。波や風の表現は言うに及ばず、砂浜や木々の質感まで見事に表現されていて、湿度や匂いまで感じられそうな作り込まれた画面。デフォルメされながらも、アニメーション特有の画が動く気持ち良さをとことん追求した動きの数々と、日本のアニメーションとは一線を画すリアル志向のキャラクター設定。全体的にコントラストが強めで、本当に南国の日差しの中でキャラたちが生きているような舞台設定。ディズニーアニメーションの良さが全て詰まった素晴らしい作品だと思う。

 

またこの作品の魅力は何より音楽だ。主題歌の「How Far I'll Go」を始め、これぞミュージカルアニメという、キャラクターの心情に寄り添ったドラマチックな楽曲の数々。これは作曲家のリン・マニュエル・ミランダの功績だろう。元々、ミュージカルの第一線級の作曲家で「ハミルトン」という、今アメリカでは最もチケットが入手困難と言われる、ミュージカル作品の音楽を担当した若き天才である。土着的なポリネシアンリズムあり、ブラックミュージック調あり、ラップありとバラエティに富んだ楽曲が映画を彩り、音楽を聴いているだけでも楽しい気分にさせられる。

 

その分、ストーリーは極めてシンプルだ。捻りはほぼ無いと言って良いだろう。自分のなすべき事に気付いた主人公が、幾多の困難を乗り越えて、目的を達成する物語である。だが、明確にこの作品が発しているメッセージは「女性の自立と活躍」だ。主人公のモアナは、全てを自らの意思で選択し、行動する。過去のディズニーアニメにおける王子様を待つ女性像では無く、リーダーとして率先して島の民を引っ張っていくし、自らを危険に晒しながらも、故郷の島から出て世界を救うという判断をする。

 

今作にはモアナと男性キャラとのロマンスは一切無い。ストーリーがそれを必要としていないのである。「アナと雪の女王」は「真実の愛」とは異性間だけでは無く、姉妹でも立派に成立するのだという「人間愛」をテーマにしていた作品だった。だからこそ、あれだけ多くの人に受け入れられた作品になった訳だが、今作は、それと地続きの現代的なメッセージを伝えていると思う。これからの世界は女性がリーダーとして、どんどん世の中を導いていくべきだし、海がモアナを選んだ様に、才能や強い意思があればそれは成就されるべきだと伝えている気がする。

 

今作は世界最高のアニメーション作家たちが作り上げた、最高峰のアニメーション映画だと思う。特に女性はモアナが悩み、そのうえで下す判断を見て勇気づけられるだろう。更にファミリーが観ても、十分に楽しめる作品になっている。アクションシーンも思いの外に充実しており、退屈する時間は無い。豚のプアというキャラクターが超絶カワイイのだが、個人的にはもっと活躍して欲しかったというのは、無い物ねだりだろうか。いわゆる映画マニアには、物足りない作品かもしれないが、老若男女の広い層にこの春の話題作としてオススメしたい。

採点:6.5(10点満点)

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