映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「サード・パーソン」を観た

サード・パーソン」を観た。

f:id:teraniht:20170321215632j:plain

監督:ポール・ハギス

出演:リーアム・ニーソンエイドリアン・ブロディミラ・クニス

日本公開:2014年

 

第78回アカデミー作品賞受賞の「クラッシュ」を監督したポール・ハギス監督の最新作。2014年公開当時観ていなかったので、改めてブルーレイで鑑賞。ポール・ハギスは群雄劇が得意な脚本家というイメージがあり、今作もそういう話かなと思っていたが、ラストに一捻りあるストーリーで楽しめた。役者陣もリーアム・ニーソンエイドリアン・ブロディ、ジェームス・フランコミラ・クニスとかなり豪華だ。今回はネタバレ全開で。

 

あらすじ

パリ。1作目でピューリッツァー賞を受賞、大きな成功を収めた作家のマイケルは、最新小説を書き終えるため、ホテルのスイートルームで缶詰めになっている。妻エレインと別居中の彼は、向上心に燃える若い小説家志望のアンナと不倫関係にあった。一方、ジャーナリストを目指し記事を執筆するアンナは、マイケルを愛しながらも、若さと美貌で彼を振り回し、そのスリル感を楽しんでいる。しかし、そんな彼女にはある秘密があった。

 

ローマ。スコットは、世界中を旅しながらファッションブランドからデザインを盗む仕事をしているアメリカ人ビジネスマン。ある日、“バー・アメリカーノ”に入った彼は、エキゾチックな女性モニカに一瞬にして心を奪われ、彼女が娘と久しぶりに再会しようとしていることを知る。だが、その娘に会うために必要なお金を盗まれてしまったと聞いたスコットは彼女を助けたい衝動に駆られ、お金を工面する。

 

ニューヨーク。昼メロに出演していた元女優のジュリアは、6歳の息子をめぐって有名な現代アーティストである元夫のリックと親権争いの真っ最中。経済的支援をカットされ、生活費も苦しいジュリアは高級ホテルで客室係として働き始める。息子ともう会えないのではという不安と孤独に追い詰められていく中、ジュリアの弁護士であるテレサから、裁判所の心証を変えるために精神科医の鑑定を受けることを勧められる。

 

この作品はこの3つのストーリーが、同時進行していく。

 

感想

この作品、1時間30分位を過ぎる辺りまで、各ストーリーは特に絡み合ってこない為、パラレルで話が進行していく様に見える。しかも各ストーリーが、正直それほど興味を惹く話では無い為に「これは退屈な映画だな」と思いながら観ていた。特にパリが舞台のリーアム・ニーソン演じるマイケルとオリヴィア・ワイルド演じるアンナの恋愛駆け引きストーリーには辟易とする。オリヴィア・ワイルドの感情の変化と行動に全くついていけない為、ただのエキセントリックな変人とそれに振り回される中年男の恋愛劇を延々と見せられ、なんとも言えない気持ちになる。しかも、彼女は実の父親とも禁断の関係にある事が示唆される。

 

ローマのエイドリアン・ブロディのストーリーにしても、娘を人質に取られた母親に恋したからといって、突然全財産を投げ打って危険を顧みずに行動する様は、あまりにリアリティが無いし感情移入し辛い。そしてエイドリアン・ブロディは、自らの息子を仕事の電話で目を離した隙にプールで溺死させたという辛い過去がある事が明かされる。

 

最後のニューヨークの話も、ミラ・クニス演じるホテルの客室係は、息子に会えるかどうかの打ち合わせの為の大事なメモは失くすわ、そのせいで遅刻して精神科医には会えないわ、ホテルの部屋の花瓶はメチャクチャに割るわで、なんとも観ていてモヤモヤさせられる。

 

全てのストーリーに「子供」が絡んできて、更に総じてリアリティが薄いのが特徴だが、実はそれにも理由がある。この映画、実はオリヴィア・ワイルドといちゃいちゃする本人役も含めて、各キャラクターは小説家のリーアム・ニーソンが書いた小説の登場人物でしたというのがオチなのである。映画の冒頭で彼が一人机に向かい、小説を書いている姿が描かれるが、映画のラストも同じシーンで終わる。

 

そして、水の入ったコップに入れるコイン、キム・ベイシンガー演じる彼の妻役との会話、子供の写真が待ち受けになっている携帯が水没するシーンなどから、彼ら夫婦の息子がプールの事故によって亡くなっている事が伏線として示される。そして何より、彼が描く小説のキャラクター達が何らかの形で、子供を失ったり取り返そうと苦悩したりする事を、小説のストーリーの骨格としているのである。だからこそ、中盤に現れる編集者に作品を読ませた際に「今書いているのは、自分の人生の言い訳を並べているだけだ」と一蹴されるのだ。

 

最も分かりやすいのは、エイドリアン・ブロディのパートである。電話によって目を離した隙にプールで子供を亡くした親というキャラクターは、小説家そのものであるからだ。冒頭のエイドリアン・ブロディの奥さんがプールに飛び込めないシーンも、水難事故の伏線のひとつである。そして、全てのパートに出てくる男の子の声による「Watch me(僕を見て)」の意味は、プールで目を離さなければ息子を亡くさないで済んだという、リーアム・ニーソン演じる小説家の贖罪の気持ちが現れている。

 

その他、各キャラクターに「白色」という共通点を用いることで、同じ小説のキャラクターだという目印にしているのもポイントである。小説家の書く文章に「白は信頼を示す色」というのがあるが、直後に映るエイドリアン・ブロディは常に白いシャツだし、ミラ・クニスが壊すのは白い薔薇の花瓶、そしてオリヴィア・ワイルドがラストに着ているのは白のドレスだ。

 

この映画における「サード・パーソン」=「三人称」とは、当然小説家であるリーアム・ニーソンを表しているタイトルだ。実際、映画終盤になるまでこういうストーリーだとは気付かなかった為、かなり虚を突かれたし、頭の中で伏線が回収される快感もあった。この展開は素晴らしいと思う。とはいえ、今作はちょっと構成を凝りすぎて、ラスト以外の映画としての面白さは控えめかもしれない。未見の方はまず「クラッシュ」をどうぞ。

 

「クラッシュ」の感想はこちら

www.teraniht.xyz