映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「T2 トレインスポッティング」を観た

「T2 トレインスポッティング」を観た。

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監督:ダニー・ボイル

日本公開:2017年

 

1996年に公開された青春映画「トレインスポッティング」の21年ぶりとなる続編が遂に公開された。監督は前作と同じダニー・ボイル。2008年「スラムドッグ$ミリオネア」や2010年「127時間」、2012年「スティーブ・ジョブズ」など、近年でも優れた作品を発表し続けている。出演もユアン・マクレガーロバート・カーライルらが再集結し、あのレントンやべグビーたちが20年歳を取って、どの様な人生を辿っているのか?を期待して鑑賞した。今回はネタバレ有りで。

 

感想

まず第1作目を観ている事が、大前提の続編である。しかも、何年も前に観てうる覚え状態だと、もう一度予習の為に観直した方がいいレベルで前作とリンクしてくるので、ここは要注意。全く前作を観てないで、今作を観ても冒頭からチンプンカンプンだろう。

 

「未来を選べ」が前作のキャッチコピーだったが、スコットランドの若者たちがヘロイン中毒になりながら、毎日を自堕落に破滅的な人生を送る様を描く作品として、「トレインスポッティング」は日本でも大ヒットした。続編として、あれから20年経った彼らはどうなっていたかと言えば、少なくとも全員が映画の冒頭では「全く変わっていなかった」という結論になるだろう。

 

20年前に仲間を出し抜いて、16,000ポンドという大金を持ち逃げしたレントンが、故郷に帰ってくる所から映画は始まる。ベグビーは殺人で刑務所に服役中だし、親友だったシック・ボーイは叔母のパブを譲り受けて経営しているが全くうまくいっておらず、裏では美人局や恐喝などの犯罪行為に手を染めている。スパッドは相変わらずジャンキーで、仕事もせずに妻子に愛想を尽かされている。当のレントンにしても、仕事はクビになっており妻にも逃げられ、八方ふさがり状態。彼らは本当に「何も変わっていない」のである。

 

今作のストーリーを推進する要素は、ベグビーが刑務所を脱走し、シック・ボーイがレントンが地元に戻ってきた事を話してしまった為に、ベグビーが復讐に来るという話だ。更にレントンらはパブを改装して風俗店をやるという目標を立てるが、サイフからカードを万引きしたり、EUの融資団体を騙して大金をせしめたりして、相変わらず犯罪から足を洗えていない。しかも劇中で、レントンはシック・ボーイの彼女に手を出して隠れてセックスしているし、相変わらずヘロインだって打ってしまう。ベグビーも自分の息子を犯罪に巻き込むし、昔の仲間を本気で殺そうと仕掛けてくる。

 

レントン達が将来への不安や日々の満たされない鬱憤から、まだ自分たちの人生がコントロール出来ず、ドラッグや犯罪に手を染めてしまうというストーリーが世界中の若者の共感を呼び支持されたのが前作であった。だが、20年経った今でも彼らは昔と同じ場所で、昔と同じ非常に狭い人間関係の中で、現実から逃げ続けて生きている。もちろんスパッドの様に「夢中になれる何か」を見つけて、自らドラッグを断ち切り人生を歩く事が出来たキャラもいる。この映画の唯一の救いである。(ちなみにスパッドの書いている小説は、「トレインスポッティング」一作目であるというメタ構造になっている)

 

更にラストシーン、レントンはまた自室に戻り、劇中で一度は躊躇したアナログレコードに針を落とすという行動をとる。その時に流れるのは、イギー・ポップの「Lust for Life」だ。そして、レントンが恍惚とした表情を浮かべて映画は終わる。一作目のオープニングを飾ったのがこの曲であった事を考えれば、見事に円環構造となった演出だが、見方を変えればレントンはやはり20年前に戻ってしまったとも取れる。

 

こうなると一作目を「お洒落」とか「クール」と評していた様に、今作は評価出来ない。正直に言えば、この映画を観た直後の感想は「付き合いきれんわ」であった。これは2時間に亘り、46歳のオッさん達のドタバタ劇を醒めた目で観ていた自分なりの感想だが、これは前作の様にスクリーンに映るキャラクター達に全く感情移入が出来なかった故の感想である。特に映画後半、レントンとシック・ボーイがヘロインを打つシーンがある。劇中ではヘロインで死んだ友を追悼するシーンがあるのにである。ここで僕は正直落胆した。まだ彼らは現実から逃げ続けるのか、と思ったのだ。

 

しかし一方で、これがこの映画が描きたかったアナザーサイドであるとも考えられる。これは彼ら個人の問題では無く、スコットランドの現実を映しているという事である。イギリスのEUからの離脱や、そもそもスコットランドが英国から独立するかしないかの国民投票で揺れている政治状態の今、レントン達の様に一度道を踏み外した者が真っ当に生きるには、厳しい時代だというメッセージも含まれているのかもしれない。こう考えれば、今はスコットランドにとって大きな選択の時だろう。レントンがバーでベロニカに語る「Choose your future」は、案外重い意味を持つのかもしれない。

 

最後に音楽は、相変わらずセンスが良い。アンダーワールドの「Born Slippy」は「Slow Slippy」という曲名でリメイクされているが、タイトル通りスローで感傷的な使われ方をして新鮮だし、新旧アーティストが奏でる楽曲の数々はダニー・ボイルの編集テンポと相まって、無条件に高揚する。

 

一作目の彼らに再び会える事は、この映画を観る大きな喜びだろう。20年分歳を取り、シワが刻まれた彼らの顔を観ていると、1996年当時の自分を思い出す。自分はこの20年間で何をしてきたのだろうか?この映画を観て、そんな事をふと考えてみてもいいかもしれない。

 

前作「トレインスポッティング」の感想はこちら

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