映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「LOGAN/ローガン」を観た

LOGAN/ローガン」を観た。

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監督:ジェームズ・マンゴールド

日本公開:2017年

 

X-MEN」シリーズを代表するキャラクターで、ヒュー・ジャックマンが演じるウルヴァリン/ローガンを主役に描いた作品。なんと「X-MEN」シリーズ初のR指定作品である。最近だと「デットプール」がR指定作品としても大ヒットしたが、今作もかなり暴力描写は激しめだし、映画の雰囲気もかなりアダルト寄りだ。主演を務めるヒュー・ジャックマンも、ウルヴァリンは今作で引退と明言しており、今までのシリーズとは一線を画す作品になっていた。今回はネタバレ無しで。

 

あらすじ

ほぼミュータントが滅びつつある近未来。年齢を重ねたローガン(ウルヴァリン)は治癒能力を失いつつあり、老いた身体にむち打ちながらタクシードライバーとして生計を立てていた。彼は仲間のキャリバンと共にメキシコとの国境沿いの家でプロフェッサーXこと、チャールズ・エグゼビアの世話をする日々だったが、チャールズの薬を購入する事も困窮していた。

 

そんなある日、看護師のガブリエラがある頼みごとをローガンの下へと持ち込んでくる。それは、少女ローラをノースダコタまで連れて行くこと。高額な報酬と引き換えに、渋々その頼みを引き受けたローガンが行動を開始すると、ドナルド・ピアース率いる謎の武装集団に襲われる。どうやら、彼らの目的は少女ローラらしい。なんとか追っ手から逃げ切り、車で荒野を旅する3人の行く手には想像を絶する運命が待ち受けていた。果たして、彼らは無事ノースダコタへと辿り着けるのか?

 

感想

この作品は、過去の「X-MEN」シリーズが好きな人ほど拒絶感が出るのでは無いだろうか。過去作は、X-MEN独特の各キャラクターたちが織り成す個性のぶつかり合いと、ミュータントと言われるマイノリティな存在が、人間たちとどの様に折り合いをつけながら共存していくのか、または戦っていくのかというのがシリーズの大きなテーマであったが、全体としてはミュータントたちの派手な外見やガジェットも含めて、最低限アメコミ的なポップな世界観は守られていたと思う。

 

ところが本作「LOGAN/ローガン」は、70年代のアメリカンニューシネマの様に、重くダークな雰囲気で映画は進んでいく。まず主人公のローガンが、常に体調が悪そうで痛々しい。いつも咳をしながら足を引きずり、苦しそうに行動するローガンに過去作の輝きはない。何か手元のものを読むときは老眼鏡をかけながら、すっかり老人になった車椅子のチャールズに定期的に薬を渡し、口を利いてくれない年ごろの娘に手を焼くローガンは、壮年期の疲れた男そのものだ。

 

この映画の中で、彼らはミュータントとしての能力を「自分たちの利益の為」に使う事は一度もない。降りかかる火の粉を払う為に、渋々あの爪を振りかざすのである。そして、一度戦闘が始まると辺りに血が飛び散り、腕や首が飛ぶ凄惨な戦場になる。今までのX-MENでは描かれなかった描写だが、実際ウルヴァリンがあの爪で戦うとこうなるのであろう。本作のミュータントに生まれた者の孤独と苦悩を描くには、これは必要な表現だったのだと思う。

 

僕は今作を観ている間、まるで西部劇を観ている様な気分になった。劇中で映画「シェーン」をチャールズとローラが観るというシーンがあったが、世の中から浮いた孤独な男が自分を捨てても大切な人たちを守る英雄譚としてストーリーの骨格は近いだろう。だが、いわゆるアクション映画としてのカタルシスは無いに等しい。誰かを傷付ける事に虚無感を感じている主人公なので、敵を倒す事が快楽に繋がる演出にはなっていないのである。

 

とにかく今作は「アメコミ映画」としてでは無く、戦う事しか出来ない孤独な男の生き様を描いた、「ヒューマンドラマ」として評価されるべき作品だと思う。地味で重く、切ない。明確に分かりやすく面白いというタイプの作品では無いが、一本の映画としては高い完成度だと思う。X-MENを見続けた一人のファンとして、ヒュー・ジャックマンが17年間演じたウルヴァリン/ローガンというキャラクターの幕引きを見届けられて良かった。