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映画「エル ELLE」ネタバレ感想&解説

エル ELLE」を観た。

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ポール・バーホーベンの新作を観たのはいつ振りだろうか。80年後半から90年頭にかけて「ロボコップ」「トータルリコール」「氷の微笑」で日本でも人気を博し、「スターシップ・トゥルーパーズ」でマニアの心も掴んだオランダ出身の監督だが、ハリウッドからオランダに戻り「ブラックブック」を公開したのが2006年なので、長編作品としてはかなり久しぶりの作品だと思う。出演はフランスの名女優イザべル・ユペール。「ピアニスト」や「8人の女たち」が有名だろう。さて本作「エル ELLE」だが、第89回アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされていたり、カンヌでもかなりの高評価との事で、公開規模は小さいながらもかなり劇場は賑わっていた。

 

監督:ポール・バーホーベン

出演:イザベル・ユペール、ローラン・ラフィット、ヴィルジニー・エフィラ
日本公開:2017年

 

感想&解説

「あ、こういう映画なのか」というのが、正直な感想だ。予告編を最初に観た時は、サスペンススリラーだとばかり思い込んでしまい、その先入観のまま観てしまった為、かなり肩透かしをくってしまった。予告編のクオリティが高くて面白そうだったというのもあるが、この作品はストーリーの面白さやサスペンス的な「衝撃のラスト」といった展開に期待してはいけない。

 

映画冒頭、覆面男がイザベル・ユペールをレイプするショッキングシーンがあるが、その後、彼女はまた淡々とした日常に戻っていく。警察にも届けず、泣いたりトラウマを負ったりといった事もない。この時点で、観客はこれは何か変な映画だなと感じるだろう。その後、彼女は成功したゲーム会社の社長だという事がわかるが、ワンマンなやり方故に社員たちには慕われていない。また、何故か街の人にも日常的に嫌がらせを受けているらしい。それは彼女の父親が39年前に犯した無差別殺人犯であり、まだ刑務所に服役していてメディアが取り上げているという事情があった。

 

こういった設定の中で会社の部下、不倫中の友人の旦那、隣人夫婦の夫といった様々な登場人物が、イザペル・ユペールの性的な魅力に取り込まれていく。ストーリーはレイプ犯人を見つけるというフックが一応あるが、主人公が能動的に調査する訳でもない為、とにかくセックスに取り憑かれた登場人物たちの狂気の日常を見ながら、2時間スクリーンを眺める事になる。これを楽しめるかどうかが、この作品の分かれ道となるだろう。とにかく変態キャラクター大集合の映画なのである。

 

この作品のイメージとして近いのは、デヴィッド・クローネンバーグの「クラッシュ」だ。決してサスペンス映画では無く、フタを開けてみると「変態アート映画」だった訳である。このあたりはあの「ショーガール」を撮ったポール・バーホーベン監督の面目躍如といったところだが、それ故に確実に観る人を選ぶ作品だろう。映画後半、犯人もアッサリ判明するが、その後のイザベル・ユペールの行動も含めて、もはや全く理解不能で、観客が感情移入する余地など微塵もない。全編を通していわゆる「面白い映画」では無いし、シナリオ的にもどこまで真面目にやってるか解らないほど穴だらけだが、イザベル・ユペール64歳の演技とアブノーマルな世界観を楽しめる方には良いのかもしれない。ただ僕には正直、イマイチな作品だったのは白状しておきたい。予告編の出来は、ホントに良かったのに残念である。

採点:3.5(10点満点)

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