映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「新感染 ファイナル・エクスプレス」を観た

「新感染 ファイナル・エクスプレス」を観た。

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監督:ヨン・サンホ
日本公開:2017年

 

第69回カンヌ国際映画祭で上映されたのを皮切りに世界の映画祭で熱狂を呼び、世界中から買い付けオファーが殺到したという、韓国産ゾンビパニック映画「新感染」をレイトショーで鑑賞した。夜遅い回だったのに、いかにも映画好きという客層で混んでいたし、会場のリアクションがとても豊かで、楽しい映画鑑賞だった。今回はネタバレ無しで。

 

感想

韓国映画のレベルの高さは、本当にすごいと思う。すでに世界中で作られたはずの「ゾンビ映画」という、手垢のついた題材なのに、なぜにここまで面白い映画に出来るのか。 今年亡くなったゾンビ映画の巨匠、ジョージ・A・ロメロ監督も、まさか韓国からこれほど本格的なゾンビ映画フォロワーが登場するとは、想像していなかったに違いない。

 

ベースは本当にオーソドックスな、ゾンビ映画のお約束を踏襲したパンデミックものだ。ゾンビに噛まれると感染する、感染するとゾンビになって人を襲う、ゾンビの知能は低い、実は極限状態の人間が一番怖いなどでお馴染みのアレである。今回のゾンビは「走るタイプ」なので、ダニー・ボイル監督「28日後」や、ザック・スナイダー監督「ドーン・オブ・ザ・デッド」の系譜だが、ガラスの向こう側に無数のゾンビが張り付いているビジュアルは、ロメロの78年度版「ゾンビ」のオマージュも感じる。

 

とにかく過剰なサービス精神で、矢継ぎ早に事態が展開する為、映画がまったく停滞する事がない。いわゆるダレる時間が無いのだ。また登場人物たちがキチンとキャラクターとして生きて(活きて)いる。各登場人物が自分のキャラに合わせて、その時々で的確な判断をするので、よくある「ストーリーの為だけの不自然な行動」が極めて少なく、観ていて納得度が高いし、それ故にハラハラする。また韓国映画の特徴かもしれないが、次に誰が死ぬのか?が全く読めないのも良い。今回の映画は、主人公たちが相当に過酷な状況下に置かれるので、最後まで生き残るキャラクターも少なく、最後の最後まで気が抜けない。

 

そして、ストーリーの緩急も良い。主人公は幼い娘と一緒にこの極限状態を生き抜く事になるのだが、パニックスリラーの裏にはしっかりと人間ドラマが描かれている。身重の妻を持つ夫婦や、老姉妹、学生カップル、会社の重役など様々な環境の人物が、自分たちの感情で行動し、時には自己犠牲を払って他人を助けたり、逆に人を陥れたりしながら行動していく。その様に感情を動かされるのだ。劇中、本当に自己中心的な悪人が登場するのだが、観ている間に心底そのキャラが嫌いになったし、まさかゾンビ映画で泣かされるとは思わなかった。それほど、僕はこの映画を楽しんだという事である。

 

そしてラストの伏線の回収とそのメッセージ、カタルシス。劇場からも思わず声が漏れていたが、最悪の事態を予感させてからのある展開、そしてエンドクレジット。切れ味バツグンで見事という他ない。編集のテンポ感と見せるべき順番が的確なのである。この作品の監督ヨン・サンホは、元々はアニメーション監督で、実写では初監督作品らしい。すごい映画作りのセンスだと思う。

 

パク・チャヌク監督「お嬢さん」、ナ・ホンジン監督「哭声/コクソン」、キム・ソンフン「トンネル/闇に鎖された男」、キム・ソンス監督「アシュラ」と、今年の新旧監督による韓国映画の充実ぶりは、偶然ではないだろう。ハリウッドの作品とは違う路線でありながらも、世界に向けてこれほど高いレベルの作品を提供し続けているのは、素直に素晴らしい事だと思う。

 

ゾンビ映画というジャンルムービーなので、観る人を選ぶのは十分承知だが、グロテスク表現もほとんど無い作品だし、とにかく「面白い映画」だ。「新感染 ファイナル・エクスプレス」、文句なしにオススメの作品である。

 

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