映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「三度目の殺人」を観た(感想&解説アリ)

三度目の殺人」を観た。

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監督:是枝裕和

出演:福山雅治役所広司広瀬すず
日本公開:2017年

 

「誰も知らない」そして父になる」「海街diary」など、国内外で非常に評価の高い、是枝裕和監督の最新作が公開になった。正直、今まで過去作はほぼ観てきていなかったのだが、今作を観て、そのあまりのクオリティの高さに驚いた。今まで是枝監督はホームドラマのイメージだったが、今作は法廷を舞台にしたサスペンス。まさに今の日本だからこそ、作られるべき傑作であった。今回はネタバレ無しで。

 

感想&解説

映画を最後まで観ても、人によってそれぞれ解釈に違いが出て、同じ結論には辿り着かないかもしれない。解釈の幅があり、多様な考え方が出来る作品だ。まず、ここが素晴らしい。映画を観終わって、しばらくこの映画の事が頭を離れない。各シーンを思い出しては、その台詞の意味合いを考える。この時間も含めて、この映画の価値だと思う。

 

冒頭、役所広司演じる「三隅」という男が河原にて殺人を犯し、ガソリンを撒いたのち火を付けるというシーンから映画は始まる。シーンは変わり、拘置所。先ほどの三隅が、弁護士の重盛(福山雅治)らに「間違いありません。私が殺しました。」と雇い主の社長を営利目的で殺した事を認める発言をするが、三隅は30年前にも北海道で殺人を犯した前科があり、今回の罪で死刑は決定的であった。弁護士である重盛は、なんとか無期懲役まで罪を軽く出来ないかと調査を始めるが、殺された社長の妻(斉藤由貴)にも秘密があり、三隅の証言も状況によってコロコロ変わる為、なかなか事件の全貌が掴めない。そんな時、社長の娘(広瀬すず)と三隅との意外な接点が見つかる。

 

劇中で描かれるのは、映画冒頭の河原での殺人と、30年前の北海道での殺人の二件だが、タイトルにある「三度目の殺人」の三度目は誰が誰を殺す話なのか?が作品の大きなポイントだ。ここに「日本の司法制度」という重い問題提議が絡みながら、そもそもすでに逮捕されている三隅が何故、証言をコロコロ変える必要があるのか?というのが、ストーリーの推進になる。ヒントはメインビジュアルにもある、頬に付いた血痕とそれを拭う仕草。それから、この映画の「殺人シーン」にミスリードは無いという前提で、映画冒頭と中盤の二ヶ所で描かれる河原での殺人シーンは「本当に起こった事」だとすれば、三隅の証言を含めて、ストーリーはかなりスッキリとするだろう。

 

また三隅が途中から「自分は河原には行っていない」と証言を変えるところで多くの観客は混乱するだろうが、これは三隅が「日本の司法の弱点」を知っていて、そう証言してもこの裁判の結論は変わらないと見越した上で、「彼女を守った」という様に僕は解釈した。あのまま彼女が三隅の「真の動機」を証言すれば、彼女自身が辛い過去について掘り返されるし、更に犯行自体のボロが出かねない。三隅は、30年前の裁判でも死刑を免れる為に、弁護士から虚偽の証言を強要されているのだ。裁判が終わった後、「三隅から」重盛に差し出す握手の強さが、それを裏付けているだろう。

 

この作品が描こうとしているテーマは多岐に亘る。先ほどの日本の司法制度の危うさ、父性や家族、前科のある人間が日本で生きていくこと。どれもが2時間の作品の中に過不足なく詰め込まれていて、観客の心を揺さぶる。福山雅治役所広司広瀬すずなど俳優陣の演技、是枝監督の映画的な演出も本当に良い。映画中盤の雪原シーン。三人が雪ではしゃぐ姿が、福山演じる重盛と実の娘との関係、役所広司演じる三隅と北海道にいる娘との関係を考えると、美しくもあり切ない幻想シーンである事が解る。

 

今年観た映画の中でも、かなりの傑作だと思う本作。是枝裕和監督の過去作も是非チェックしてみたくなった。「三度目の殺人」は文句ナシにオススメの一作だ。