映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「アイアン・ジャイアント」を観た

アイアン・ジャイアント」を観た。

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監督:ブラッド・バード
出演:ヴィン・ディーゼルジェニファー・アニストン、ハリー・コニック Jr.
日本公開:1999年

 

「レミーのおいしいレストラン」「Mr.インクレディブル」「ミッションインポッシブル:ゴーストプロトコル」のブラッド・バード監督が1999年に製作し、劇場公開したアニメ映画。アニー賞9部門に輝く不朽の名作として今なお評価の高い本作が「シグネチャー・エディション」として、リマスター化と2シーンを追加して生まれ変わった。2016年10月に劇場公開が予定されており楽しみにしていたが、なんと直前で上映中止。ブルーレイのみでの発売となったので、今回その「シグネチャー・エディション」を鑑賞した。ネタバレありで感想を書きたい。

 

あらすじ

舞台はアメリカ、メイン州の小さな港町。9歳の少年ホーガースは、森の中でとっても人なつっこい鋼鉄の巨人“アイアン・ジャイアント”を発見する。自分が何者かも知らないアイアン・ジャイアントは巨大な体を持て余した赤ん坊そのもの。たちまちホーガースはアイアン・ジャイアントと友達になり、ママに内緒で家の車庫にかくまうが、巨大ロボットを目撃したという噂が町に広まり、ついには政府のエージェントが派遣されてくる。ホーガースは芸術家で変わり者のディーンと協力して、アイアン・ジャイアントをエージェントから守ろうとうするが、彼はただのロボットではなく、恐ろしい破壊力を秘めた戦闘兵器だった。

 

感想

1999年公開当時、興行収益的にはかなり苦戦した「アイアン・ジャイアント」だったが、いまだにファンが多い、不朽の名作として知られている。ブラッド・バード監督がワーナー・ブラザーズのバックアップの元、満身創痍で作り上げた「魂のデビュー作」であると同時に、最初の就職先であるディズニーアニメーションをクビになった後の作品という事もあり「アンチディズニー」として、強烈なメッセージ性を込めた作品になっている。

 

「夢と希望の世界」では割り切れない、人を殺す武器として生まれたロボットが少年との触れ合いを通じて得たもの、そして初めて知る死という概念、なりたい自分になればいいというメッセージ。作品を通して、子供向けというより、人生経験を積んだ大人の方が共感できる映画になっていると思う。

 

正直、キャラクターの第一印象は魅力的とは言い難い。今のマーケティング主体の映画作りとは一線を画す作りの為、マーチャンダイジングなどを考えたキャラクター造形ではないからだ。ただし映画を観た後だと、主人公のホーガースや町の芸術家ディーンなどが本当に忘れがたい存在となる。

 

まず現代の日本におけるアニメーションを見慣れた目には、驚異的な程に豊かなそのキャラクターの表情。ルーニー・テューンズ直系とも言える、大げさな程に目を見開き手足をバタつかせて動くキャラクターを見ているだけで、「これぞアニメーションだ」という幸せな気持ちになるだろう。彼らが動く1コマ1コマから作り手の熱意と愛情が伝わってくるのだ。古き良きウェルメイドなアニメーションが堪能できるのだ。

 

そして鋼鉄の巨人「アイアン・ジャイアント」だが、地球に降り立った彼はまるで赤ちゃんのようで愛らしい。初めてホーガースと会話しながら、見よう見まねで同じポーズを取り、カタコトの言葉を覚えていくシーンはかわいいし、少ないパーツながら表情が感じられるロボットの造形は、しっかり感情移入させられる。この「無垢な存在」という設定が、後半の「兵器として目覚めるロボット」という演出と対になって効いてくるのである。

 

舞台は1957年の旧ソ連との緊張状態が続くアメリカ。政府のエージェントが子供を脅迫してまで居どころを探し、住人の命を危険に晒してまでヒステリックにロボットを破壊しようとする姿と、自分の本当の役割である「武器」としてではなく、「なりたい自分」としてアイアン・ジャイアントが最後に取る自己犠牲の行動の対比が、この作品のメッセージとなっていると思う。いわば「自分の生き方を決めるのは、自分自身である」というシンプルだが強いメッセージだ。これが普遍的に観客の胸を打つのである。

 

ブラッド・バード監督も今や、古巣のディズニーに凱旋し「トゥモローランド」などの実写から、次回作はピクサーの「Mr.インクレディブル2」が控える人気映画監督となった。だが、やはりデビュー作の本作はブラッド・バード監督のインディー魂が垣間見える特別な一作だと思う。「アイアン・ジャイアント」、改めて素晴らしいアニメ作品だった。