映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「ローガン・ラッキー」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

ローガン・ラッキー」を観た。

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監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:チャニング・テイタム、アダム・ドライバー、ダニエル・クレイグ
日本公開:2017年

 

スティーブン・ソダーバーグ監督「サイド・エフェクト」から4年ぶりの劇場公開作。一時期は劇場用作品からの引退宣言もしていたソダーバーグが、新人の手がけた本作の脚本を見て、自ら監督する事を決意したという意欲作だ。またいわゆる従来の大手配給会社からではなく、自ら立ち上げたインディペンデントな映画配給の仕組みにトライしたとの事で、注目が集まっている。ただアメリカでの興行は3,000万ドルと厳しかったとの事だが、本作を観る限り制作費はかなり抑えめだと思うし、過度なプロモーションはしないというソダーバーグの戦略だったとの事なので、収支で見ればきっちり利益が出る構造なのかもしれない。評論家からのウケも良いとの事で、ソダーバーグの次回作はいかに?という感じだが、ひとまず本作はどうだったか?今回はネタバレありで。

 

あらすじ

脚が不自由で仕事も家族も失ったジミー(チャニング・テイタム)は、人生を一変させようと犯罪計画を立てていた。それはカーレース「NASCAR」が開催されるサーキット場の金庫から、大金を強奪するというものだった。片腕を失った元軍人の弟クライド(アダム・ドライヴァー)、カーマニアの妹メリー(ライリー・キーオ)、爆破のプロで服役中のジョーダニエル・クレイグ)を仲間に迎えるジミー。ジョーを脱獄させて金庫を爆破し、再び彼を獄中に戻すという大胆不敵な計画は果たして成功するのだろうか?

 

感想&解説

ソダーバーグ監督自身が本作について「『オーシャンズ11』の従兄弟版だ」と表現している通り、いわゆる「チーム強奪モノ」としての基本的な骨格は近いと言える。だが演出はまるで違い、「オーシャンズ」がジョージ・クルーニー&ブラッド・ピットの流麗でクールな一流犯罪者集団の活劇映画だとすれば、本作は身体も不自由な上、家族も仕事も失った男とその仲間たちが、人生の再起をかけて企てる「ワンスアゲイン映画」である。よって、チャニング・テイタムとアダム・ドライバー演じるローガン兄弟のダメさ加減を筆頭に、垢抜けなく泥臭い雰囲気が、映画全編を覆っている。

 

これは冒頭に「Take Me Home,Country Roads」の誕生したエピソードを、チャニング・テイタムが娘に語るシーンから映画が始まる事からも顕著で、60〜70年代のカントリーやサザンロックといった、全体的にレイドバックした楽曲で映画が彩られており、編集のテンポもそれに合わせてゆっくりと進行していく。映画が全体的に「ユルい」のである。これは、まさに今のソダーバーグ監督自身を投影した様な作品で、2000年の「トラフィック」や「エリン・ブロコビッチ」で、オスカーダブルノミネートで飛ぶ鳥を落とす勢いだったソダーバーグや、その翌年にハリウッドの資本でビックバジェットのスター映画「オーシャンズ11」を撮っていたイケイケのソダーバーグとは違い、今やアメコミや続編ばかりのハリウッドの映画作りから脱却し、大ヒット作は無いが、テレビドラマ制作やインディペンデントに我が道を追求するソダーバーグの今の姿が重なる。

 

映画のストーリー全体としては、まずまず面白い。今までの強奪モノとの差別化として、ひとひねり加えてあるし、特に後半20分の展開は目が離せない。主演キャラクターの負け犬っぷりもここまでくると応援したくなるし、義手が吸い込まれる件などのドタバタもB級コメディ的で楽しい。だが、肝心の金庫から金を奪うロジックがあまりにご都合主義で、個人的には乗り切れなかったというのが正直なところだ。

 

まず問題は「刑務所から一度脱獄して、金を奪ってまた刑務所に戻る」という破天荒な内容に、どれだけ説得力を持たせるか?だが、これはあまりに無理があり過ぎる。「刑務所のトイレの壁に人が通れる道がありました」「刑務所内で暴動が起こっても、所長が警察を呼ばずに鎮圧しませんでした」「刑務所を訪れた消防車に、たまたま誰にも見られずに乗り込めました」「刑務所内の囚人たちが誰一人仲違いせず、最後まで計画を遂行してくれました」、これらは全てがこの計画の根幹を支える事柄で、何か一つでも崩れたら計画自体が達成出来ない。それなのに、あまりに主人公たちに都合よく物事が進み、破綻しないのだ。

 

中盤、何故かポツンとある小屋を爆破すると、レース会場にあるPOSシステムがダウンして全てのクレジットカードが使えなくなる描写があるが、そんな大事なシステムをあんな誰もがアクセス出来る場所に置くはずは無いし、大量の現金が入っている金庫の中にゴキブリを忍ばせる為に、担当者にケーキを送るのだが、普通金庫の中でケーキ食べるか?とか、一時的に車を当て逃げして担当者を金庫の外に出すのはいいとして、その時にケーキは誰かにあげちゃったり、一緒に外に持ち出されたらどうするの?とか、彼らがコントロール出来ない偶然性にあまりに頼り切った計画で、突っ込みどころだらけなのである。良かったところは、盗んだ金をある程度返して、保険で金を盗まれた主催者側に損をさせないようにし、捜査を打ち切らせるように仕向けたり、携帯電話の通話が出来なくなった事で、自分への盗聴が無くなった=追求を逃れたという展開はフレッシュで良かったが。

 

「ローガン家の呪い」は、ヒラリー・スワンク演じるFBI捜査官が、ローガン兄弟が集うバーに現れるラストショットから、まだまだ続く事が暗示されて映画は終わる。キャラクターは魅力的なので、オーシャンズシリーズの様に続編も期待したいが、出来ればもう少し脚本のブラッシュアップはお願いしたいところだ。「ミッション:インポッシブル」の様にアクションに振り切れば別だが、こういったセリフと演出で魅せるジャンルは、ロジックの積み重ねでカタルシスを得る作りなので、ここは不満が残る。

 

ローガン・ラッキー」は、ベテラン監督と新人脚本家が組んで、エンターテイメントに徹したB級娯楽作品だと思って、細かい所を気にしなければ十分に楽しめる。だが、「チーム強奪モノ」はロジックこそが魅力だと思っている人にはやはり物足りない作品だろう。あとは、せっかくスティーブン・ソダーバーグ監督が復活の狼煙を上げた事だし、デビュー作の「セックスと嘘とビデオテープ」の様な尖った作品も期待したいところだ。