映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「キングスマン:ゴールデン・サークル」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

キングスマン:ゴールデン・サークル」を観た。

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監督:マシュー・ヴォーン
出演:コリン・ファースジュリアン・ムーアタロン・エガートン
日本公開:2018年

 

2018年最初の映画館での鑑賞作品は「キングスマン:ゴールデン・サークル」である。前作「キングスマン」は2015年に公開されるや世界中で大ヒットを博し「007」や「ミッション・インポッシブル」とは違う、新たなスパイムービーの一派として、批評家と観客の両方に受け入れられた作品だった様に思う。監督は「キック・アス」のマシュー・ヴォーン。前作の個人的な評価としては、かなり不謹慎な上に、人命軽視のブラックユーモアが強い作風の為、正直あまりノレなかったのだが、さて今作はどうだったか?今回もネタバレを含むので注意を。

 

あらすじ

イギリスのスパイ機関「キングスマン」の拠点が、麻薬組織のボスであるポピー(ジュリアン・ムーア)率いる「ゴールデン・サークル」という組織の攻撃により壊滅。残されたのは、前作で一流のエージェントに成長した主人公エグジー(タロン・エガートン)と、教官兼メカ担当のマーリン(マーク・ストロング)のみとなってしまう。敵を追い、同盟を結ぶスパイ機関「ステイツマン」の協力を得るためアメリカに向かう二人。しかし、表ではバーボン・ウイスキーの蒸留所と最高級のバーボンを提供する店を経営しているステイツマンは、英国文化に強い影響を受けたキングスマンと対照的に、極端にアメリカンなチームだった。更に、なんとステイツマンには死んだはずのハリー(コリン・ファース)が記憶を失って保護されていた。ハリーの記憶は戻るのか?そして、彼らは協力しあいながらゴールデン・サークルが企む麻薬にまつわる陰謀を阻止することができるのか?

 

感想&解説

一作目から引き続き、おバカアクション映画だと言っていいだろう。しかも、劇中のアメリカ大統領の下す決断と結果が示す様に、相変わらずかなり悪趣味な方向に振り切れている。ちなみに今作のアメリカ大統領が取る行動は、人道に反している上に思慮に欠ける。なんと、本作の悪役ジュリアン・ムーア演じる麻薬王ポピーがドラッグに毒を入れるのだが、そのせいで一斉に死んで行く国民を全て檻に入れて、見殺しにするという判断を下すのである。アメリカ内のドラッグ中毒者を一掃出来て良いという口実だが、これは痛烈な現アメリカ大統領への皮肉と取っていいだろう。

 

更に言えば、本作のドラッグに対しての姿勢が、緩めなのも気になる。政府関係者から、ステイツマンのメンバーから主人公の恋人、友達に至るまで、いわゆる味方サイドのあらゆるキャラが、薬物摂取しているのだ。それらを救うというのがストーリーの骨格なのだが、麻薬中毒者に恋人を殺された、ステイツマンの裏切りキャラ「ウィスキー」がラストに言うセリフは、ある意味で同情の余地があるが、あっさり「紳士達」によってミンチにされる。イギリス人監督であるマシュー・ヴォーンが、かなりアイロニカルな表現をするのは前作から引き続きではあるが、このシリーズでのセリフ「マナーによって人間は作られる」とはある意味、真逆の作風と言えるだろう。

 

特にLGBTを公言しているエルトン・ジョンの本作での扱いには、本当にびっくりした。登場シーンには確かに多くの見せ場があるが、全体的には捕虜としての非常に軽んじられたキャラクターなのである。しかも同性愛者としてのキャラクター、エルトン・ジョン本人役としてなので驚くばかりだ。ハル・ベリー演じる黒人女性が、最後に「ステイツマン」のエージェントに登用される流れや、友人キャラの「もう麻薬は止める」などのセリフを入れるなどの倫理的な目配せはあるが、あまりにも作品全体から立ち上がってくる、この「悪趣味感」をどう感じるかで、本作の評価は分かれるだろう。ただし、それでも前作のクラシックの名曲「威風堂々」を流しながらの「頭部爆破シーン」の不謹慎さに比べれば、個人的にはかなりマイルドにはなっているとは感じた。

 

また、前作で死んだはずのコリン・ファース演じるハリーが、実は死んでいませんでしたという流れに、今作でどの様な説明を入れるのか楽しみにしていたが、これがもはや呆れるを通り越して、笑うしかない設定を入れてきた。頭に銃弾を撃ち込まれても、特殊なキットで処置すれば生き返れるというのだ。この「蘇生方法」がアリになれば、キングスマンシリーズで誰かが死んだように見えても、「実は生きていました」が全て通用してしまう。そういう意味で本シリーズはもはやスパイ映画ではなく、科学考証のないハチャメチャB級SF映画に近づいたのではないかと思う。

 

これらのノリに「娯楽映画なんだから」と、身を任せられれば、この作品は一級のアクション映画だ。冒頭のプリンスの名曲「Let's Go Crazy」をバックに繰り広げられる、荒唐無稽なカーアクションから、ラストのコリン・ファースタロン・エガートンコンビの銃撃戦まで、マシュー・ヴォーン監督得意のぐるぐる対象物を回り込むカメラワークを含めて、娯楽作品としてしっかり成立させている。ジュリアン・ムーアの怪演や、チャニング・テイタムの無駄遣い&シュールダンスも含めて、現代版「オースティン・パワーズ」と考えれば、それも楽しめるだろう。

 

おそらく第三弾も作られるであろう本シリーズは、本作「ゴールデンサークル」ではっきりと特徴が確立されたと思う。このポップな不謹慎感と、最高のアクションシーンで構成された、マシュー・ヴォーン監督の世界観にノレる方限定で本作はオススメだ。最後に映画が終わった後は、しばらくハンバーガーが食べたくなくなると思うので、その予定がある方は、映画を観る前に食べておく事を強く推奨しておきたい。