映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「リグレッション」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

リグレッション」を観た。

f:id:teraniht:20180916180901j:image

監督:アレハンドロ・アメナーバル

出演:イーサン・ホークエマ・ワトソンデヴィッド・シューリス

日本公開:2018年


アザーズ」「海を飛ぶ夢」のアレハンドロ・アメナーバル監督が手がけた、7年ぶりの長編。1997年の監督作「オープン・ユア・アイズ」の出来に惚れ込んだトム・クルーズが、キャメロン・クロウ監督でハリウッド・リメイクした2001年「バニラ・スカイ」の公開時に、アメナーバル監督の名前を初めて聞いたと記憶しているが、本格的にその名を轟かせたのは、2002年の監督作「アザーズ」であろう。ニコール・キッドマン主演の上品かつ静粛なホラー作品で画面のダークな色調、フレーミング、役者たちの演技などのレベルが軒並み高く、今だに好きな作品である。そのアレハンドロ・アメナーバルが久しぶりに監督したR15+のスリラー作品という事で、都内でも1館だけという公開規模だったが、早速鑑賞してきた。今回もネタバレありで。

 

あらすじ

1990年、アメリカ・ミネソタ。刑事のブルース・ケナーは、父親の虐待を告発した少女アンジェラの事件を取り調べることになるが、訴えられた父親もどこか記憶が曖昧だった。著名な心理学者に協力を仰いで、催眠療法により真相究明を進めるブルース達は、アンジェラたちの記憶をたどっていくうちに事件が単なる家庭内暴力では無く、悪魔崇拝者による儀式が関連している事に気づき、町の各所で起こっているほかの事件との関連を調べ始める。やがてブルースは、この事件に秘められた恐ろしい闇に迫っていく。

 

感想&解説

イーサン・ホークエマ・ワトソンが主演、アレハンドロ・アメナーバルが監督という事で、そもそもの期待値が高い状態だったのは否めないが、観終わった後のガッカリ感は半端無い。劇場全体もそんな感じで、割と年配の観客たちがトボトボと席を立って退場していく姿が印象的だった。映画を観ながら、「こういうストーリーのオチだと嫌だな」と思う時があるが、本作は正にそれが的中した悪い例だろう。


まず良かった点から。「アザーズ」もそうだったが、画面のクオリティは高いと思う。悪夢的なビジョンを観せる手腕は確かで、不穏なBGMと相まって、非常にホラー的で不気味な演出が良く出来ている。主人公のイーサン・ホーク演じるブルースが、悪魔崇拝者たちによって段々と追い詰められ、精神的に異常を来してくる姿は説得力があったし、良く出来ていた。オープニングの演出も洒落ていたし、実際終盤まではかなり楽しく鑑賞できたのは、この画面クオリティと演出によるものだと思う。


しかしながら、こういうスリラー作品はどのように作品を着地させるか?というオチが非常に重要になる。残念ながら、それが本作に関しては決定的にダメで全く擁護できない。ストーリーはエマ・ワトソン演じるアンジェラが、父親から性的虐待を受けていたと告白するところから始まる。だが父親はその記憶が曖昧で、心理学者の催眠療法によりその記憶を呼び覚ますと、刑事ブルースの同僚ジョージが悪魔崇拝者の一味で、犯罪に関与している事が発覚する。そこからアンジェラの兄ロイも団体の被害者であり、父親や祖母、ジョージが悪魔崇拝者の団体として、集団で強制淫行や殺人を犯していると考えたブルースは、常に身の危険を感じ始めて精神を苛まれていく、という話の流れなのだが、この「悪魔崇拝」と「催眠療法」という、映画として非常に取り扱い注意のワードが、やはり今回もダメな方向にストーリーを進行させている。


乱暴にオチを書いてしまうと、自殺した母親の復讐の為、全てエマ・ワトソン演じるアンジェラが嘘をついており、父親は娘に責任を感じて逮捕される事を望み、悪魔崇拝のビジョンは世の中に広がる恐怖と催眠療法が見せた集団ヒステリーで、いわゆる「思い込み」だったと言うのだ。思い込みって、さすがにこのオチの雑さにはビックリしてしまった。しかも、エマ・ワトソンは最初から薄幸の美少女過ぎていかにも怪し過ぎるし、このキャスティングでエマ・ワトソンが悪役というのは、あまりに捻りが無さ過ぎる。


悪魔崇拝」や「カルト」といった、キリスト教を強く信仰する文化独特の感覚で、アメリカではこのオチに説得力があるのか?と調べてみても、やはり向こうでも低評価の大コケだったようだ。しかも2015年と3年前に公開されていて、あまりのクオリティの低さに配給会社が決まらず、日本公開も難航していたのかもしれないと勘繰ってしまう。ここまでの作品だとイーサン・ホークエマ・ワトソンも、何故出演したのかが不思議なくらいである。アレハンドロ・アメナーバル監督の久しぶりのスリラー作品として期待が高かったが、一旦「思い込み」でこの作品の事は忘れたいと思う。巨匠の才能が枯渇していない事を、次回作では是非証明して欲しい。