映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「デス・ウィッシュ」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

デス・ウィッシュ」を観た。

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監督:イーライ・ロス

出演:ブルース・ウィリスエリザベス・シューヴィンセント・ドノフリオ

日本公開:2018年


1974年にチャールズ・ブロンソン主演により映画化した「狼よさらば」(原題:Death Wish)を、イーライ・ロス監督がリメイクするという事で楽しみにしていた一作。しかも出演は近作があまりパッとしなかったブルース・ウィリスという事で、どんな仕上がりかと興味もあった。イーライ・ロスと言えば2006年「ホステル」や2015年「グリーン・インフェルノ」といった、ゴア描写満載のホラー映画の名手というイメージだが、近作だと「ノック・ノック」のような迷作も多く、若干の不安もあったが鑑賞。結果、手放しで褒められはしないが、手堅いB級アクションの佳作として仕上がっていた。今回もネタバレありで。

 

あらすじ

警察すら手に負えない無法地帯となったシカゴで救急患者を診る外科医ポール・カージー。ある日、ポールの家族が何者かに襲われ、妻は死に娘はこん睡状態になってしまう。警察の捜査は一向に進まず、怒りが頂点に達し復讐の鬼となったポールは自ら銃を取り、犯人抹殺のために街へと繰り出す。

 

感想&解説

ブルース・ウィリスを映画館の大画面で観るのはいつぶりだろう。しかも主演作という意味では「REDリターンズ」以来の鑑賞だから、5年くらいのブランクを感じる。よって、彼がスクリーンに現れた時の最初の感想は「ブルース、老けたなぁ」であったが、大学生の娘がいるお父さん役としては、その無骨な佇まい含めてしっかりとハマっていたと思う。今作のメインターゲットは明確で、この中年~老年を迎えたブルース・ウィリスに感情移入できる年齢、いわゆる「おじさん」達だ。それは、ガンショップの店員が必然性のないセクシー美女である事からも明白だろう。


今作、ブルース・ウィリス演じる主人公ポール・カージーは外科医だ。犯罪都市シカゴで、毎日警官や善良な市民が傷付いたり死んでいくのを目の当たりにする一方で、医者として犯罪者の命も救わなければいけないという不条理感も感じている。これは形は違えども毎日仕事をしていれば感じる、僕たち観客の不条理感とも重なる一方で、あの幸せな家庭は「理想像」として、おじさん達の目には非常に羨ましく映る。エリザベス・シュー演じる美人妻は、夫を心から愛していて彼の仕事にも理解がある。家族で外食する予定だった、その出かけるタイミングで緊急の仕事に行くというブルースに対して、文句ひとつ言わないばかりか彼の為にケーキを作って待っているという献身ぶり。しかも娘もパパを溺愛していて、ところ構わずハグしまくりだ。「確かに仕事は大変だけど、こんな家庭があれば頑張れるよなぁ」という羨望込みの理想をしっかり描いておいて、直後にその家庭を理不尽にもぶっ壊わすので、劇場にいる我々もスクリーンのブルース・ウィリスと同じく、完全に戦闘モードに突入できる訳である。


74年のチャールズ・ブロンソン版は建築士という設定だったが、この外科医という変更はオモテの顔である「命を救う立場」とウラの顔である「命を奪う立場」という対比が生まれて面白いし、イーライ・ロスお得意のゴアシーンも追加できて一石二鳥という感じだろう。特にR15+作品だけあって動けない犯人の足をメスで切って、神経に車整備用の液体をかける医者ならではの拷問シーンは、いかにも「ホステル」を撮ったイーライの面目躍如といった名シーンだ。しかも自ら行う超痛そうな治療シーンで、肩の傷口をブルース自らホッチキスで止める場面は、絶対にあんなに長い尺は必要ないと思うが、彼のハゲ頭に浮かんだ汗の描写も細かく、これも監督のこだわりなのだろうと微笑ましい。


全体的に、チャールズ・ブロンソン版に比べて軽くてポップという印象の本作。SNS時代を意識していて、サイトに上がった殺人動画で世間が騒いだり、銃の扱い方をYouTubeで検索したりといった「今っぽさ」が、前作にあったハードボイルド感を目減りさせているのは否めない。また映画内で起こる、印象的なシーンがほとんど予告編で観れてしまうというのも不満だったし、ラストの対決もあまりにアッサリしていてカタルシスが薄い。やはり「イコライザー2」や「ジョン・ウィック2」のような、アクション映画最前線の作品と比べると格段にレベルが落ちるのは事実だろう。また「自衛」という名目で街中で銃をぶっ放し、復讐に燃える主人公という映画そのもののテーマは、リメイクとはいえあまりにも70年代的で、あれだけ殺しておいて主人公が逮捕されないというオチも含めて「レトロ感」というフィルターをかけないと、余りにもリアリティが無さすぎて白けてしまうかもしれない。


結果、ターゲットが非常にセグメントされた作品で「B級リベンジアクション」というジャンルムービーを偏愛する、僕を含むおじさん達には懐かしい気持ちでブルース・ウィリスを応援できる娯楽作品になっていると思うが、ノレない人には全くノレないというリスクを孕んだ作品だと思う。このあたりのさじ加減が極めてイーライ・ロス作品ぽいとも言えるだろう。この作品が気に入った方は、悪趣味コメディホラー「グリーン・インフェルノ」も是非オススメだ。

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