映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

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「クリード2 炎の宿敵」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

クリード2  炎の宿敵」を観た。

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監督:スティーブン・ケイプル・Jr.

出演:マイケル・B・ジョーダンシルベスター・スタローンドルフ・ラングレンテッサ・トンプソン

日本公開:2019年


前作「クリード チャンプを継ぐ男」から、約3年ぶりの続編。監督はライアン・クーグラーから、新人のスティーヴン・ケイプル・Jr.にバトンタッチされている。ライアン・クーグラーといえば昨年、MCUの「ブラック・パンサー」を大成功に導き、今やヒットメーカーとして知られているが、「チャンプを継ぐ男」以前はデビュー作「フルートベール駅で」しか実績がないほぼ新人監督だった。今回のスティーヴン・ケイプル・Jr.の起用は、明らかに前作からの流れを汲んだ、アメリカンサクセスストーリーだろう。これがすでに「ロッキー的」だ。主演は前作同様にマイケル・B・ジョーダン。彼も「クリード」の後、「ブラック・パンサー」のキルモンガーというヴィランを演じ、今や大スターである。今回もネタバレ全開で。

 

あらすじ

ロッキーの指導の下、世界チャンピオンに上り詰めたアドニスに、かつて父アポロをリングで殺したイワン・ドラゴの息子ヴィクターとの対戦話が舞い込む。父に復讐を誓ったアドニスは、ロッキーの反対を押し切り因縁の一戦に臨むことにする。しかし試合はヴィクターの反則行為により勝利したものの、試合としては完敗を喫したアドニス。さらに婚約者のビアンカの出産も控え、父親になることへの不安も抱えていた。だがロッキーのアドバイスにより、父親となったアドニスは「ボクシングが自分そのものだ」と気づき、ついにヴィクターとの再戦を決意する。

 

感想&解説

邦題である「炎の宿敵」というタイトルからも示唆されるように、本作は「ロッキー4/炎の友情」からの流れを強く踏まえた作品だし、前作「チャンプを継ぐ男」も観ていないとキャラクター設定がチンプンカンプンだと思うので、過去のシリーズ作品はある程度観ていることが本作を楽しめる最低条件となっている。この事から、正式な邦題に「2」を外している事が、日本の配給会社は本当に不親切だなと感じる。ちなみに原題はそのまま「CREED 2」である。


さて内容であるが、「ロッキー4」でイワン・ドラゴというロシア(旧ソ連)のボクサーに、友であったアポロを殺され、そのリベンジとしてドラゴに勝利したロッキーだったが、今回そのドラゴの息子ヴィクターがボクサーとして成長しており、今度はロッキーの弟子であり、アポロの息子であるアドニスクリードに挑戦してくるのである。それは敗れたイワン・ドラゴが祖国から受けた雪辱や失われた尊厳に対する、ドラゴ親子からのリベンジマッチだ。そこに父親アポロをリングで殺されたアドニスのドラゴに対する復讐が絡み合うという構成となる。


正直、本作は上記のプロットから想像できる以上のストーリー展開はないと言って良い。ロッキーシリーズの予定調和と、スポーツ映画のクリシェをなぞった展開に、正直途中まで退屈したのは否めない。ロッキーがセコンドに立たない段階で、初戦はアドニスがやられる展開は見え見えだし、その後でまたロッキーと厳しいトレーニングを積み、最後に勝利するパターンもシリーズで何回観たか分からない。アドニスに子供が出来て父親となり、背負うものができた彼が「自らの過去」を塗り替える為にリングに向かうという流れはもちろん感情移入出来るのだが、あまりに先の読めるストーリーに最終戦までは、大きな感動も無くスクリーンを眺めていた。


だが本作最大の感動ポイントは、最終ラウンドにあった。アドニスとヴィクターが満身創痍でパンチを繰り出しているが、アドニス優勢の状況。ヴィクターはフラフラになった状態だがまだ闘おうとしているその瞬間、なんとセコンドのドラゴがタオルを投げるのである。あれだけ勝利に執着し、息子を鍛えあげ、自分たちを見放した世間や妻に復讐を誓っていたドラゴがである。そして、その後息子を抱きしめる。ここで、僕は涙が溢れ出た。この物語は、アポロの息子であるアドニスのものだけでは無く、ドラゴ親子のストーリーでもあったのである。更に本シリーズとして初めてロッキーはリングに上がらず、アドニスに世代交代を告げる。そして、最後にロッキーは疎遠になっていた息子ロバートと再び向き合う。アドニスは産まれた娘と妻と共にアポロの墓の前に立ち、ドラゴ親子は2人寄り添いながらランニングをする。試合が終わっても彼らの人生は続くのである。


この物語は「自らの人生をどう選び、生きるのか?」を描いていると思う。前作「チャンプを継ぐ男」で、「自分の存在は間違いなんかじゃない」と自分を肯定したアドニス。そして、本作ではロッキーが、ドラゴ親子が、アドニスがそれぞれ自らの尊厳を賭けて人生の選択を行う。その必死で生き様を選ぶ様が観る者に感動を呼ぶのだと思う。本作でも感じた、あのロッキーのテーマが流れる瞬間の血が沸き立つ感覚は名残惜しいが、ロッキーシリーズという偉大な遺産は本作でもう幕を閉じて良いのでは?と個人的には感じた。それほど、本作のエンディングは見事だったと思う。