映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

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「スノー・ロワイヤル」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

「スノー・ロワイヤル」を観た。

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監督:ハンス・ペテル・モランド

出演:リーアム・ニーソン、トム・ベイトマンエミー・ロッサム、トム・ジャクソン

日本公開:2019年


リーアム・ニーソン主演最新作。ノルウェー映画「ファイティング・ダディ怒りの除雪車」を、ハリウッド作としてハンス・ペテル・モランド監督自らがリメイクした作品。共演はケネス・ブラナー監督の「オリエント急行殺人事件」のトム・ベイトマンなど。一言で言えば「あえて外した作品」だ。今回もネタバレありで。

 

あらすじ

雪の町キーホーで模範市民賞を受賞するほどの真面目な除雪作業員ネルズ・コックスマン。ある日、一人息子が麻薬の過剰摂取に偽装されて地元の麻薬王バイキングの組織に殺されてしまう。裏で組織が糸を引いていることに気付いたネルズは、ある時は素手で、ある時は銃で、ある時は除雪車で、一人また一人と敵を殺していく。しかし、敵対するネイティブアメリカン麻薬組織の仕業と勘違いしたバイキングはネイティブ組織を襲撃。相手もその報復に出る。静かな田舎町で起きた久々の事件に、地元警察はテンション上がりっぱなし。ネルズの戦いは、全く思いもよらない方向へと進んでいくのだった。

 

感想&解説

リーアム・ニーソンといえば、ブライアン・ミルズ監督「96時間」の戦うお父さんや、2014年「フライト・ゲーム」、近作だと2018年「トレイン・ミッション」などの、巻き込まれながらも戦う男というイメージが強く、なぜか圧倒的に強い「無双感」が魅力の俳優だと思う。本作「スノー・ロワイヤル」の主人公ネルズ・コックスマンも基本的には同じ路線のお父さんによる復讐ものだと映画前半では思わせられるが、中盤からはあれよあれよと違う方向にストーリーが進んでいく。これはリーアム・ニーソンという俳優のパブリックイメージを完全に意識した上の配役で、この「外し感」がこの作品の魅力のひとつになっている事は間違いない。


映画の前半で、一人息子を麻薬組織に殺されたリーアム・ニーソンは、その犯人を捜そうと組織の関係者を一人一人血祭にあげながらボスの「バイキング」という男に近づいていく。このあたりの描写は、結構リアルな暴力描写も含めて往年のリーアム映画を観ている感覚で、「待ってました!」とテンションが上がる。ただ、今回の主人公はただの除雪作業員という設定の割にはやたら強いなぁと思っていると、この麻薬組織のボス「バイキング」が、敵対するネイティブアメリカンの麻薬組織の仕業だと思い込み、勝手に抗争が始まっていく。そしてリーアム・ニーソンがストーリーの中心から外れていくあたりから、徐々に違和感が出てくる。


また各キャラクターの設定もあまりに独特で、トム・ベイトマン演じる「バイキング」という麻薬王は、健康オタクのドSキャラで小さな息子に小説「蠅の王」を薦めるような最低男だし、事件が起こる田舎の警察官はなんにも事件の解決には貢献しないが、殺人事件にやたらテンションが上がりまくっている変人だし、麻薬組織の部下もモーテルの清掃員を専門に狙うナンパ師で大して役には立たないし、兄の「ウイングマン」はリーアム・ニーソンと間違えて殺されるし、その妻はいつも怒っているアジア人だし、全員キャラは立っているが感情移入できる人物は皆無である。強いて言うなら、バイキングの息子は、超天才の小学生でいじめられっ子だが、めちゃくちゃいい子という好感が持てるキャラクターだが、やはり漫画のような設定なのは否めない。


また演出面でも、リーアム・ニーソンが息子の死体と面会するシリアスなシーンでも、死体が安置されている台の高さを上げるシーンが異常に長かったり、リーアムが死体を滝に捨てるシーンが同じカットで事務的に何回も繰り返されたり、敵味方関係なく人が死ぬ度にテロップで名前が出るのだが、後半はわざとそれが雑になったり、とにかく登場キャラクターたちは大真面目なのだが、演出としては完全に笑わせにかかっているというバランスなのだ。リーアム・ニーソンの妻役で名女優ローラ・ダーンが出演しているのだが、ほぼなんの活躍もせずに途中で家出してしまうという展開もその一環だろう。


コーエン兄弟の96年作「ファーゴ」と比較されているようだが、あの作品の洒落たオフビート感よりも、本作の方がもっとシンプルにバカバカしい作品だと思う。オチのシュールさも含めて、このあえての「外し感」が楽しめるか否かで大きく評価が分かれる作品だろう。しかもアクションシーンは数える程しかなく、アクション映画を期待しても見事に裏切られる。年間で何十本も映画を観ていて、普通の作品を観飽きたような玄人は楽しめるかもしれないが、映画としての純粋な楽しさがあるか?と言われるとちょっと首を捻りたくなるような尖った作品であった。正直、個人的にはそこまでノレなかったと素直に告白しておきたい。