映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

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「IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。」を観た。

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監督:アンディ・ムスキエティ

出演:ジェームズ・マカヴォイジェシカ・チャステインビル・ヘイダー

日本公開:2019年

 

スティーブン・キングのホラー小説「IT」を映画化した2017年の前作、「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」の続編にして完結編が公開された。前作は北米での興行収入が3億2,748万ドルと、事実上のホラー映画No.1を記録する大ヒット作品となり、そのクオリティの高さから続編が待ち望まれていた。しかも、今作の主人公ビル役はジェームズ・マカボイ、ルーザーズ・クラブ紅一点のベバリー役はジェシカ・チェステインと豪華キャストでの続編である。また、監督は前作から引き続きアンディ・ムスキエティが務めた。上映時間が169分という、前作135分と比べてもかなりの長尺作品となったが、さて実際の映画の内容はどうだったか?今回もネタバレありで。

 

あらすじ

小さな田舎町デリーで再び連続児童失踪事件が起こり、「COME HOME COME HOME(帰っておいで……)」という、「それ」からの不穏なメッセージが届く。幼少時代に「それ」の恐怖から生き延びたルーザーズ・クラブの仲間たちは、27年前に誓った約束を果たすため、もう一度町に戻ることを決意する。

 

感想&解説

前作「IT/イット“それ”が見えたら、終わり。」は、少年少女たちの「通過儀礼/イニシエーション」をテーマにした作品だったと思う。子供たちが大人になる過程で抱く、社会や家族への不安、そして成長する自分自身の身体への恐怖などをペニーワイズというキャラクターに投影し、それをホラー映画というフォーマットに載せて、恐怖演出を取り入れながら映像化した作品だった。よってその恐怖体験を、友情と共に乗り越える少年たちの成長が爽やかな後味を残し、いわゆる「ジュブナイルもの」としても非常に優れた映画となっていたと思う。よく前作を評する時に「スタンド・バイ・ミー」のタイトルが出てくるが、それはそういう理由なのだろう。


本作「THE END」は前作の27年後が舞台となり、成人となった「ルーザーズ・クラブ」と再度蘇ったペニーワイズとの闘いが描かれるのだが、結論から言えば本作は、前作の良かった部分がゴッソリと抜け落ちている気がした。前作にもあった、メンバー一人ずつが順番にペニーワイズに襲われるという二番煎じの演出がダラダラと続き、最後は全員でピエロに悪口を言って倒すという脱力もののオチで終わる、凡作に成り下がってしまっていたと思う。しかも、前作にあった「恐怖演出」も薄いので、ホラー映画としても失敗している。


まず、大人として成長したルーザーズ・クラブの面々が、文字通り「成長した」が故に、子供時代とは違いどうやって再会したペニーワイズと対峙するのか?が、前作との差別化ポイントになると思うのだが、残念ながら彼らに成長の跡は感じられない。一人の時にペニーワイズと出会ったメンバーは驚き、尻込みしながら逃げ惑うのみだ。しかも、ペニーワイズに襲われるシーンに、キャラクターによっては子供時代の映像も挟みこまれる為、演出として何が表現したいのか分からない。この長々と描かれるシーンの必要性が感じられない上に、上手く機能していない為、作品全体として中だるみ感が強く、退屈な展開になってしまっている。


端的に言ってしまえば、本作「END」におけるペニーワイズは、ルーザーズ・クラブにとって「乗り越えるべき試練」ではなく、「ただのモンスター」になってしまっているのだ。それは、前作ですでに描いたトラウマを単純にもう一度なぞっているに過ぎないため、演出ではなく「見た目」でインパクトを出すしかない為である。その分、モンスターものとしては、派手だし馬鹿馬鹿しさはパワーアップしているが。特にジェシカ・チャスティンが対峙する、「漫☆画太郎」的な婆さんには思わず笑ってしまった。このシーンが僕としては、本作におけるピークだったように思う。


相変わらず、子供たちが酷い目に合うという描写や、セットなどの美術は頑張っているが、いかんせん大人になった各キャラクターの魅力も薄く、本当にラストの尻すぼみ感も半端ない。大人に成長した彼らが、弟の死や父親からの虐待を乗り越え、彼らにとってピエロとはただの道化師という事に気づき、もう恐怖に怯えていない事を誇示するというラストシーンの意図なのだろうが、それにしても寄って集って罵詈雑言を浴びせるだけという、非映画的な決着はなんとかならなかったのだろうか。スティーブン・キングカメオ出演により、「作家公認」という刻印はハッキリ見えるが、まさか「IT」を観ながら退屈で終わる時間が気になるとは思わなかった。とにかく、この内容で169分は長過ぎである。前作が傑作だった為に本当に残念な出来だった。