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映画「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey」ネタバレ感想&解説 マーゴット・ロビーの魅力全開!

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey」を観た。

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デヴィッド・エアー 監督の2016年「スーサイド・スクワッド」に初登場して、作中で突出した魅力を発揮していたマーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインのスピンオフ作品。「スーサイド・スクワッド」はお世辞にも優れた作品とは言いがたい出来だったが、唯一ハーレイ・クインだけは、そのルックスのキャッチーさとマーゴット・ロビーの演技も含めて、人気を博したキャラクターであった。早速、スピンオフ作品の制作が決定したとのニュースを聞いて、前から楽しみにしていた本作。中国生まれの女性監督であるキャシー・ヤンがメガホンを取った事も、この作品にとっては大きな意味があるだろう。このバジェットの作品を任されるのは彼女にとって大抜擢だと言えると思うが、さてどんな作品に仕上がっていたか。今回もネタバレありで。


監督:キャシー・ヤン

出演:マーゴット・ロビーユアン・マクレガーメアリー・エリザベス・ウィンステッド

日本公開:2020年

 

あらすじ

悪のカリスマであるジョーカーと別れ、ハーレイ・クインは失意に打ちひしがれていたが、やがて過去と決別する為に、ジョーカーとの因縁がある化学工場の爆発事件を起こし、自分の人生を歩き始める。だがモラルのない天真爛漫な暴れっぷりで街中の悪党たちの恨みを買う彼女は、謎のダイヤを盗んだ少女カサンドラをめぐって、残忍でサイコなブラックマスクと対立する。その容赦のない戦いに向け、ハーレイはクセ者だらけの新たな最凶チームを結成し闘いに挑む。

 

感想&解説

本作のプロデューサーでもあるマーゴット・ロビーは今やハリウッドで、八面六臂の大活躍だ。近作ではシャーリーズ・セロンニコール・キッドマンと共に「スキャンダル」という社会派ドラマに出演していたかと思えば、今度はDCコミックス映画の主演である。しかもハーレイ・クインというポップアイコンを喜々として演じていて、ヴィランのはずなのに愛嬌も感じさせるというキャラクターのバランスを成り立たせているのは、マーゴット・ロビーの役者としての幅があってこそだろう。


しかも監督にキャシー・ヤンという女性監督を抜擢し、ジョーカーと別れたという設定にする事で、序盤こそはジョーカーへの未練でメソメソしていたハーレイだが、失恋を吹っ切った後は「男に依存しない女性」というハッキリしたコンセプトを貫く事に成功している。思い起こせば、前作「スーサイド・スクワッド」における、ハーレイの不満はジョーカーへの恋愛感情だけのキャラクターに見える事だったので、今作は意図的にそこを変えたかったのだと思う。何故なら見事に味方キャラは全員女性、敵キャラは全員男だけという「女VS男」の極端な構図を作り出しているからだ。本作における男性キャラは、どんなに信頼出来そうな風貌でも、残らず裏切り者で敵なのである。


それにより、バタバタと屈強な男たちがハーレイ・クイン&「バーズ・オブ・プレイ」なる女性メンバーたちに倒されていく様を、ガールズエンパワーメント映画として堪能できる一方で、あまりにその画一された構図に違和感を覚える人がいてもおかしくはないバランスだとは思う。特に今作の圧倒的な悪役として、ユアン・マクレガー演じるブラック・マスクというキャラクターがいるのだが、女性ばかりか子供まで簡単に殺し、死体の顔の皮を剥ぐというサイコパスという設定までは良いのだが、彼が手下の男とデキているゲイとして描かれるのは、さすがにやりすぎ感を感じてしまった。とはいえ、そのあたりの表現はサラッとしているので、そこまで細かいことを気にしなくても十分楽しめる作品にはなっている。


本作を魅力的にしているのは、もちろんマーゴット・ロビーが演じるハーレイ・クインのキャラクターであるのだが、それを活かすポップな世界観も重要な要素だ。本作の印象に近いのは、マーベルの「デッドプール」シリーズだと思う。主人公のナレーションが入り状況や登場人物の説明を入れながら映画は進むのだが、それらが毎回人を食ったようなふざけた説明なのである。また、あえて突然ストーリーの繋がらないシーンを入れて観客が混乱していると、「わかんないだろうから説明するね」とハーレイのナレーションが入り時系列が行ったり来たりするという演出があるのだが、この映画の語り口自体が、主人公ハーレイ・クインというキャラクターのように油断がならないのも面白い。個人的には本作はコメディだと思うくらいに、笑わせてもらった。


またアクションシークエンスも、「ジョン・ウィック」のチャド・スタエルシキが監修しているだけあり、おそらくアクションが不得手であろうマーゴット・ロビーも、カットの見せ方と敵役たちのスタント演出が上手いので、ある程度は迫力のあるアクションシーンに仕上がっている。もちろん「アトミック・ブロンド」のシャーリーズ・セロンなどと比べられるのは酷なレベルではあるが、ラストのブラック・マスクの倒し方などで感じる、アクション映画としてもわざと「外した」作品だと思うので、そこも含めて、過去の女性主役のアクション映画としてはうまく差別化できていると言える。


昨今のシリアスなヒーロー映画もいいのだが、これくらい軽くてポップな作品があってもいいと思うし、ハーレイ・クインというキャラクターのスピンオフとしては、申し分ないくらい面白かった本作。しかも過去のDCコミックスシリーズを一作も観ていなくても、十分に楽しめるのも魅力だと思う。もちろん昨年のトッド・フィリップス監督「ジョーカー」のように後世に残る傑作とは言わないが、こういう楽しいエンターテイメント作品も必要だと思う。


採点:6.5点(10点満点)