映画を観て音楽を聴いて、解説と感想を書くブログ

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映画「メイキング・オブ・モータウン」ネタバレ感想&解説 伝説の音楽レーベル創始者が語るドキュメンタリーの快作!

「メイキング・オブ・モータウン」を観た。

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2019年に創設60周年を迎えた音楽レーベル「モータウン」の歴史を描いたドキュメンタリー作品。創設者ベリー・ゴーディの密着インタビューや取材映像、関係者やスティービー・ワンダー等の所属アーティストの証言映像など、とても興味深い映像が満載だ。モータウンの成り立ちや、なぜ当時彼らがヒット曲を連発できたのか?の謎を解き明かしていくという内容で、監督はベンジャミン・ターナー&ゲイブ・ターナー。過去作としては2016年「アイ・アム・ボルト」という、オリンピック金メダリスト陸上選手であるウサイン・ボルトを追った作品があり、どうやらドキュメンタリーが得意な監督のようだ。今回も感想を書いていきたい。


監督:ベンジャミン・ターナー、ゲイブ・ターナー

出演:ベリー・ゴーディスモーキー・ロビンソンスティービー・ワンダー

日本公開:2020年

 

パンフレットについて

価格600円、表1表4込みで全14p構成。

A4サイズ。価格も若干安い為、ページ数は少ないし2色刷りではあるが、内容としては面白い。監督のコメント、音楽ジャーナリスト林剛氏のレビュー、モータウンの歴史、劇中に使われた楽曲一覧などが掲載されている。

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感想&解説

「メイキング・オブ・モータウン」のタイトルにある「モータウン」とは、スティービー・ワンダーマーヴィン・ゲイジャクソン5、ザ・テンプテーションズスプリームスなどを輩出したデトロイト生まれのソウル/R&B系音楽レーベルの事で、世界中でいまだに絶大なる人気と知名度を誇っている。2006年の「ドリーム・ガール」という作品はまさに、このスプリームスモータウンを描いたミュージカル映画で当時大ヒットしていたし、日本でもとんねるずが演じる「矢島美容室」というユニットがいたが、明らかにこの「ドリーム・ガールズ」が元ネタだろう。本作はその創始者であるベリー・ゴーディが多数の関係者や所属アーティストの証言と共に、1959年にスタートした「モータウン」発祥の歴史を語りまくるという内容で、普通の音楽アーティストのドキュメンタリーもののようにライブシーンが満載という内容ではない。あくまでも歌唱シーンは記録映像の一環としての扱いなので、そこを期待すると少し肩透かしを食うかもしれない。


ただ、このベリー・ゴーディがとてもチャーニングかつカリスマを持った人物で、見た目は黒人の小柄な老人なのだが、スクリーンの支配力というか、人を惹きつける力が半端ない。ゴーディが楽しそうに過去の話をしているだけで思わず見入ってしまうし、彼がふと漏らす言葉の中には「ヒット曲は最初の10秒が勝負」などの金言名言が多数あり、それを聴けるのも本作の大きな魅力になっている。特にモータウンの副社長であり、音楽プロデューサーでゴーディの戦友でもあるスモーキー・ロビンソンとのやりとりは、仲の良さがこちらにも伝わってきて笑みがこぼれる。お互いにリスペクトしている事が観客にも伝わってくるのである。


デトロイトの自動車工場で働いた経験から、アーティストのプロデュースも作曲/編曲、ダンス、レコーディングなどの各パートに分け、そこに複数人の専門家を置いて、徹底的に管理しながら切磋琢磨させる事で、全米ナンバー1ヒット曲を数々生み出していくという方式を生みだし、レーベルとして成功したモータウン。しかも作曲に関してはゴーディ社長自らもコンペに参加していたというから、驚きだ。さらに60年代という黒人や男女差別が当たり前の時代の中で、社内では黒人と白人が同等に会議参加し女性にも役職を与えるといったリベラルな空気の中で、会社は運営されていたらしい。こういった会社運営の内部事情も、当時としては型破りだったであろう。


そして音楽ファンとして見逃せないのは、シーン自体は短いのだが少年期のマイケル・ジャクソンスティービー・ワンダーの演奏や歌唱シーンだ。両人ともにまさに天才としか言いようのない才能で、オーディション時のマイケル・ジャクソンの踊る姿の美しさや、ステージ上で観客を盛り上げる少年スティービー・ワンダーがプレイするブルースハープの迫力たるや。また個人的には、アメリカを代表するシンガーソングライターであるニール・ヤングが突然登場するのが意外であった。どうやらバンドメンバーとして過去にモータウンと契約していたらしい。その他、映画俳優のジェイミー・フォックスHIPHOPグループのN.W.Aのドクター・ドレーなどが登場し、当時のアーティスト達についてコメントしているのだが、当時のアメリカ国内におけるモータウンの影響度の高さが伺える貴重な発言になっている。


1971年のマーヴィン・ゲイのアルバム「What's Going On」が、ベトナム戦争の影響を受けて政治色の強い作品になった事に対する、ゴーディの当時の「モータウン」というレーベルに対する考え方と、今それを振りかえり反省している姿を両方を観る事で、ベリー・ゴーディの経営者としての苦悩が伝わってくる。それでも「(我々の音楽は)黒人音楽じゃない。黒人アーティストの音楽だ。」「アートに色は関係ない。音楽は無色だ。」と訴え続け、アメリカが大きく変わっていく60年~70年代に活躍するゴーディの姿には、観ていて勇気をもらえる。


ラストのクレジットに、ベリー・ゴーディスモーキー・ロビンソンが、モータウンの社歌を楽しそうに歌うシーンがあるのだが、その歌詞のダサさと二人の姿に笑いながらも、何故か胸が熱くなってしまった。それは夢中になって自分たちの信じる、「音楽」という道に打ち込みながら生きてきた、二人の老人の姿がカッコ良すぎるからだろう。本作はモータウンのアーティストファンはもちろんの事、音楽全般が好きな方や、アメリカ音楽業界の歴史やビジネスに興味のある方が観ても、十分に面白いドキュメンタリーになっていると思う。

採点:7.0点(10点満点)