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映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」ネタバレ感想&解説

「マネー・ショート  華麗なる大逆転」を観た。

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今作もすでに映画館で観ていたが、ブルーレイで再見。劇場公開時に何の前情報も無く観た時は、金融関係の専門用語が多過ぎて、ストーリーの展開について行けず悔しい思いをした。ただ「華麗なる大逆転」というサブタイトルには、ずいぶんと違和感を感じた記憶がある。この映画は、アメリカで問題になった「サブプライムローン」をテーマに、経済破綻を予見した男たちがひと山当てようと勝負に出るという内容のコメディ映画だ。ただし「ブラックコメディ」なのだが。

 

監督:アダム・マッケイ

日本公開:2016年

 

感想&解説

2008年のリーマンショックアメリカを中心とした世界経済は、株価の大暴落、会社は次々倒産し大量の失業者を生み出した。この映画の最終着地点は、このリーマンショックなので、映画として明るく終われる筈は無い。多くの人が職とお金を失った裏側で、今回の映画の主人公たちは莫大な利益を得ている。だが、それはやはり倫理的な葛藤を生む為、エンディングでも主人公の誰ひとりとして笑顔は無い。

 

この作品は「華麗なる大逆転」を描きたい訳ではなく、ウォール街の銀行の内情やサブプライムローンの審査のあり方、金融商品を格付けする格付け会社のずさんさなど、当時の金融機関を取り巻く闇を描き出している。だが、それをそのままシリアスに描くのではなく、表現をコメディタッチにする事で、ある程度キャッチーに分かりやすく観れる様に演出されているのだ。登場人物が突然カメラ目線で観客に話しかけてきたり、マーゴット・ロビーが泡風呂に入りながら専門用語を説明してくれたりするのは、そのキャッチーさの一環だ。

 

映画の冒頭に「何も知らないことが問題なのではない。知らないことを知っていると思い込むことが問題なのだ」とテロップが映し出しされる。正に、僕もこの作品を観るまではリーマン・ブラザーズの破綻はニュースで見て知ってはいたが、その裏にはこんな仕組みが動いていたなんて全く知らなかったし、興味を持つ事も無かった。

 

「金融業界は難しい言葉で人々を煙に巻く」というのは劇中の言葉だが、こういう映画がハリウッド資本のメジャー作品として全世界で公開される事で、世界中の人がリーマンショックの内情を知り、何故起こってしまったかを考え、興味を持つきっかけになる事は素晴らしい事だと感じる。ブラッド・ピットクリスチャン・ベールライアン・ゴズリング、スティーブ・カレルといったスター俳優が多数出演している意味も含めて、本作が作られた価値はそれだけで十分にあるのでは無いだろうか。

 

MBSCDOCDSと言った専門用語は事前にネット検索してもらえれば詳しく載っているので、その概要だけでも掴んでおくとこの映画はとても楽しめる。僕も2回目の鑑賞はすんなりとストーリーが理解できて、より面白かった。知的なエンターテイメント作品として素晴らしい映画だと思うし、なによりとても勉強になった。エンドクレジットで流れる曲はレッド・ツェッペリンの「When the levee Breaks」という曲だが、意味は「堤防が決壊する時」。こんなところにも、しっかり意味を持たせているのである。ちなみに「マネー・ショート」は第88回アカデミー賞脚色賞の受賞作品だ。

採点:8.5(10点満点)