「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」を観た。
2012年公開「アウトロー」の続編で、トム・クルーズ主演の本作。大変に地味な作風ではあるが、アクション映画の面白さが詰まった良作だと思う。思い返せば、前作「アウトロー」も、ミステリー色が強いながらも70年代の良きアクション映画を彷彿とさせる作品で、まるでアメリカン・ニューシネマの様な、良い意味で「古めかしさ」すら感じる映画であった。今作も基本路線は、前作を踏襲していると言って良いだろう。アクションをベースにしてはいるが、今回は更に軍事サスペンスと親子ドラマを融合させた内容で、僕は2時間飽きずに楽しめた。
監督:エドワード・ズウィック
日本公開:2016年
あらすじ
ある夜、レストランでケンカが発生したと通報が入り、保安官が現場まで駆けつける。そこには何人もの男たちが倒れていた。現場に居たジャック・リーチャーは手錠をかけられ、連行されそうになるが「90秒以内に2つのことが起きる」と予言をし始める。「まず電話が鳴る」「次にあんたが逮捕される」というリーチャーの言葉を鼻で笑う保安官だったが、結局リーチャーの予言通りとなる。保安官は実は犯罪者で、リーチャーは彼を罠にハメたのだ。
リーチャーは古巣である軍に立ち寄り、現在の指揮官であるターナー少佐を訪ねるが、彼女はスパイ容疑で逮捕されたと聞かされる。ターナー少佐は嵌められたのだと感じたリーチャーは、彼女を助けるため動き始めるが、その途端、彼を追う軍需組織の存在がチラつき始める。リーチャーは軍で培った能力で次々と敵を倒し撹乱する事に成功、ターナー少佐を牢獄から脱出させる。これは何か大きな陰謀があると感じた二人は、真相を探り始めるが、実は敵もリーチャーの弱点を見つけていた。それは彼の娘かもしれない15歳の少女の存在だった。
感想&解説
今シリーズは、トム・クルーズの看板タイトルである「ミッション・インポッシブル」とは明らかに差別化している作風で、いわば真逆のアプローチだと言えるだろう。とにかくトム・クルーズも寡黙で不器用な元軍人を淡々と演じている。「M.I.」シリーズのトム演じる「イーサン・ハント」は、アルマーニのタキシードを着こなしているかと思えば、イタリア製のサングラスをかけてバイクで疾走する。髪型も作品毎にコロコロ変わるし、身体もシャープでとにかくスタイリッシュだ。
一方「ジャック・リーチャー」はといえば、基本は黒を基調とした、少しサイズの大きいダボっとしたジャケットとジーンズという地味な衣装で、髪型もいかにもアメリカの元軍人といった無造作ともいえるショートカット。得意の笑顔も封印しているし、身体もどちら言えばマッチョ方向でどこか鈍重なイメージを与える。これは明らかに原作のジャック・リーチャー像を意識していると思われ、設定である190センチ以上の大柄な退役軍人という、トム・クルーズとはかけ離れた役柄に近付こうというアプローチだろう。またアクション自体も、基本は「銃と拳」のシンプル仕様でKFM(キーシ・ファイティング・メソッド)と呼ばれる、肘や膝を使った動きが特徴的なスペイン生まれの護身術で、格闘により相手をバンバンのしていく。これがまた音も含めて痛そうなのである。
シナリオもシンプルで、良くも悪くも分かりやすい。しかもラストも感動的で、少し涙腺が緩む。極力VFXを排した完全アナログな世界観で、今回は擬似家族とも言える女性2人を守りながら(とはいえ、今作のヒロインはメチャクチャ強いが)、寡黙な一匹狼が魅せる骨太な作品として、特に往年のアクション映画ファンには楽しめる作品になっているのではないだろうか。
採点:5.5(10点満点)