「ドクター・ストレンジ」を観た。
マーベル・シネマティック・ユニバースの最新作。そして、ベネディクト・カンバーバッチ主演の「ドクター・ストレンジ」シリーズ第一作目である。今作は、過去のアベンジャーズ作品との絡みはほぼ無く、この映画単体でも楽しめる様になっている。
監督:スコット・デリクソン
日本公開:2017年
あらすじ
外科医のドクター・ストレンジは、天才的な手術の手腕を持っていたが、傲慢な態度の為、周りの人間からは距離を置かれていた。だが、ある日交通事故に遭い、両腕が使えなくなってしまう。長時間の手術を受け、できる限りの治療法を試みたものの、以前のような医者として活動出来る状態に戻ることは不可能となり、自暴自棄になる。そんなとき、彼は重度の麻痺から普通の生活に戻ることができた男がいることを知り、彼の元を訪ねる。その男からネパールにあるカマール・タジを訪ねて奇跡を起こしたと聞くと、ドクター・ストレンジは迷わずネパールに飛ぶ。ネパールで強盗に襲われた所をある男に助けられると、その男はカマール・タジで修業中のマスターであった。男に付いて行き、道場の扉をくぐるドクター・ストレンジ。最初こそ魔術について半信半疑だったドクター・ストレンジは師匠であるエンシェント・ワンにその能力の威力を見せ付けられると、すぐさま弟子入りを志願する。結果、ドクター・ストレンジは、魔術を習得することに成功する。そんな中、彼には刻一刻と悪の道へと進んだ魔術師カエシリウスとの対決のときが迫っていた。
感想&解説
個人的には全くノレない映画であった。もちろん映像的には、最新のVFX全開でスゴいとは思うのだが、「インセプションみたい」とか「マトリックスに影響受けてるよなぁ」とか、「このネタはオール・ユー・ニード・イズ・キルだなぁ」とか過去の映画のイメージがどうしても付いて回ってしまう。ただ、これは僕が2Dで鑑賞した為かもしれない。
また今作最大の問題は、映画内ルールが曖昧な事である。天才外科医である、ドクター・ストレンジが事故に遭い、動かなくなった手を元に戻す為にネパールに行くまでは解る。その後で魔術師に出会い、修業する流れも良い。だが、その後の展開が性急で「何故ドクター・ストレンジはあんなに急に魔術が使える様になったのか?」の明確な説明が無い。師匠であるエンシェント・ワンのワープによりエベレストの山頂に取り残されて、魔術の力でワープしないと凍え死ぬというシーンがあるが、何故彼が急にワープ出来たのか?死の恐怖から何かに目覚めたのか、そもそもとてつもない才能があったのか、直前までほとんど使えなかった魔術が使える様になった理由が描かれず、突如として世界を脅かす敵と相対する位の強大な魔術を使い始めるドクター・ストレンジに、感情移入が出来ない。
本来はここをしっかり描く事により、ドクター・ストレンジというキャラの特殊性や主人公たる理由が説明され、観客が応援出来るキャラクターになるのに、本作はこのプロセスが丸ごと無い。この世界では修業すれば誰でも魔術が使えるのだろうか?映画内の現実世界と魔術の立ち位置をハッキリしてくれないと、こういう映画は各シーンが飲み込みづらいのだ。
またアストラル体とか、ミラー次元とかの特殊設定が多く、幽体離脱したままの病院での格闘シーンも、「これ、レイチェル・マクアダムスと喋ってるって事は、他の人も見えるって事?でも、違う医者には見えてないっぽいぞ」とか「道がこんなにグニャってなってるけど、街の人は普通に歩いてるって事は鏡の中の世界?」とか、この映画の基本ルールが複雑な割に説明が不足している為に、現在一般市民は危険なのか、そうじゃないのか、どうなると主人公たちの負けなのか?が最後までわからないので、観ていて全くハラハラしない。しかも、時間が巻き戻せたり、主人公が突然空中を飛べる様になっていたりと、魔術をテーマをしているだけに後半は何でもありの展開になる為、観ていていわゆる「どうでもいい」状態になってしまうのだ。オチも、ヒーロー映画としてのカタルシスは無く、微妙な展開でスッキリしない。
この映画で良かった所は、ギャグと音楽だろう。特にベネディクト・ウォンとの音楽ネタ(特にビヨンセ!)のやりとりは最高だ。また劇中、ピンク・フロイドの「Interstellar Overdrive」がかかるシーンがあるのだが、改めてカッコイイ曲だと感心してしまった。
とにかく好みの問題もあるだろうが、個人的には映像だけが魅力の残念な作品だったが、今後のマーベル・シネマティック・ユニバースを考えれば、続編も決定しているし、ファンなら今作は観ておかないといけないだろう。恐らく本作は演出的に3Dで観るのが良いと思う。あとエンドクレジットの後にも、あるキャラクターが登場するので、アベンジャーズファンは席を立たないように。
採点:5.0(10点満点)