「ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK -The Touring Years」を観た。
ザ・ビートルズのライブツアーを追ったドキュメンタリーを、「ビューティフル・マインド」や「ダヴィンチ・コード」のロン・ハワードが監督。ポール・マッカートニーや、リンゴ・スターのメンバー本人もインタビューシーンで出演している。とにかく本作のライブシーンは圧巻だ。
監督:ロン・ハワード
日本公開:2016年
感想&解説
至福の時だった。この作品を映画館で観ていない事が、心底悔やまれた。深夜にブルーレイで鑑賞していたが、テンションが上がってボリュームがかなり上がっていたから、近隣の方には迷惑だったかもしれない。しかし、この映画を観ると、ザ・ビートルズというバンドはとんでもない演奏技術と音楽的な才能を持っていたのだなと、今更ながら馬鹿みたいな感想しか出てこない。ジョンとポールは言わずもがな、ジョージのギターとリンゴのドラムが織り成すバンドサウンドは、最高にカッコ良い。
あれだけの大歓声の中で、PA機材も充分に無い中では、恐らく自分たちの声や演奏もほとんど聴こえないだろう。なのに、あれだけ完璧に音程を維持して、かつハモりながら、演奏も非常にタイトという離れ業。恐らく、多少の修正は入っているとは思うが、それでも十分すごい。当たり前だが楽曲のキャッチャーさも異常である。CD音源では何度も聴いた「I Saw Her Standing There」や「Help!」が、とんでもない興奮と共に目と耳を刺激する。
また当時のザ・ビートルズが起こした社会現象を体感出来るのも、この作品の特徴だろう。劇中、当時の熱狂するファン達の映像と共に、ウーピー・ゴールドバーグのインタビューが登場するのだが、彼女はビートルズを初めて聴いたときに、「自由になんでもやっていいんだと思った」と語っている。黒人である彼女が、人種とか国籍とかそういうものを全部飛び越えた自由さ、「自分は自分であっていい」という強い肯定感を感じたと言うのである。それは彼らのある意味自由とも言える発言の数々や、立ち振る舞いはもちろんの事、発表される楽曲群からも感じられる。
何故かザ・ビートルズの楽曲を聴いていると、クリエイティビティを強く刺激される。音楽に限らず、猛烈に何かを創作したくなるのである。それは1960年代のロックというジャンルの枠を超えて、飽くなき探求と創意工夫を重ねてきた、彼らの音楽から発せられている力のせいだろう。出来れば、彼らのレコーディング風景を延々と観ていたいと切に思う。
音楽ドキュメンタリーとしても、当時の空気感と共に今尚、ザ・ビートルズが与え続けている偉大な影響が、メンバー本人や関係者のコメントと映像によって、これだけ雄弁に伝わるだけで、この映画は大成功だと思う。ザ・ビートルズのファンはもちろん、音楽ファンにも文句無しにオススメしたい一作である。
採点:8.0(10点満点)