「メッセージ」を観た。
「灼熱の魂」「プリズナーズ」「複製された男」「ボーダーライン」と傑作を次々と産み出しており、次回作は、なんと「ブレードランナー2049」という、カナダの天才監督ドゥニ・ヴィルヌーヴの最新作がいよいよ日本公開になる。今回は試写会にて鑑賞。
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー
日本公開:2017年
あらすじ
突如世界12ヶ所の地上に降り立った、巨大な球体型宇宙船。謎の知的生命体と意志の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズは、“彼ら”が人類に<何>を伝えようとしているのかを探っていく。その謎を知ったルイーズを待ち受ける、美しくそして残酷な切なさを秘めた人類へのメッセージとは?
感想&解説
この作品、スタンリー・キューブリック監督の好きな方(特に「2001年宇宙の旅」)や、「未知との遭遇」が好きな人にはオススメだと思う。基本はSF映画なのだが、テーマが深遠で、色々なメッセージ(タイトル通り)を含んでいる。非常に哲学的で、いろいろと観た後に考えさせられる作品なのである。
ストーリーの推進力としては、異星人が地球に来て伝えようとしているメッセージを解読する、という話なのだが、この異星人からのメッセージ自体にこの作品の肝はない。もちろん彼ら(?)が地球に来た理由はあるのだが、これは正直肩透かしだし、その後の展開も説得力がない。主人公が手にする後半のある能力のご都合主義な使い方も含めて、いわゆるメインストーリーが完璧な作品とは言い難いと思う。ただし、この作品はコミュニケーションが困難な相手と理解し合う唯一の方法やその大事さ、人にとっての幸せやその為の選択といった、「ヒューマンドラマ」の部分にこそ観る価値のある作品だと思う。
またこの作品でも「中国」という国が、大変大きな鍵を握る。現状の世界における中国の影響度は、映画の中でも大きくなっているのを肌で感じる筈である。世界各国の異星人への対応の仕方ひとつ取っても、興味深い。今のアメリカだと、即刻軍事行動を起こしそうだが。
映画として編集も上手い。映画冒頭から観客を見事にミスリードしてきて、しっかり後半の展開の伏線になっているし、何気ないセリフにもしっかり意味を持たせているので、非常に映画的な満足感は高い。このあたりは流石、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督である。アカデミー作品賞、監督賞、脚本賞など8部門ノミネートはダテではない。映画のルックスもとても良い。硬質な色味とカットの構図が美しく、主演のエイミー・アダムス、ジェレミー・レナーの演技も含めて、素晴らしかったと思う。
派手なアクションシーンは皆無だし、映画としてはどちらかと言えば地味な作品だろう。「苦しい結末が待っていると分かっている人生でも、その選択を変えないのは何故か?」「その苦しさを上回る幸せがあるから」という主人公の選択のとおり、実は本作、SF映画の皮を被った愛の物語なのである。
「複製された男」を彷彿とさせるあるシーンも含めて、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の新たな意欲作として観ておいて損はない一作だと思う。すでに予告編が公開されているが、10月公開の「ブレードランナー2049」が楽しみで仕方ない。
採点:6.5(10点満点)
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