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映画「猿の惑星:聖戦記」ネタバレ感想&解説

猿の惑星:聖戦記」を観た。

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猿の惑星」リブートシリーズの3作目にして完結編。監督は前作「新世紀」から続投のマット・リーヴス。2008年、あの「クローバー・フィールド」の監督である。「創世記」と「新世紀」が、大変によく出来たリブート作品だった為に、今回も期待がかかるところであったが、結論的には今作「聖戦記」も、映画として十分に面白い作品になっていたと思う。今回はネタバレ全開なので、ご注意を。

 

監督:マット・リーヴス
出演:アンディ・サーキスウディ・ハレルソン
日本公開:2017年

 

感想

前作からの流れで、鑑賞する前は「人間軍vs猿軍団」の戦争映画という感じかなとイメージしていたが、そのシーンは映画冒頭だけで、ほぼ作品としては主役であるシーザーにフォーカスした作りとなっている。具体的には、映画序盤に息子と妻を無残に殺されたシーザーは復讐の為に、自ら猿の群れを離れて、ごく一部の仲間と共に人間の後を追うという展開になる。馬に乗り復讐の為の旅路を行く姿は、まるで往年のマカロニウェスタンのようだ。今作は大きく前半パートと後半パートの二部構成になっているが、どちらもジャンルムービーとしての色が強い。

 

前半はマカロニウェスタンロードムービー、後半はいわゆる「脱獄モノ」と呼ばれる刑務所からの脱出をテーマにしたジャンルだ。正直、ロードムービーのパートは少し退屈だと感じた。口がきけない少女ノバや、今作のコメディリリーフ「バッド・エイプ」との出会いが描かれるが、結局人間軍に追いつく事は分かっているのでストーリー的な推進は弱い。だが、後半パートは、捕らえられたシーザーたちと、主役級の猿たち+少女ノバが織りなす地下道を使った脱出劇が、スリリングだしアクション的にも面白いシーンとなっている。

 

だが本作の真骨頂は、ウディ・ハレルソン演じる「大佐」にシーザーが捕まり対峙する、あるシーンである。ウィルスの影響か、人間に現れ始めた「言葉が喋れなくなる」という兆候に、大佐は「人間の尊厳の消失」を感じ、その感染拡大を怖れるあまり、症状が出た人間を次々と殺し、遂には自らの息子までも手にかけた事を語る。そして、それは「人類を守る為」に行ったリーダー的な行動であったと告げる。更には、この殺戮行為の為に人間側からも攻撃対象と見なされ、北から軍隊が攻めてくる為に、捕獲した猿を労働力として「防御壁」を作っている事が語られる。

 

この狂気のシーンを観ながら、僕は1979年フランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」を思い出したが、ここでの「個人的な復讐」の為に行動している今作のシーザーと、「大義の為(と信じて)」行動している大佐の対比が面白い。今までのシリーズと立場が逆転しているのだ。だが、大佐の言う「力による大義」と、最終的にシーザーが気付く「真に利他的な行為」とのどちらがリーダー的な行動か?は明らかだろうし、大佐と共にアメリ星条旗が大写しになるシーンからも「ある意図」が含まれているのは明白だろう。

 

映画終盤で、大佐はシーザーとの戦いに敗れる訳でも無く、英雄的に人間側を守って死ぬ訳でも無く、少女ノバが持っていた「人形」に着いた血痕からウィルスに感染し、一人きりで自ら命を絶つ。そして北から攻めてきた軍隊は、なんとヘリで攻めてくる為、あれだけ必死に築いてきた壁などなかったかのようにミサイルを撃ち込んでくるというアイロニカル。そして、その軍隊自体も最終的には、自らが起こした大雪崩によって全滅する。そう、本作の人間たちは猿との戦争に負ける訳ではなく、「勝手に自滅する」のである。

 

結果的に、地球は「猿の惑星」になるが、それは進化した猿に力で支配された訳ではなく、自らが開発した薬のウィルスと互いが殺しあった結果だったという訳だ。大雪崩から猿を守ったのは、猿の天性のスキルである「木登り」だったという展開も含めて、大変に皮肉が効いているが、1968年「猿の惑星」に見事に続くストーリーになっていたと思う。旧作で人間が喋れない理由も、これで合点が行く。

 

エンドクレジットに、もう少し旧作オマージュがあっても良いかとは思ったが、今の時代に「猿の惑星」を作り直す意義を十分に感じる、多彩なメッセージに富んだ作品だった。この優れたリブートシリーズが終わってしまうのは残念だが、改めて68年度版を観直したいと思う。

採点:7.0(10点満点)

 

前作の感想はこちら

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