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映画「アントマン&ワスプ」ネタバレ感想&解説

アントマン&ワスプ」を観た。

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MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズでは通算20作目。2015年に製作された「アントマン」の3年越しの続編である。前作の雰囲気を踏襲したコメディSFアクションといった作風で、「アントマン」の続編に期待する要素は全て詰まっていると言って良いだろう。最後にも記載するが、やはり基本的にはMCUのファン向け作品だと思うので、今回はあっさりと感想を。ネタバレありなのでご注意を。

 

監督:ペイトン・リード

出演:ポール・ラッドエヴァンジェン・リリー、マイケル・ダグラスマイケル・ペーニャ

日本公開:2018年

 

あらすじ

バツイチ、無職、前科持ちで、離れて暮らす愛娘だけが生きがいのスコット。あるスーツを手に入れたことで、身長 1.5cm の最強ヒーロー「アントマン」なったものの、ある大事件をきっかけに FBI の監視下に置かれることになる。そんな頼りない彼を支えるのが、アントマンの開発者ピム博士の娘、ホープ。彼女もまた父の開発したスーツと脅威の身体能力で、完璧ヒロインのワスプに変身する。まったく正反対のふたりの前に、すべてをすり抜ける神出鬼没の謎の美女ゴーストが現れ、ピムの研究所が狙われる。

 

感想&解説

あの名作「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」公開から約4ヶ月。早くもMCUの新作「アントマン」の続編が公開となった。時系列的には「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」の直後で、アントマンキャプテン・アメリカチームとして戦い、ソコヴィア協定違反で逮捕されて保護観察処分の状態からストーリーは始まる。


あまりにダークな作風だった「インフィニティ・ウォー」とは対照的で、基本的には明るく軽いタッチの作品でコメディ演出がベースになっている。その為、全く気構えずに2時間楽しく鑑賞出来るし、主演のポール・ラッドも良い意味で気の抜けた演技とセリフで笑わせてくれる。特に脇役のマイケル・ペーニャが最高で、自白剤を打たれて早口でまくし立てるシーンや、全編に亘って状況が飲み込めてない感じなど、存在だけで面白いキャラクターとして存在感があったと思う。


アクション演出は、基本的にアントマンの「小さくなったり大きくなったり出来る」という特徴を活かしたもので、これだけでも他作品と差別化されたシークエンスが沢山あって見応えがある。さらに今回は「ワスプ(スズメバチ)」の要素である「飛べる」ことも大きな要素になっており、よく観るありきたりなカーチェイスもこれらの要素が加わるだけでかなりフレッシュなシーンになっていると思う。「素粒子」とか「量子のもつれ」とか「量子力学」とか、劇中ではもっともらしい言葉が並ぶが、このあたりの専門知識は基本的に必要ない。ハンナ・ジョン・カメンが演じる「ゴースト」という今作におけるヴィランの小物感は如何ともしがたいが、ある意味では本作の小さなスケールのストーリーには合っているかもしれない。コメディ要素の強いライドアクション映画として、子供が観ても楽しめる作品になっていると思う。


だが、今作において最も波紋を呼ぶ要素としては、恐らくラストシーンの「あれ」だろう。もちろん「インフィニティ・ウォー」のラストシーンで、アベンジャーズのメンバーが次々と消えた「あれ」である。ラストシーン、アントマンは量子トンネルでヒーリングエネルギーを集めに量子の世界に入り込む。外の世界ではホープとハンク博士、ジャネットが残っていたのだが、地上に戻るカウントダウンの最中に彼らは全員消えて、なんとアントマンは量子の世界に取り残されてしまうという展開になる。


今まで記したように基本的に本作は明るく能天気な作風で進んでいたし、悪役も含めてハッピーエンドだったにも関わらず、ここだけいきなりダークで救いのないシーンになるので、このギャップで本当に後味が悪い。今まで感情移入して応援してきたメインキャラたちが、映画の最後で(この作品の中では)なんの脈絡もなく消えてしまうのである。このシーンがあるせいで折角MCUの中では、初心者向けで単体でも楽しめた「アントマン&ワスプ」という作品が、一言さんお断りの「いつものMCU作品」になってしまった。同じ演出を狙うにしても、もう少し描き方があったのではないかと思うのだが、最後にこの作品のトーンを決定付けてしまう場面を入れたのは、非常に残念な決断であったと思う。


やはりMCUシリーズは2019年公開「アベンジャーズ4(仮)」まで、このまま走り抜けるのであろう。この「アントマン&ワスプ」の着地を観る限り、良くも悪くも完全にファン向けのシリーズになっているので、「アベンジャーズ4(仮)」は今までのMCUファンが最大限楽しめる作品になっていると思いたい。本作「アントマン&ワスプ」も、ラストシーン以外は楽しい快作であったと思う。

採点:5.5(10点満点)