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映画「ザ・プレデター」ネタバレ感想&解説

ザ・プレデター」を観た。

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1987年の「プレデター」は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演、ジョン・マクティアナン監督の傑作だったが、その後の1990年の「2」から「エイリアンVS.プレデター」「AVP2」、2010年「プレデターズ」まで、作品を追うごとにどんどんとパッとしない作品が続くシリーズになってしまっていたと思う。そこで、8年ぶりの「プレデター」最新作が公開になったのだが、なんと今回は「アイアンマン3」や、なによりあの2016年「ナイスガイズ!」でメガホンを取ったシェーン・ブラックが監督を勤めるという事で、個人的にはかなり期待値が高い一作であった。という訳で、さっそく初日に劇場に駆け付けたのだが、感想はどうであったか?今回もネタバレありで。

 

監督:シェーン・ブラック

出演:ボイド・ホルブルック、ジェイコブ・トレンブレン、オリヴィア・マン

日本公開:2018年

 

あらすじ

一人の少年が起動させてしまった謎の装置。そこから発信されたのは宇宙で最も危険なハンターを呼び寄せる、人類にとって最悪のシグナルだった。かつて人類を恐怖のどん底に突き落とした一人の異星人。比類なき格闘センスと圧倒的キル・スキル、そして侍を彷彿とさせる武士道を持ち合わせた超好戦的ハンター、その名はプレデター。ヤツは、より強く、賢く、他の種の DNA を利用して遺伝子レベルでアップグレードして再び我々の前に姿を現す!絶滅必至の人類に果たして生き残る道はあるのか?そして突如現れた、アルティメット・プレデターの正体とは?

 

感想&解説

さすがに一作目と比べるのは可哀想だと思うが、とはいえ他のシリーズ作品と比べてみても、本作はかなり厳しい出来ではないだろうか。褒められるのはレーティングがR15+なので、かなりゴア描写を攻めている事くらいで、あとは脚本から演出までなんとも凡庸な作品になってしまっている。画面は動き回り、VFXを駆使した派手な演出が続くのだが観ていて一向に心が弾まないのだ。


プレデターが落としたボールのような道具を拾った主人公が突然、身体が透明になるステルス技術を映画冒頭から使えるようになるなど、今までガジェットのお陰だとは言え、プレデターの特殊能力だと思っていた事があの妙なボールのおかげだと判明してガッカリしたり、何故かプレデターが犬(のような生物)を飼っていて、これが中途半端に人間を救ったりと、プレデターという得体の知れない好戦民族という設定が、どうにも矮小化されてしまった印象でいただけない。しかも、ある程度の限定空間で見えない相手と戦うからプレデターなのに、今回はただの画面暗めのドタバタアクション映画になってしまっている。


人間側のキャラクターも魅力不足で、息子のローリーはいきなりプレデターの装置を臆さず操作し出して、何故か仕組みを理解してシグナルを出してしまうし、女性進化生物学者であるはずのオリヴィア・マンは軍人顔負けで銃を構えてプレデターと対峙するし、護送中に知り合っただけの退役軍人たちが、全員仲良しチームになって命を張って戦うし、主人公はそもそも全く華がない兄ちゃんだし、あまりに都合良すぎであり設定がペラペラだ。


プレデターのキャラに関しても然りで、プレデターは戦闘的な者だけを狩り、正々堂々と戦った者には敬意を払うという「武士道」精神があったはずだがそれは描かれずに、挙げ句の果てには「プレデターキラー」なる道具で、人間を助ける為に地球に来たというオチにはかなり失望した。そもそもアルティメットプレデターというデカいプレデターとの対決にもアッサリ負けてしまうし、あの神聖で強敵だったプレデターはどこへ?といった感じである。そして、あの笑劇のラストシーンには嫌な予感しかしない。プレデターキラーというガントレットを嵌めると、自らもプレデターみたいな外見になり、それを見た主人公が「俺が着る」みたいな事を言って映画は終わるが、もう勝手にしてくれである。誰が戦隊モノの様な人間対プレデターの戦いが観たいのであろうか。何か本質的な部分でこのシリーズの良かった部分が、失われてしまった気持ちになってしまった。


一作目、灼熱のジャングルで殺した獲物の皮を剥ぎ、逆さに吊るす残虐性を観た時、赤外線探知で相手の場所が解るという設定を観た時、シュワルツェネッガー素手である事を知ったプレデターが、自ら武器とヘルメットを捨て素顔を晒した時、また傷を負ったプレデターが医療キットで治療する際に痛みに吠えるのを観た時、その造形を含めて「恐ろしいがカッコいい」という奇跡のバランスに魅了されたものだ。だが、残念ながら本作にはそれが全て無い。シェーン・ブラック監督の資質は、このプレデターという強いキャラクター性を持った作品には向いていなかったようである。個人的には、もうプレデターシリーズは終わりにしても良いのでは?と思わせるほどの凡作だったと思う。残念である。

採点:3.0(10点満点)