映画を観て音楽を聴いて、解説と感想を書くブログ

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映画「スキャンダル」ネタバレ感想&解説 実話ベース!セクハラがテーマの社会派作品!

「スキャンダル」を観た。

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本作は2016年にアメリカのケーブル局で視聴率No.1のFOXニュース内で実際に起こった、CEOによる女性キャスターへのセクハラ事件を描いた作品だ。そう聞いて、2017年にハリウッドで起こった「#Metoo」ムーブメントを思い出す方も多いだろう。大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインハウスと、本作のFOXチャンネルCEOである本作のロジャー・エイルズは、かなりイメージが重なる。あの「#Metoo」運動の先駆けとなった事件が、今回映画化された訳である。監督は「オースティン・パワーズ」シリーズのジェイ・ローチ。出演は、シャーリーズ・セロンニコール・キッドマンマーゴット・ロビーと超豪華キャストである。今回もネタバレありで。


監督:ジェイ・ローチ
出演:シャーリーズ・セロンニコール・キッドマンマーゴット・ロビー
日本公開:2020年

 

あらすじ

アメリカで視聴率ナンバーワンを誇るテレビ局FOXニュースの元人気キャスターのグレッチェン・カールソンが、CEOのロジャー・エイルズを提訴した。人気キャスターによるテレビ界の帝王へのスキャンダラスなニュースに、全世界のメディア界に激震が走った。FOXニュースの看板番組を担当するキャスターのメーガン・ケリーは、自身がその地位に上り詰めるまでの過去を思い返し、平静ではいられなくなっていた。そんな中、メインキャスターの座のチャンスを虎視眈々と狙う若手のケイラに、ロジャーと直接対面するチャンスがめぐってくる。

 

パンフレット

価格820円、表1表4込みで全32p構成。

小型横サイズ。紙質も良くオールカラー。シャーリーズ・セロンを含めた主演女優3名と監督インタビューや、映画ジャーナリストの立田敦子氏&猿渡由紀氏、ライター小川たまか氏など女性陣のコラムが掲載されており読み応えがある。

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感想&解説

昨年観た、アダム・マッケイ監督「バイス」の時にも感じたのだが、アメリカ映画界というのはこういった「セクハラ事件」というセンシティブな内容でも、実名でガンガン映画化してしまうところが、本当にすごい。しかも今回の加害者であるFOXニュースのCEOであり、TV業界の帝王と呼ばれたロジャー・エイルズは2017年に病死しており、事件も2016年の事と遺族や関係者の記憶もまだまだ新しいであろうに、ほとんど手加減なくこのロジャーが行っていたセクハラの実態を描くのである。やはりこの手の内容の映画化は、まだ日本では難しいだろう。ただ、アダム・マッケイ監督の2015年作品「マネー・ショート 華麗なる大逆転」の脚本家チャールズ・ランドルフが参加しているだけあり、描こうとしている内容のシリアスさに反して、決して堅苦しい作風にはなっていないのは見事である。むしろ、かなり風通し良く、更にテンポよく、この事件の主要人物たちと置かれている状況を整理して描いてくれるので、観ている間に混乱することはほとんどない。

 

そして、今やハリウッドの人気3大女優といっても過言ではない、シャーリーズ・セロンニコール・キッドマンマーゴット・ロビーの演技は、いわずもがな素晴らしく、特にキャスターのメーガンを演じたシャーリーズ・セロンは特筆すべき存在感だ。ウィンストン・チャーチル」でゲイリー・オールドマンに施した特殊メイクでオスカーを獲得したカズ・ヒロの手によって、彼女は完全に別人となっており、この役に異常な説得感を生み出している。シャーリーズ・セロンは本作のプロデューサーも務めているらしく、この作品に対して並々ならぬ熱意があったのだろう。マーゴット・ロビーも、劇中でかなり陰湿なセクハラを受けるシーンがあるが、それらの行為が彼女に対してどれほどの傷を残したかを表現する、同僚へかけている電話の途中に堪えられずに涙してしまうシーンは、観ていて思わず心が揺さぶられた。

 

この作品の素晴らしいところは「セクハラをした権力者VSセクハラを受けた女性たち」という、単純な対立構造だけに留まっていないところだと思う。FOXニュース社内で、最高権力者のロジャー・エイルズの毒牙にかかった女性たちが一致団結して、反旗を翻すというシンプルな作品ではないのである。むしろ最初にロジャーを訴えた、ニコール・キッドマン演じるベテランキャスターのグレッチェン・カールソンは、激怒したロジャーによって、あらゆる手で反撃に出られ、将来を絶たれてしまいそうになる。そして、社内では実際にセクハラを受けていても声を上げられない女性たちや、それを知っていても行動できない男たちを描く。これはセクハラを取り巻く、今のリアルな社会の実情であろう。女性が男社会の中で働くために、どのように選択し生きているのか?を、この作品は登場人物たちを過度にヒロイックにではなくリアルに描いているのである。

 

セクハラを受けたことがレッテルになって一生付きまとう事を恐れる女性や、報復を恐れて声を上げられない女性、それでも権力者が自分にチャンスを与えてくれた事に感謝している女性、実際に様々な考え方や立場の人たちがいる事が表現されており、非常に考えさせられる。劇中、遂に勇気を振り絞り沈黙を破る女性たちには強い敬意を感じるが、現在進行形でまだこの問題は実際の世界中では続いているのである。だからこそ、こういった作品が公開される事には大きな意味があるのだろう。トランプの実際のニュース映像やツイート内容も生々しく、あまりの女性蔑視発言に背筋が凍るが、改めてこういった問題を表面化してみせるという意味でも、素晴らしい映画だったと思う。

採点:7.0(10点満点)