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映画「コンテイジョン」ネタバレ感想&解説 このコロナ禍で観ると恐怖感倍増!リアルすぎるパンデミックサスペンス!

コンテイジョン」を観た。

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新型コロナウィルス被害の拡大に伴い、今非常に注目されている映画である。今回、Netflixにて初めて鑑賞したのだが、なるほどこれは今観るべき作品なのかもしれない。監督は「オーシャンズ」シリーズや「トラフィック」のスティーヴン・ソダーバーグ。突然、世界全体を恐怖に陥れたウィルスを描く、パニックサスペンスだ。出演者は大変に豪華でマット・デイモンケイト・ウィンスレットマリオン・コティヤールジュード・ロウローレンス・フィッシュバーンなど、スター俳優たちが勢ぞろいしている。本作はスティーブン・ソダーバーグ監督らしさがありつつ、2011年の作品ながら、まるで今のコロナウィルスのパニックを予見していたかのような描写が恐ろしい作品に仕上がっていた。今回もネタバレありで。

   

監督:スティーブン・ソダーバーグ

出演:マット・デイモンケイト・ウィンスレットローレンス・フィッシュバーングウィネス・パルトロウ

日本公開:2011年

 

あらすじ

ミッチ(マット・デイモン)の妻ベス(グウィネス・パルトロー)は、香港への出張後にシカゴで元恋人と密会していたが、せきと熱の症状が出始める。同じころ香港、ロンドン、東京で似たような症状で亡くなる人が続出。フリージャーナリストのアラン(ジュード・ロウ)は伝染病ではないかと考え始める中、世界中では爆発的にウィルスが蔓延し、死者が増えていく事態になっていく。

 

感想&解説

「恐怖はウィルスより早く感染する」、本作の宣伝コピーである。本作はいわゆるパンデミックが広がっていく様を、派手なVFX演出で見せるような作品ではない。今のコロナウィルスの恐怖のように、音もなく静かに、だが爆発的に世界に広がっていく様を淡々と冷徹に表現する。まず、映画の冒頭でグウィネス・パルトロウが演じる、中国の出張から帰る女性が咳き込んでいる様が映し出される。彼女は誰か恋人らしい相手と空港で電話しているのだが、彼女がアメリカに帰ってくると実はマット・デイモン演じる夫が家にはいる事が分かる。どうやら別の相手と浮気をしていたらしい。かと思ったら、グウィネス・パルトロウはいきなり泡を吹いて倒れ、そのまま死んでしまう。マット・デイモンが医師から妻の死を説明された時、「で、いつ妻に会えるんです?」と聞き返すシーンがあるのだが、このいきなり過ぎてまったく現実が受け入れられないという描写が、今の視点で観ると非常に怖い。さらに家に帰ると、子供が同じ全く症状で死んでいるのだ。


この時点で、この「コンテイジョン」という作品の中でウィルスは、全く容赦のない人類の敵なのだと観客に痛いほど伝わる。そこから、グウィネス・パルトロウの浮気相手も含めて、恐らく彼女が感染してから今までの行動の中で、世界中にウィルスをまき散らしているであろう恐怖を感じるのだ。これは今のコロナウィルスの感染経路に恐怖している我々と全く同じだ。本作のウイルス致死率が20~30%に設定されているのも妙にリアルなのだが、それもそのはず、本作にはイアン・リプキン医師やCDCの研究者が医療監修に付いており、本作の現実感を高めている。しかも、このイアン・リプキン医師は先日コロナウィルスに感染したとのニュースが流れており、話題にもなっているのだ。


とにかく今の目線で本作を観ると、学校閉鎖に対しての親のリアクションや、ウィルス検査の受け入れ体制の混乱、医療従事者の感染拡大、ネットでのデマと陰謀論の拡散、薬の買い占めや都市封鎖など、現実問題として毎日のようにニュースで報道されている事が、2011年の段階で既に映画化されている事に驚くばかりだ。特にジュード・ロウが演じているブロガーが拡散する、ウイルスに効く特効薬があるという詐欺に市民が右往左往させられる様は、正しい情報で正しく行動すべきという観点で、見る者を大いに考えさせてくれる。


恐らくこの映画のように、勇気ある科学者たちがこれから遠くない未来、新型コロナウィルスの特効薬を開発してくれるのだろう。そして、この作品でもどのように公平性を保って、世界中にそのワクチンを配布するのかが描かれるだが、それは誕生日の年と月の書いたクジを政府が引いて、当たれば対象の市民にワクチンが送られてくるという方法を描いている。実際問題としては感染の重度や年齢などによって緊急度が違う為、この方法がベストだとはとても思えないのだが、この設定にした事で、このワクチンを巡って人間はどのように行動出来るのか、までこちらに思考を促してくる。クジが当たらない重篤な他人の子供に自分のワクチンを譲る事が出来るのか?金があれば、どんなに他人を欺いても法に裁かれない社会でいいのか?本当に人間らしい行為とは何か?をパンデミックという極限状態の中で問うてくるのである。


ラストシーンでマット・デイモンが亡き妻を想って娘に隠れて泣くシーンは、思わず胸が詰まる。とにかく鑑賞中、まるでドキュメンタリーを観ているような気持ちにさせられた本作は、ウィルスの発生源が、中国のコウモリだったというリアリティのありすぎる展開も含めて、2020年の今観ると、下手なホラー映画よりもよほど背筋が凍る106分になるはずだ。感染パンデミックというテーマの作品は数あれど、これほどエビデンスに基づきながら、エンタメ色を排しリアルで突き放した作風の映画は、なかなか無いだろう。

採点:7.0点(10点満点)