映画を観て音楽を聴いて、解説と感想を書くブログ

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映画「パーティで女の子に話しかけるには」ネタバレ感想&解説

パーティで女の子に話しかけるには」を観た。

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2002年に自ら監督・主演した「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のジョン・キャメロン・ミッチェルが短編小説をベースにメガホンを取った、青春恋愛映画。とはいえ普通の恋愛映画では全くなく、かなり奇妙なバランスの作品になっている。1977年のイギリスを舞台に、エル・ファニング演じる宇宙人とパンクが好きな高校生との恋愛を描いた作品だ。2017年日本公開の作品だが当時劇場で見逃していた為、今回はamazonプライムで鑑賞。ネタバレありで感想を書きたい。

 

監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル

出演:エル・ファニング、アレックス・シャープ、ニコール・キッドマン

日本公開:2017年

 

あらすじ

1977年、ロンドン郊外。大好きなパンクロックだけを救いに生きる冴えない少年エンは、偶然もぐり込んだパーティで、不思議な魅力を持つ美少女ザンと出会う。エンは好きな音楽やファッションの話に共感してくれるザンと一瞬で恋に落ちるが、2人に許された時間は48時間だけだった。2人は大人たちが決めたルールに反旗を翻すべく、大胆な逃避行に出る

 

感想&解説

アバンギャルドでちょっと不可思議な作風、しかも103分とタイトな上映時間で夜中にフラッと観るにはちょうど良い作品だった。とにかくエル・ファニング演じる宇宙人ザンが魅力的で、主人公の男子高校生でなくても惹かれてしまう。地球の事がまったく分からないという設定のザンは、たまたま宇宙人のパーティで出会ったエンと一緒に48時間限定で、パンクロックを体験したいとロンドン郊外の街を徘徊する。48時間後にザンはまた宇宙に帰ってしまうからだ。


このエンがその友達と忍び込んだ宇宙人のパーティがいきなりぶっ飛んでいて、コンテンポラリーダンスのような動きをして奇妙な服を着た人たちが現れた途端、この映画をお洒落な恋愛映画だと思って観始めた方は、作品と距離を感じるかもしれない。正直、この「パーティで女の子に話しかけるには」はタイトルのキャッチーさとは裏腹に、観る人をかなり選ぶタイプの映画だと思う。しかも、なぜロンドンの郊外で宇宙人たちがパーティをやっているのか?は「旅行だ」というセリフ以外の説明は特にされず、ザンは地球の生活に馴染みたいという動機で、突発的にエンと行動を共にする。この冒頭20分の設定にノレるかどうかでこの映画の評価は分かれるだろう。


だが、いかにも恋愛に奥手のエンが、ザンの少し奇妙な行動に振り回されながらも恋に落ちていく様は、非常にロマンチックだ。ザンは地球人の身体に興味津々でいきなり脇を触らせたり、指を舐めたりするし、人見知りもないのでエンの母親ともすぐに打ち解けてしまう。そんなザンは向こう見ずで天真爛漫という設定だが、宇宙人なりに保護者に支配された窮屈な生活に嫌気が差しており、「パンク」という音楽が持つ体制への反抗というアティチュードに惹かれていくのである。こうなると、ほとんど思春期における地球人と宇宙人の違いはなんだ?という話だが、正直ザンだけを観ているだけでは「ちょっと変わった子」くらいの違いしかない為、中盤の二人の距離が近づく恋愛シーンはシンプルなロマンティックコメディといった感じで、違和感なく見ていられる。このあたりの匙加減は巧妙だ。


特に、ニコール・キッドマン演じる落ち目なプロデューサーに気に入られ、突然パンクバンドのボーカルとしてステージに立つことになったザンとエンの「表現による自己実現」の快感は、とても気持ちがわかるし、観ているこちらも思わず笑みがこぼれる名シーンだった。ライブの後でテンションが上がり過ぎて言動がおかしくなるのも、バンドあるあるだろう。だが、残念ながらこの映画で楽しかったのはここまでで、この後に繰り広げられる「子供を食べてしまう宇宙人たち」から、ザンを取り返す為のドタバタ劇は正直退屈だ。最初のパーティ会場を舞台に、奇妙な宇宙人たちとパンクロッカーのゆるい攻防戦が描かれるのだが、ここからはいきなりC級シュールコメディのようなタッチになり、役者の演技テンションも含めてあまり真剣に観ていられなくなる。


そしてここからネタバレだが、まさかのノーセックスで妊娠が発覚するザン。童貞のままだが、なんとエンの子供らしい。このあたりに突っ込むことは不毛だ。彼の事を愛してはいるが子供のために仲間たちと宇宙に帰ることを決意し、涙するエンを残してかぐや姫よろしく、彼女は宇宙に帰っていく。やはり友好的な宇宙人はみな最後は宇宙に帰っていく宿命なのであろう。ここでのエンの涙と落胆の演技は、大事な人を失うという切迫感が強く出ていて良かった。そして15年後、作家として成功したエンの元にザンの子供たちが大挙して訪れるというシーンで、この映画は終わる。


決してつまらない映画ではないし、所々楽しいシーンもある。いわゆるボーイ・ミーツ・ガール的な甘酸っぱさもあり、主役二人のキャラクターも含めて恋愛映画としても魅力的だ。だがこの映画のコンセプトから言えば本末転倒なのだが、この宇宙人という設定があまりに無理やりで、こちらの感情移入の足を引っ張っていたのは否めない。前半は良かっただけに、ちょっと惜しい作品だった。

採点:5.5点(10点満点)