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映画「新感染半島 ファイナル・ステージ」ネタバレ感想&解説 サスペンス要素が消えた大味ゾンビアクション!

「新感染半島 ファイナル・ステージ」を観た。

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2021年、最初のレビューはこの作品から。日本でも話題を呼んだ韓国産ゾンビアクション「新感染 ファイナル・エクスプレス」の4年後を描く続編だ。元旦から公開になっているので、さっそく鑑賞してきた。監督は前作から引き続き、ヨン・サンホ。主演は「MASTER マスター」のカン・ドンウォン。2020年の7月に韓国では公開となり、コロナ禍にも関わらずオープニング動員数は35万2千人以上を記録し、大ヒットとなった。今回もネタバレありで感想を書きたい。

 

監督:ヨン・サンホ

出演:カン・ドンウォンイ・ジョンヒョン、キム・ドゥユン

日本公開:2021年

 

あらすじ

人間を凶暴化させる謎のウイルスが半島を襲ってから4年後。香港に逃げ延びていた元軍人のジョンソクが、ある任務遂行のために半島に戻ってきた。その任務とは、限られた時間内に大金が積まれたトラックをチームで回収し、半島を脱出することだった。トラックを回収し、任務は順調かに思われたが、民兵集団によりジュンソクたちはトラックを奪われてしまう。そんなジュンソクを窮地から救ったのはミンジョン母娘だった。

 

パンフレット

価格820円、表1表4込みで全28p構成。

縦A4サイズ。紙質は良く、オールカラーでデザイン性も高い。主演カン・ドンウォンイ・ジョンヒョン、監督ヨン・サンホのインタビューコメント、映画評論家の尾崎一男氏とくれい響氏の作品レビュー、伊東美和氏のゾンビ映画コラム、プロダクションノートが掲載されている。

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感想&解説

最近、「新感染 ファイナル・エクスプレス」をブルーレイで観直していたのだが、自分でもビックリするくらいに泣いてしまい、改めて前作は傑作だったと感じた。列車内と駅だけという”閉鎖空間”を舞台に、きっちりと従来のゾンビ映画のフォーマットをなぞりながらも丁寧なサスペンス演出が楽しめる作品だし、親子、夫婦、恋人、姉妹といった多様な人間関係を危機的な状況に置くことで、それぞれが見せる愛ゆえの利他的な行動が涙を誘うストーリーになっていた。さらに”感染”という疑惑を巡り、普通のサラリーマンをとんでもない悪役にまで物語的に昇華させる事で、「極限状態で本当に恐ろしいのは人間」というメッセージが、身に染みて理解できるというのも作劇的に上手かったと思う。ジョージ・A・ロメロが開拓し、もうかなり出尽くした感のあった「ゾンビ映画」というジャンルに、韓国から正統派の傑作が追加されたと嬉しい驚きだったのが、2017年日本公開の前作だったと思う。


そしてその約4年ぶりの続編が、本作「新感染半島 ファイナル・ステージ」だ。タイトル通りに、今回は朝鮮半島全域がすでにパンデミックに襲われているという設定で、前作のような閉鎖空間ではない。さらにストーリーも「ゾンビが大量に徘徊するソウルを舞台に、乗り捨てられたトラックから2,000万ドルの大金を回収して脱出する」という、荒廃した世界観のアクションものにシフトしており、主人公の設定も前作のファンドマネージャーという「一般人」から、銃が扱える「元軍人」に変更となっている。これにより、完全に映画のジャンル自体が変わったという印象だ。SFホラーがメインだったリドリー・スコット監督の「エイリアン」から、SFアクションになったジェームズ・キャメロン監督「エイリアン2」への変化が、一番イメージに近い気がする。


今回は、ヨン・サンホ監督の”映画あこがれ”を全部ぶっこんで煮詰めた感じなのだろう。ジョン・カーペンターニューヨーク1997」、ジョージ・ミラーマッドマックス 怒りのデス・ロード」、ジョージ・A・ロメロランド・オブ・ザ・デッド」、ジョン・クラシンスキー「クワイエット・プレイス」あたりを想起させる展開は正直、既視感がかなり強い。もちろん前作もゾンビ映画クリシェに溢れてはいたが、それを限定空間ならではのサスペンスを入れることで飽きさせない作りにしていたのだが、今作は”シーンの演出”と”キャラの掘り下げ”が圧倒的に弱いと思う。サスペンスの要素が後退し、かなり大味なアクション映画に留まってしまった気がするのだ。


本作の一番の見どころは、全編20分にも及ぶカーチェイスシーンだろう。ここは確かに大量のゾンビを弾き飛ばしながらのカーアクションシーンとしては、迫力もあり見ごたえがある。ただ全編CGを多用したシーンの連続であまりに”作り物感”が強すぎる為、まったく興奮しないのである。汗とガソリンの匂いがしないカーアクションとでも言おうか。ここが「怒りのデス・ロード」とは違う点だろう。ちなみに今作は前作とは世界観こそ同じだが、ストーリー及びキャラクターの関連はまったくない。せめて前作で生き残った娘スアンがカメオ出演するなど、もう少し前作ファンへのサービスがあっても良かったのではないだろうか。


とはいえ、良い点もある。ラストの展開だ。ここからネタバレになるが、母親ミンジョンが娘二人を救うべく、一人でトラックの中で籠城するシーンがある。周りはゾンビに囲まれ、娘たちと主人公ジョンソクはもうヘリで救助される直前だ。ここでミンジョンは娘たちを助けられたし、もう自分の命は諦めて銃で自害しようとする。まるで前作のラストを思い出させる自己犠牲の展開だ。だが、ここでジョンソクは母親を助けに行くという選択を取り、ミンジョンも更に生きようと行動を起こす。ここは前作の自分の命を捨てる事により家族を救うという繰り返されたお約束を破り、数多あるゾンビ映画と差別化した良いシーンだと思った。


恐らくこれだけ世界でヒットしているシリーズなので、3作目も作られると思う。全体的に厳しい感想になってしまったが、これだけの高いクオリティとスケールの大きいゾンビムービーというジャンル映画を、ワールドワイドで成功させてしまう韓国映画界には脱帽しかない。だが出来ればハリウッドのアクション大作映画とは違う、韓国ならではのゾンビ映画の次回作をヨン・サンホ監督には期待したい。

採点:5.0点(10点満点)