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映画「フリー・ガイ」ネタバレ感想&解説 娯楽性とメッセージ性の見事な融合!しかもラブコメディとしても完成度が高い一作!

「フリー・ガイ」を観た。

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ナイト ミュージアム」シリーズや「リアル・スティール」のショーン・レビ監督が、「デッドプール」のライアン・レイノルズとタッグを組んで撮った、SFアクションムービー。とはいえ本作は単純なアクション映画ではなく、かなり様々なジャンルを包括した作品だと思う。ゲーム内の平凡なモブキャラが、”愛を知ること”によって自我に目覚めるという面白い設定になっており、ゲームファンならより楽しめる映画だと思う。共演はテレビドラマ「キリング・イヴ」のジョディ・カマーや、「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党集結」でも役者として活躍しながら、「ジョジョ・ラビット」などの監督も務めるタイカ・ワイティティなど。今回もネタバレありで感想を書きたい。

 

監督:ショーン・レビ
出演:ライアン・レイノルズ、ジョディ・カマー、タイカ・ワイティティ
日本公開:2021年

 

あらすじ

ルール無用のオンライン参加型アクションゲーム「フリー・シティ」。銀行の窓口係として強盗に襲われる毎日を繰り返していたガイは、謎の女性モロトフ・ガールとの出会いをきっかけに、退屈な日常に疑問を抱きはじめる。ついに強盗に反撃した彼は、この世界はビデオゲームの中で、自分はそのモブキャラだと気づく。新しい自分に生まれ変わることを決意したガイは、ゲーム内のプログラムや設定を無視して勝手に平和を守り始める。

 

パンフレット

販売なし。

 

感想&解説

個人的にショーン・レビ監督の過去作の印象があまり良くなく、予告編を観た段階では期待していなかった作品なのだが、実際には娯楽性とメッセージ性が融合した素晴らしい作品だった。グランド・セフト・オート」のような架空のオープンワールド型ゲーム「フリー・シティ」の中で、ライアン・レイノルズ演じる主人公のガイは、NPC(ノン・プレイヤー・キャラ)といういわゆる”モブキャラ”として生活している。プレイヤーが操作する、”主人公キャラ”たちはサングラスをかけており、ゲームの中では犯罪や人助けなど自由な行動が許されているのだが、モブキャラであるガイは毎日を決まったルーチンに沿って行動するだけの毎日だ。そして、現実社会でこの「フリー・シティ」というオンラインゲームを開発しているのは、「コナミ」ならぬ「スナミ」という会社で、タイカ・ワイティティ演じるアントワンが社長を務めている。 

元々ゲーム開発者でもあるミリーとキーズは、この「スナミ」のアントワン社長に自分たちのゲームプログラムが盗まれ、その結果「フリー・シティ」がリリースされたと思っており、その証拠を見つけようとゲームをプレイする毎日。そんな時、ミリーが操作する「モロトフ・ガール」というアバターと出会ったガイが、彼女に恋してしまったことで自我が目覚めて、プログラムされていない行動を取り始めるという映画導入部になっている。まず、この設定自体はまったくゲームをプレイしない方には、やや飲み込みずらいかもしれない。ゲーム内のキャラクターと現実のキャラクターが混在して描かれるうえに、ゲーム内キャラも実在の俳優たちが演じているし、このNPCたちも自由に独自の生活を過ごしているように見えるので、これが「プログラムされたルーチンの行動」だというのがやや理解しづらいからだ。これが「オープンワールド」という、オンラインゲームの世界観なのだと理解してしまえるかどうか?が本作における最初のハードルかもしれない。

 

ちなみに本作を観ながら、「スナミ」のアントワン社長がクリエイターのプログラムを盗んだあげく、メインクリエイター不在のまま「フリー・シティ」続編のプロジェクトを強引に進めるという展開は、実在のゲーム会社「コナミ」における数年前のドタバタ劇を思い出した。コナミ」には「メタルギア・ソリッド」という世界的な大人気アクションシリーズがあるのだが、その「メタルギア・ソリッド」の生みの親であり、「コナミ」に所属していたトップゲームクリエイター小島秀夫氏が突然退社した出来事を思い出したのだ。当時の最新作だった「メタルギア・ソリッド5」が完全に中途半端な出来のままリリースされ、これと時を同じくして小島氏がコナミを退社したのだが、これは時間と製作費がかかりすぎるという理由で、小島秀夫氏が「コナミ」から解雇されたからだというウワサが流れたのである。

 

その後も世界的なゲーム業界のアカデミー賞とも言える、「THE GAME AWARD」への小島氏の参加もコナミから阻まれたことなどもあり、世界中のゲームファンが「#Fu※k Konami」とツイートし大炎上した事件があった。もちろん「メタルギア・ソリッド」シリーズの権利は今でもコナミ社が所有している為、その後に小島氏抜きでのメタルギア新作もリリースされているのだが、まさに世界中のゲームファンに波紋を広げた出来事だっただけに、本作のタイカ・ワイティティ演じるアントワン社長のキャラクターとストーリー展開、さらに「スナミ」というネーミングに作り手の意図を感じてしまうのだが、考え過ぎだろうか。

 

閑話休題。本作は2015年公開「ピクセル」や「レディ・プレイヤー1」「シュガー・ラッシュ」のような、「ゲームがテーマの映画」としての側面だけではなく、しっかりとメッセージ性のある作品になっているのも大きな特徴だ。「モブキャラのルーチン」を「観客の日常」に置き換え、この退屈な毎日を打破するのは”ささやかだが勇気ある一歩”だというメッセージが伝わってくる。偶然見かけた「モロトフ・ガール」という理想の女性と仲良くなるために、プレイヤーキャラからサングラスを奪う行動に出たガイは、ゲーム内で人助けをすることで”レベルアップ”していく。そして、遂には「スナミ」のアントワン社長の悪行を打ち砕くために行動していくのだが、ラストの展開でゲーム内キャラ同志の恋愛だったものが、「現実の恋愛」に変わるという脚本が本当に上手い。まるで90年代ラブコメのようなラストシーンには、甘酸っぱさ全開でなぜか泣かされてしまった。他にもまさかのチャニング・テイタムの無駄使いや、ボス敵キャラである「デュード」のバカバカしいルックスとセリフの一つ一つには爆笑させられたし、本当に各シーンが丁寧に作られていて娯楽映画としてのレベルが高い。

 

また、いろいろな映画からのサンプリングシーンも楽しい。自分がゲームの中のNPCキャラクターであることに気付き、自らが住む世界の構造を知ってしまうという展開は、ピーター・ウィアー監督の「トゥルーマン・ショー」を彷彿とさせるし、男女で前後向かい合わせになってバイクに乗り、走りながら両手で銃を撃つシーンはジェームズ・マンゴールド監督の「ナイト&デイ」を思い出す。また、ビルの高層階からガラスを割って背中から落下するシーンはウォシャウスキー監督の「マトリックス リローデッド」そのままだし、サングラスをかけると今までの世界と違う世界を見える展開はジョン・カーペンター監督の「ゼイリヴ」だろう。また、ライアン・レイノルズが本作を「現代版バック・トゥ・ザ・フューチャー」と呼んでいるらしいが、確かにタイムループ映画の一面もあるし、個人的には本作における「記憶とラブストーリー」の描き方は、ミシェル・ゴンドリー監督の「エターナル・サンシャイン」を想起したりした。

 

ネタバレになるが、なにより本作を制作した「20世紀フォックス」が「ディズニー」傘下になったために実現することができた、”あのシーン”は本作の白眉だろう。やはりファンとしては、「ライトセーバー」とあの楽曲がかかるとテンションが上がってしまうのは事実だし、キャプテン・アメリカの盾の登場などはややあざと過ぎるくらいだが、それでも無条件に楽しめる展開だったのは間違いない。「AI」として進化し続けたキャラクターが自我を持つという、今までの作品でいくと悲劇しか待ち受けていない「ターミネーター」的な展開を、ライアン・レイノルズが持つ善意に溢れたキャラクターと牧歌的な世界観でコーティングしたような本作。マライア・キャリーが1995年に発表した懐かしの名曲「ファンタジー」が劇中で何度も鳴り響くのも、この映画のカラーを決定づけている気がする。ラストの爽やかな後味も含めて、鑑賞後の満足度は非常に高い一作ではないだろうか。

7.5点(10点満点)