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映画「ハロウィン KILLS」ネタバレ考察&解説 三部作の2作目としては、ストーリーの起伏が無くインパクトの弱い凡作!

「ハロウィン キルズ」を観た。

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2019年に日本公開された新作「ハロウィン」の続編。前作に続いてデビッド・ゴードン・グリーン監督がメガホンをとり、オリジナル版の主演ジェイミー・リー・カーティスが主人公ローリーを演じているなど、基本的なキャストも前作から続投している。またシリーズ生みの親ジョン・カーペンターが引き続き製作総指揮や音楽を担当し、ジェイソン・ブラム製作なども前作同様だ。ジェイミー・リー・カーティスジュディ・グリア、アンディ・マティチャックが演じる3世代の母娘も引き続き登場し、宿敵であるマイケル・マイヤーズとの戦いを描いていく。今回もネタバレありで、感想を書いていきたい。

 

監督:デビッド・ゴードン・グリーン
出演:ジェイミー・リー・カーティスジュディ・グリア、アンディ・マティチャック
日本公開:2021年

 

あらすじ

ローリー・ストロードとブギーマンことマイケル・マイヤーズの40年におよぶ因縁の戦いは決着がついたはずだったが、まだ悪夢は終わっていなかった。ローリーが仕掛けたバーニングトラップから生還したマイケルは、過去を背負う町ハドンフィールドでさらなる凶行を重ねる。その恐怖に立ち向かいブギーマンと戦う者がいる一方、恐ろしさのあまり暴徒と化す者も現れ、ハドンフィールドは混沌としていく。ジェイミー・リー・カーティス演じるローリーに加え、ジュディ・グリアが扮するローリーの娘カレン、アンディ・マティチャック演じる孫娘アリソンも前作から続いて登場し、3世代でブギーマンに立ち向かう。

 

 

パンフレット

価格880円、表1表4込みで全28p構成。
大型オールカラー。ジェイミー・リー・カーティスを始めメインキャストたちのコメントや、作家の春日武彦氏、映画評論家の松崎健夫氏、映画文筆家の鷲巣義明氏によるレビュー、プロダクションノートなどが掲載されている。

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感想&解説

前作の2019年に日本公開された「ハロウィン」は、ジョン・カーペンターが1978年に手がけた同名ホラーの40年後を描き、世界観とキャラクターを再び誠意をもって蘇らせた良作だった。リブートというよりは完全な続編であり、78年度版を観ている前提の構成だったことには驚かされたが、ジョン・カーペンターが製作総指揮を担当していることからも解るように、「正統派続編」として愛とオマージュに溢れた作品だったと思う。40年前にも主役ローリーを演じたジェイミー・リー・カーティスが、歳を取りながらもマイケル・マイヤーズとの戦いに備え戦士として鍛え準備していたというキャラクターを、説得力のあるルックスで熱演していたのも良かったし、なにより娘であるジュディ・グリア演じるカレンの名セリフ「いただき」と共に銃をブッ放すシーンや、トラップを仕掛けてマイケルを地下室に閉じ込め火を付けるラストの展開には強烈なカタルシスがあったと思う。「ハロウィン」の40年ぶりの続編としては申し分ないエンターテイメント映画だった。

そしてその2年後に公開となったのが、本作「ハロウィン キルズ」だ。前作は2019年4月の公開だったのだが、今回は10月というハロウィン時期の公開ということで早速初日から鑑賞してきたのだが、感想としては「やや期待ハズレ」だった。もちろんまったくの駄作という訳ではないし、「ハロウィン」というホラー映画に期待する部分を満たしてくれる映像もあるのだが、それにしても本作はあまりにシナリオとカタルシスが薄い。前作のラストでローリーの自宅の地下室に閉じ込められて火を付けられたマイケルだったが、なんと序盤で消防隊により救助されてしまう。そのまま消防隊員を皆殺しにしたマイケルが解き放たれてしまうことで、再びハドンフィールドの街に惨劇が訪れるという流れなのだが、基本的にはこのままマイケルがひたすら出会った人々を片っ端から殺していく様子を鑑賞することになる。街の人間が恐怖のあまりに混乱に陥り自警団を結成したり、明らかにマイケルとは体格の違う精神病の男を追い詰めたりという展開はあるが、物語としてはイマイチ盛り上がっていかないのだ。

 

「ハロウィン」という映画はハドンフィールドの街だけが舞台のシリーズで、マイケルの行動はすべて徒歩という事もあるが、やや展開が予定調和となり映画として飛躍していかないのである。そしてここからネタバレになるが、自由になった当のマイケルは、自分の生まれた実家を目指して歩いていただけという”驚愕の事実”が明かされる。実家はリフォームされて、今はLGBTカップルが住んでいるのだが彼らも無残に殺され、マイケルを追うローリーの孫アリソンと前作でも登場していたボーイフレンド、そして彼の父親が家の中に侵入するという終盤のシーンがあるのだが、彼らがマイケルに勝てるはずがないのが解っているのでまったく気分は高揚しない。本作の登場人物たちは、揃いも揃って「ひと昔前のホラー映画らしいアホな行動」ばかり取るのも特徴で、危険なシチュエーションで何故か単独行動したり、大事なところで銃に弾が入っていなかったり、屋敷から出てさっさと警察を呼べばいいのに何故かナイフを持って立ち向かおうとしたりと、いわゆる”死亡フラグ”が明確すぎて、観ていて刺激がないである。

 

 

本作のローリーは前作で受けた傷が元で病院にいて、まだマイケルが生きていることを知る。宿命のライバルである自分を追って「ヤツは病院に来る」と娘カレンと共に大騒ぎするが、実はマイケルは実家に帰宅途中だったというのはハズシとしては面白かったが、やはり本作には観客が快感を得るポイントが少なすぎる。唯一、終盤でのマイケルを自警団が追い詰めてボコボコにするシーンだけは「この先どうなるのだろう?」と興味を惹かれたが、彼は銃で撃たれてもナイフで刺されても不死身だということが判明する。マイケルはもはや人間ではなく「概念としての悪魔」だというローリーの独白をバックに、なんとマイケルが娘カレンを殺したところで本作は終わるのだが、続く三部作のラストである次作ではいよいよローリーと孫アリソンがカレンの復讐の為、マイケルと最終対決をするという展開になるのだろう。しかしジュディ・グリアが演じていたカレンはローリーに訓練をされていて戦闘能力も高いわりに、優しい常識人で、本シリーズの中では観客が感情移入しやすいキャラクターで魅力的だった為、死んでしまったのは個人的には残念だった。

 

逆に本作の良かったところは、78年度版で生き残ったキャラクターたちが再び登場する事と、ホラー映画らしいゴア描写の数々だ。特にローリーが子守りをしていたトミーが、トラウマを抱えた大人になって登場したのには驚いた。彼らはハロウィンの夜になる度にマイケルの姿に怯えながら、今もハドンフィールドの街で生きていたと思うと感慨深い。また「R15+」というレーティングながら、今回のマイケルはルチオ・フルチ監督「サンゲリア」よろしく、眼球にナイフをブッ刺すわ、首に割れた蛍光灯を刺してグリグリするわ、死体に悪ふざけのようにハロウィンのマスクを被せちゃうわで、前作よりも残虐度が数段上がっている。今作はストーリーが薄い分ここに力を入れたのだろうが、テーマである「マイケルの純粋な邪悪さ」が際立って良い方向性だった。本作を境に前作にも増して、マイケルは”哲学的な悪の化身”という存在になったと感じる。バットマン」におけるジョーカーのように、ローリーにとっては自分の存在の裏返しであり、彼女の”生きる目的”だ。そしてハドンフィールドの住民たちにとっては、自分たちの中にある悪意の具現化であり恐怖の対象なのだろう。だからこそ、マイケルは”直接的な暴力”では倒せないのだ。

 

三部作の完結編である次回作は「Halloween ENDS(仮)」というタイトルらしいが、暴力では倒せない「純粋な悪」であるマイケルに、最終的にローリーはどう立ち向かうのか?は興味深い。もちろん次回作も監督はデビッド・ゴードン・グリーンだろうし、製作総指揮ジョン・カーペンター、主演ジェイミー・リー・カーティスという布陣で、次は「ハロウィン」という78年から始まった伝説的なホラーシリーズの完結編として、しっかり終止符を打ってくれる気がする。80年代の「ハロウィン2」で描かれた”マイケルとローリーが兄妹である”という設定は、活かされるのか?など完結編ならではの楽しみもある。その為にも三部作の中間である本作は、どうしても観ておかなくてはならない作品ではあるのだが、ただ前作と比べるとややクオリティが落ちた印象なのは否めない。先日公開された「キャンディマン」と同じく、往年のファン向け作品であることは間違いないだろう。特に前作の予習は必須なので、ご注意を。

 

 

5.5点(10点満点)